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異世界マッチングアプリ〜ただのゲームだと思っていたのに異世界に転移しました!?

作者: 犬飼レオ

 いい出会いなんてそうそうない……


 色々なマッチングアプリで十数人と会ってみてたどり着いた私の結論だ。

 

 私はしがない25才会社員、緑川(みどりかわ) (すい)。結婚に焦り、とりあえずマッチングアプリに登録して様々な人に会ってみたが、なかなかいい縁がなかった……マッチングした人が既婚者だったこともあり、私にはマッチングアプリは向いていないと悟った。


 ある日、ネットで珍しいゲームの広告が目についた。それは「異世界マッチングアプリ」というスマホゲームだ。


 このゲームでは自分の情報を設定して簡単な質問に答えるとAIが自分の好みに合わせたキャラクター10人を生成してくれるらしい。気に入ったキャラクターであれば右にスワイプ、イマイチだったら左にスワイプしていく。マッチングしたキャラクターとメッセージでやり取りをしていくというゲームだ。


 このゲームで今までのマッチングアプリでの傷を癒そうと思い、アプリをインストールした。質問に答えてキャラクターを生成してみた。5人ほど右にスワイプしたが、マッチングしたのは1人のキャラクターだけだった……ゲームなのに中々厳しい……


 マッチングしたキャラクターの名前はアレク・ユヴェール。イラストと簡単な説明文が書かれている。金髪碧眼のイケメン王子だ。イラストでは剣を持っているガッチリした美丈夫で、正義感の強い性格のようだ。女性にはあまり縁がなかったため、周りの勧めでマッチングアプリを始めたと書かれている。最近のAIはやはり能力が高いのか、私の好みに合うキャラクターだった。


 アレクとは何度かメッセージのやり取りをした。とてもAIだとは思えないほど会話が成り立った。ゲームというより、オンライン上の友達ができたような感覚だった。アレクが話す異世界での出来事は新鮮で面白く、ついつい長時間メッセージ上で話すことも多かった。


 いつものように「異世界マッチングアプリ」でアレクへの返信を打とうと思い、アプリを開いた。すると、「アレクさんからデートの誘いが来ています。今すぐ会いますか?」という見慣れない通知が来ていた。


 アレクの好感度が上昇したことによる、ゲーム内の恋愛イベントが発生したのだろうと思い、「はい」を選択した。


 次の瞬間、スマホが眩く光り輝き出した。あまりの眩しさに私は目を閉じ、その場に座り込んだ。


◆◆◆◆◆◆


 しばらくすると、光が収まったようなので私は目を開けた。


 すると、目の前には見知らぬ世界が広がっていた。私は中世のお城の広間のような場所にいた。


「大丈夫か? 会いたかった。俺の誘いに答えてくれて嬉しいよ」


 金髪碧眼のガッチリとした美形の男性が手を差し伸べてくれた。どこかで見たことがある男性だが……


「俺がわからないのか……? 俺だ。アレクだ」


 優しい声色で目の前の男性が答えた。


「アレク? え? あれはゲームのはずで……」


 私は混乱した頭で尋ねた。


「女性に全くご関心がない殿下のために、宮廷魔導士一同で殿下が相性の良い女性と出会えるように異世界との通信を行える魔法を使用いたしました」


 そう答えたのは魔法使いの格好をした高齢のおじいさんだった。


「余計なことを言うな、クレイ!」


 バツの悪そうな顔をしたアレクがクレイというおじいさんに声を荒げた。


 気にした様子もなく、クレイさんが続けて私に声をかけた。


「自己紹介が遅れました、宮廷魔導士のクレイと申します。この度は同意の確認をしたとはいえ、急に翠さまをこの世界に転移してしまい申し訳ありません。」


「緑川 翠と申します。まだ完全に状況を飲み込めていませんが、どうぞよろしくお願いします」


「改めて俺も自己紹介させてもらおう。俺はユヴェール王国の王子、アレクだ。よろしくな」


 アレクが手を差し出してくれたので、アレクと握手をした。


「さっそくですが、翠さまにお話しておきたいことがございます。翠さまがこの世界に滞在できるのは日没までとなります。日が暮れるタイミングで足元にございます魔法陣の上に立っていなければ元の世界に帰ることができなくなってしまいます」


 クレイさんが真剣な様子で話してくれた。


「今は朝だから日没まではまだ時間がある。翠が良ければ城下町の案内をするが、どうだろうか?」


「せっかくの機会なので、城下町に行ってみたいです!」


 アレクからのお誘いに私は快く答えた。


「よかったですね! 殿下」


 クレイさんがニヤニヤしながらアレクを小突いていた。


◆◆◆◆◆◆


 アレクと私は王城を出て城下町に来た。城下町は大勢の人で活気に溢れていた。


 そこで、私はある違和感に気づいた。


「アレク、ちょっと聞いてもいいですか?」


「なんだ? 何でも聞いてくれ」


 アレクが優しく反応した。


「城下町にはあまり女性がいない気がするのですが、どうしてでしょうか?」


「この世界では7:3くらいの割合で男性の方が多いんだ。翠の世界では違うのか?」


 アレクは興味深そうに聞いていた。


「そうなんですね。私の世界では男女比は半々くらいです」


「ここでは翠は気をつけたほうがいいかもしれない……黒髪で黒い瞳の女性は珍しいから人攫いが目をつけるかもしれない。だが、俺が絶対に守るから大丈夫だ!」


 アレクは真剣な顔をして言った。


「あ、ありがとうございます」


 男性から守るなどと言われた経験はなかったため、私はドギマギしながら答えた。


 アレクと城下町のお店を回っていると、見たことのない食べ物や服、装飾品で溢れていた!見るもの全てが新鮮でとても楽しむことができた。


 今までは基本的に会社と自宅の往復ばかりだった。休みの日もマッチングアプリでマッチングした人と会うか、仕事の疲れを癒すために家でゴロゴロするかの二択だった。こんなに楽しんだのはいつぶりだろう……


 アレクと会話しながら歩いているうちに私たちは城下町の広場についた。広場では一際大きな人混みができていた。そこでは火や水、氷の魔法で魔法使いが人々を楽しませているようだった。


「魔法は初めて見たので感動しました!観客の方の熱気もすごいですね!」


 私は興奮してアレクに声をかけた。


「喜んでくれて嬉しいよ。そろそろ喉が渇かないか?俺が買ってくるからここのベンチで待っていてくれ」


 そう言ってアレクは屋台に飲み物を買いに行ってくれた。


 私はベンチに座ってアレクを待っていた。人で賑わっていることもあり、なかなかアレクが戻ってこない。


「うえーん!お母さああん!どこぉぉ!」


 子どもの泣き声が聞こえてきた。私はすぐに小さな男の子に駆け寄り、声を掛けた。


「どうしたの?大丈夫?お母さんとはぐれたの?」


「うん、お母さんがいなくなっちゃった……」


 男の子がか細い声で答えた。


「お姉さんと一緒に探そうか!大丈夫!すぐに見つかるよ!」


 アレクのことが気がかりだが、男の子を放っておくこともできず一緒に男の子のお母さんを探すことにした。色々な屋台に聞き込みをして回ったところ、ようやくお母さんが見つかった。


「本当にありがとうございます!あなたのおかげで、またこの子に会えました!何とお礼を言ったら良いのか……」


「いえいえ!無事にお母さんを見つけることができてよかったです!お気になさらないでください!」


 私は笑顔で手を振って親子と別れた。


 ……まずい。今度は私が迷子になってしまった。アレクと最後に別れた広場に戻ろうとしたが、ここがどこなのかわからない。しかも、お母さん探しに夢中になっていて気付かなかったが、もう夕暮れ時になっていた。このままでは元の世界に戻れなくなってしまう!


 通りすがりの人に王城の方向を聞き、何とか帰ることを試みるが、日が落ちるまでに間に合うかどうか……このまま帰れず、アレクにも会うことができなかったらどうなるか……見知らぬ世界で急に孤独感に襲われた。


 怖い……このまま帰れなかったら……


 不安に襲われながら王城に向けて走っていたその時、馬を駆るアレクがやってきた!


「大丈夫か!? 翠! 今までどこに行っていた!?」

 

「すみません! 迷子のお母さんを探していたら自分が迷子になってしまって……」


 私は申し訳なさそうに答えた。


「そうだったのか……だが、急にいなくなるのはもうやめてくれ。どこかに攫われたのではないかと心配したんだ。本当に無事でよかった……日没までもう時間がない! 城に戻ろう!」


 アレクが私を馬に乗せ、2人で王城に向かった。


◆◆◆◆◆◆


 王城に着くとクレイさんが心配した様子で駆け寄ってきた。


「お待ちしておりましたよ! 日没までに戻ることができなかったらどうなることかと思いました」


「心配をかけてしまい、申し訳ありません」


 私はクレイさんに謝った。


「間に合って本当に良かった。さあ、魔法陣の上にお立ちください」


 私は魔法陣の上に立った。


「俺はきっと君のことが好きなんだと思う!今度は君の世界に俺が行く!だから待っていて欲しいんだ!待っていてくれるか?」


 アレクが私に真剣な顔で話した。


 突然、魔法陣が輝き出した。


「私はずっと待っているので絶対会いにきてください!」


 そう伝えるとアレクが嬉しそうな顔をしていたが、光が強くなり眩しさで私は目を閉じた。


◆◆◆◆◆◆


 目を開けるとそこは見慣れた自分の部屋だった。


 さっきまでの出来事は夢だったのか?そう思い、スマホを見ると「異世界マッチングアプリ」の通知が来ていた。


 絶対会いに行く。待っていてくれ!


 私は返信を打とうとアプリを開いた。


お読みいただきありがとうございます!

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