まとめ
さて、これらのことを総括して鑑みると、夏目漱石の作品に類似した現代小説と云うのは、あちこちに転がっている。差し詰め、彼の書いた作品の多くは形を変え、色を変えて多くの作家の中に存在しているのではなかろうか。
つまり、彼の作品は現代小説の多くと繋がる、いわばパイオニアの様な存在であると言えるだろう。そして、彼自身も後世へと彼から芥川龍之介、芥川龍之介から太宰治、太宰治から……、と憧憬という形で引き継がれていく。本を少しでも読んだことがあるならば経験があるだろう「お気に入りの一冊」と云うものは、もしかしたら全ての人間が一人の女性の派生であるのと同様に、夏目漱石の何らかの作品に通じているのかもしてない。もしそうなのであれば、彼の作品は我々の心の中に「夏目漱石」と云う考え方、物の見方が自然と植え付けられ、浸透し根を張っているのかもしれない。
<参考文献>
1)星新一著 「ノックの音が」 日本 講談社文庫 1972年8月15日第1刷発行
2)阿刀田高 「闇彦」 日本 新潮文庫 2015年1月1日発行
3)夏目漱石 「夢十夜」 日本 岩波文庫 1986年3月17日第1刷発行