表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

さくら、さくら。

一話目です。


「お嬢、お目覚めの時間です。おはようございます。」


そんな、付き人兼護衛のヴァイスの声で今日も目が覚める。


『おはよ、ぉ‥‥‥‥なんか今日は問題なかった‥‥‥‥?』


仕事の確認をしてみると、ヴァイスは手元のメモ帳を見て告げた。


「あぁ、今日は会食が一件。サジタリアファミリーのボスが会いたいと。‥‥‥‥ですがこれは」


『うーん、パスしたいけどそうもいかないよね。ま、いっか、適当に荒らして適当に帰ろう。』


サジタリアファミリー。領土が若干近いため、本来ならば仲良くしたい相手ではあるのだが、狸爺と言えば伝わるだろうか。

いつでも虎視眈々とこちらの弱体化を狙い、何なら私に一度求婚してきたくらいには会いたくない相手だ。(40近いおじさんに求婚されても何も嬉しくない。)


「そうですね、前回はまともな話になりませんでしたし、今回もそうなると思いますし。けれどいいのですか?命令されればいつでも我々彼らを滅ぼしますが。」


ヴァイスは当時相当怒っていたから、今でも根に持っているのだろうか。

正直あのヴァイスをもう一度見るのはこう、見たいような見たくないような、というやつである。


『大丈夫、ってみんなに伝えて。最近じゃサジタリアがやりたい放題し過ぎだって報告も上がってきてて、合法的に処分できる手段も整ってきてる。だったら無理して攻めて犠牲を出す必要はないよ。』


「流石です。ということは街の人間の方の心身掌握は?」


『それはライムがもうやってる。流石だね、署名がもうすぐ規定値に達するから、そうしたらあの連中にはご退場願おう。』


ライム、というのは従者の一人で、コードネームの通り、ライムグリーンの綺麗な髪と瞳を持った中性的な、一応女性である。彼女は変装の達人で、色んな町の情報収集や敵地の視察などにはよく言ってもらっている。やりすぎなくらいに調べてくるから、正直もっと肩の力を抜いて欲しいけど。


「そうですね、さっさとご退場願いましょう。‥‥‥‥時にお嬢、次の勢力拡大のめどはついているんですか?」


シリアージョファミリーはまだまだ弱小で、だからこそサジタリアみたいなのに目をつけられてしまうのだけれど、正直あまり管轄地を増やしたいと思えないのも本音だ。


『学校がどうしてもね‥‥‥‥流石に通わないわけにはいかないんでしょう?』


「えぇ、先代から託された通り、送迎は致しますが‥‥‥どうにも、それ以外の手助けができないというのも寂しいものですね。」


一ファミリーのボスが学校に通うのもどうかとも思うけれど、仕方がない。

だって、世代交代は私の成長を待ってはくれなかったから。


『仕方ないよ、宿題が鬼の時だけ手伝ってくれているだけでもありがたいし。』


学校、宿題、ファミリーの情報、情勢、ボスとしての教育。

正直息抜きしたい気持ちはあれど、そんなことをしようものならいつでも近辺のファミリーにつぶされてしまうだろう。


「ですが、ここ最近睡眠時間があまりとれていないようですし‥‥‥‥やはり心配にもなります。」


確かに、本来必要な時間は取れていないかもしれないけれど、時間が有限な限り、そこは飲まないといけない事情、という物だろう。


『大丈夫大丈夫。‥‥‥その辺りも、もうすぐサジタリアとの問題解決がしたら何とかなりそうなんでしょ?』


「‥‥‥‥‥‥お言葉ですがお嬢、今度はサジタリアの領地にいるスラムをどうするかとか、そういった話でさらに忙しくなります。」


『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥影武者が欲しい。』


「それはおとぎのお話の中だけですので。」


『それもそうなんだけどさぁ‥‥‥‥‥‥』


ぽつりとつぶやき、ヴァイスが持ってきてくれた水とタオルで雑に顔を洗う。


「お嬢。」


さらっと洗いなおされた。‥‥‥‥不機嫌ここに極まれりって感じではあるけれど、正直仕方のないことかもしれない。だってそう選択したのは。

他の誰にも任せず、ファミリーを背負う覚悟を決めたのはほかでもない自分自身だ。だったら弱音はNG。


『朝食に行く。‥‥‥身支度くらいはできるからね?』


さっさと制服を準備しようとしているヴァイスに向けて私は言う。

流石に私だって年頃の女の子だ。その辺りは任せてしまいたくはない。


「‥‥‥‥‥‥かしこまりました、では朝食のため、部屋でお待ちしております。」


そう言って部屋の外に出ていくヴァイス。

はぁ、とため息をついて、私は身支度をする。

鏡の前に立っていつもの言葉を唱える。


『私は桜。そしてシェリー。シリアージョファミリーを背負う物と決めて、私はここにいる。』


なんとなくだけど続けている日課で、正直どうかと思わなくもない。けれど、仕方がないのだ。

だって、私はまだまだ未熟者で、どうしようもないほどに弱い。

だから、毎朝言い聞かせて心の戦闘態勢を維持するのだ。


さぁ、今日も一日が始まる。

朝食の後は学校、帰ってすぐに会食。


美味しい食べ物屋さんだといいな。なんて思いながら、今日も私は頑張る。




こっちはゆっくり更新なのでお待たせしましたーといった感じです。

また次週?よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ