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会食は戦場

一週間ぶりです。なんだか話がとびとびになりそうで怖いです


学校が終わった後、私はライムの見立てた服装に着替え、戦場‥‥‥‥つまりは会食会場へと向かう。

私が小娘でしかないと踏んでいるのか、会食会場は本来私なんかが入れるような安いファミリーレストランなどではなく、高級ホテルの最上階、しかも個室への招待ときた。

一体、その資金源はどこからくるやら。

サジタリアファミリーの領地は広いが、貧富の差があまりにも激しく、そこから脱出する住民も少なくはない。

そして、そういうことはつまり、その地に住まう人間としてその土地は良くない土地で、今にも逃げ出したいと思うような場所で、そうなると自然と人が減り、ファミリーの力は間接的に弱くなる。はずなのだが。

何故だかサジタリアファミリーは非常に、こう。

お金持ち、というやつである。

ヴァイスが言うに、ちょっと良くない資金源がありそうとの情報を得ているので、私としてはさっさと潰して綺麗に洗い流してしまいたい街なのである。

まだ闇金程度ならいいけれど、薬の一つでも流通しようものならその町に住む人間みんなに対して非常に大きな負担になることは間違いない。

それに、そんなことになってしまえば町を洗い流すのも一苦労だ。

ヴァイスの情報は大体が正しいからこそ、当たっていてほしくない情報ではある。

それについて問い詰めるのにも、今日の会食は良い機会だと思う。


「あぁ、ようこそいらっしゃいました、シリアージョファミリーの統領、シェリー様。」


ねっとりとした嫌な視線で私を見てくる、嫌な男。キラキラとした財宝を身に纏っているから余計に醜く見えるのに、なんでそんな簡単な事にも気が付かないのだろうか。

差し出された手には触れず、カーテシーで礼をしてみせる。


『えぇ、本日はお呼びにあずかり光栄ですわ。本日は話したい事がたくさんありますもの。』


そう言って微笑んで見せると、一瞬だけ表情を歪めるサジタリアファミリー統領、ジステリア。

以前求婚を蹴る時に私は一度申告したはずだ。


『金輪際あなたとの直接的接触はしない。』


つまり、握手を求めてくること自体が不快だからそんなことするなという意味である。

それなのに普通に握手を求めてくるあたり、この男の肝がどうなっているのか取り出してみてみたくもある。


「え、えぇ。それで、そちらの様子はいかがですかな、シェリー殿。貴方の領地は大分縮小され、現在ではあまり税金の徴収もできていないとか。」


『‥‥‥‥‥ふふふ、仰ることは良く分かりますわ。ですが、私共シリアージョファミリーの掲げる理念をご存じであれば“それで問題ない”とはお分かりになりませんの?』


そう挑発的に言ってみると、眉を吊り上げるジステリア。

分かりやすくて結構。こちらは正直今回あまり平和的解決をしに来たわけではないのだから。


『ジステリア様、私共シリアージョは、領地の民の為、私共自身が身を粉にして働くことを主としております故。ですので、貴方が仰る“税”。そもそも私共は徴収などしてはいないのですよ。この意味がお分かりで?』


「、であればどうやって資金を調達している、と仰るので?」


『あら、あらあら。ご存じではないと。こうやって会食に贅沢にお金を使い、民から莫大な資金を巻き上げてなお足りぬはずのお金をどこか危ないところから徴収しているあなた方などよりはよっぽどまともな方法で稼いでおりますよ。例えば祭事など。ふふふ、しれで集まったささやかなお金を節制して暮らせば私たちはそれでよいのです。決して貴方方とはその点相容れなさそうですが、ね。』


そう言って笑って見せると、ジステリアは悔しそうに顔を歪める。

きっと今回の会食では、こちらにお金がないから、貸してやるから代わりに何かをよこせとでもいうつもりだったのだろうけれど、そんなのは不可能だ。

だってシリアージョファミリーは、


(街のみんなが、ファミリーに寄付をしてくれているからこそ成り立っているんだから。)


そう。これは、母や父の世代から変わってはいない。

私達はみんなの家や家族を守る。そのために迷子探しや迷いネコ探しだってやる。

ファミリーが領地を管理するのは、境界にあるファミリーとのいざこざが起きないようにしっかり街の運営をしていくことだけ。

そうしているうちに、街のみんなが自主的に私達に好意的になってくれる。

だから、こんな小さな身体の私が町を出歩いても、みんなリンゴや串焼きなどをくれたりするし、ファミリーの力になれたらと領地の村長様たちや教会の人がお金を少し恵んでくれたりする。

それに、“誰もファミリーの内情を話さない”。これが、シリアージョの大きな強みだ。

決して大きくはない組織、けれどもそれを支えてくれるのは町全体だ。

だからこそ、私は彼らを守りたい。今ここは、私の戦場だ。


『さて、ところで武装していらっしゃる方々は貴方の傘下でしょう。こんなところで事を構えたくないでしょうに、可愛そうに。

貴方も考えを改めるのであれば私の傘下に加えて差し上げます。いかがです?』


「この、小娘‥‥‥‥‥!」


怒りをあらわにして拳銃を抜くジステリア。

けれど“そんなもの”怖くなんかない。

だってほら


「その汚いものを仕舞え。下種が」


そう言ってその腕を蹴り飛ばすヴァイス。


『ありがとう、ヴァイス。ふふ、さてと、これじゃあ交渉のしようもございませんわね?

?だって装備なさっていたのは貴方方が先なんですもの。これは所謂“正当防衛”という物です。さて、ヴァイス。‥‥‥‥お願い。』


「承知いたしました。掃討致しますね」


ではまた一週間後に。

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