生まれ故郷
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
故郷が一番良いんだって思います。
だから、争いは止まないとも。
「都会っていうのは偶に遊ぶには良いけれど、住むには少しね……」
「排気ガスとかの臭いがキツくてね……」
地方の、自然が多く残る場所に住む友人は、そんな事をボヤいていた。
生まれも育ちも都会っ子。生まれた時から、濁ったドブ川と、排気ガス、それから高層ビルと一緒に過ごして来た私から言わせれば、それはほぼ日常である。臭いと思った事はないし、地方特有の交通の不便さが逆に気になった。
そういえば、と思う。私の担当教師も似たような事を言っていた。
――都会は水が不味い。水が不味いから、何一つ料理が美味しくない。と。
「そんなことがありましてね。いやいや、別に地方がどうとか、都会がどうとか、そんな事を批判するつもりは毛頭ないのですよ。ただ生まれ故郷というのは、育った場所というのは、それ程までに愛着が湧くものだと思ったのですよ」
排気ガスもドブ川も程遠い、香り高いジャスミンの甘さと、澄んだ真水の川を見ながら私はそう申し上げた。お隣にはこの香りと、土地の持主、梅香の君が静かに寄り添っていらした。
御方は静かに笑って、軽く私の髪にお触れになる。
「其れは勿論、生まれた時からそこに居ることを許された場所だ。誰からも受け入れられなくても、弾かれても、場所だけは許してくれるから。愛さずとも許してくれるから」
中々に重たい話が帰ってきた。それもそうか。どれだけ荒れていても、生まれ故郷だけは傷付けなかったこの方だ。それ相応に、故郷に対する思い入れは強いのだろう。
「迫害するのは何時だって人間だよ」
顔は穏やかであったけれど、凄みがある。
「そうですね……」
例え周りが排気ガス塗れだとか、ドブとヘドロで汚れた川だとか、言ったとしても、私はこの場所と共に過ごして来た。真緑に穢れた川の上に、桜並木が生い茂る様の美しさを知っている。足の変わりになる鉄の塊を知っている。それから離れられるか、と言われればきっとわたしはクビを横に振るだろう。
「私、この場所が好きです。地方育ちの子も、自分の土地をきっと同じように言うでしょう」
育ったからこそ分かることがある。馴染みがあるからこそ愛着が湧く。それはこの土地が住むことを許してくれたから。
最近の私の会話と、テレビを見て思った事。
都会っ子は都会が、地方っ子は地方が、良いって言うと思うんです。
違う場所に移り住むと、これまでのローカルルールから外れたところがやっぱりどうしても気になるんですよ。
都会には排気ガスとか、地方には交通の便とか。
だからこそ結局、戻るのは故郷が良いんだなと感じた話。
それ程まで愛着を持っているから、梅香の君の方のモデルの方だって、生まれ故郷は傷付けられないし、奪われたら争いに発展するのだと。
場所に感情はありません。
だから迫害するなんて事も無い。
何時だって追い出すのは人間なんだと思います。