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ガールズクロスライン 第3話(夜) 緑の塔を越えて
目の前に広がっていたのは、見たことのない街だった。
空を突くようにそびえる巨大な円筒状の塔。それらが幾重にも重なり、青空の下で緑に覆われている。
蔦や樹木が絡みついた鉄の橋を、オレンジ色の電車がゆっくりと渡っていく。
彼女はいつの間にか、リュックを背負って先を歩いていた。
「ほら、行こう。上まで登れば、きっと全部見えるから」
その声に導かれ、僕は後を追う。
足元の板がきしみ、頭上の塔がゆっくりと影を落とす。
見上げるたび、あの朝の教室で見たウィンクと笑顔が蘇る。
やがて彼女が立ち止まり、振り返った。
「ここが、今日の境界線だよ」
塔の上空を渡る風が、緑の葉を揺らし、僕たちの間を抜けていった。
お読みいただきありがとうございます!
今回は「朝の教室」と「夜の緑に覆われた塔の街」を行き来するお話でした。
次回はまた新しい朝と夜でお会いしましょう。