プロローグ
以前から告知しておりましたシリアージョファミリーのストーリーです。
こちらは水紫のオリジナル作品ではありますが、世界線は同じなので異形だらけTRPGと同じく楽しんでいただけると幸いです。
一番古い記憶は、硝煙と鉄錆の臭いと、悲鳴、叫び声、うめき声、
そして私を撫でて死地に向かう両親の姿。
幼い私には何もできなかった。
両親を止めることも、争いを止めることも。
その場にいた誰かを助けることもできなかった。
「お嬢、逃げましょう!」
手を引いてくれた青年に、ただついて行くだけの無力な私。
何も見ないように、と。道中、私の目を隠して抱えて戦火の中を駆け回り、逃げ出してくれた従者の一人だけを連れて。
無力感を感じる暇もなく、他のファミリーに暫くの間預けられて。
そして、14歳になったときに、改めて、保護先のファミリーから私の“家族”は独立した。
それが私。シェリー。
本名は、桜・スペランザ・シリアージョ。
希望の、桜。
けれど私は無力であることを誰よりもよく知っている。
一緒に逃げた従者、ヴァイス。
彼は影のように私に付き従い、何も私のやることに口出しはしない。
だから、初めてのお仕事の時に私は宣言した。
シリアージョが独立して、最初の、ボスとしての挨拶。
『私は、無力です。けれど、あの日を忘れはしない。だからこそ、貴方方に。私も、ヴァイスも、全員含めてこの言葉を心に刻み込みなさい。“生きるために戦え、あらがえ。けれど、自死は許されない。死にたがりは必要ない。だってみんな生きるために集まったのだから”。』
この言葉は、シリアージョファミリーの教訓となり、道しるべとなった。
そして僅か3年。それだけで、シリアージョファミリーは大きく拡大し、かつ強固な“守り”の一族として、イタリアンマフィアの中にたてるようになった。
シリアージョ、とは、極東の地、日本では桜というらしい。
桜の花は儚げで美しく、気高く。
しかし脆く、散るのがとても速い花だとされている。
“だからなんだ”。
例え花びらが散っても、桜の木はそこにある。
地面にしっかりと根を張って、そこにある。
散った花弁は確かに儚い。けれどただそれだけが桜の美しさではない。
葉桜になり、冬を越し、次の春にはまた美しい花を咲かせる。
たった一年で見れば桜は儚いけれど。
けれど、それを何年も、何年も繰り返す。何百年、下手したら何千年。
それだけの間、そこにあり続ける桜を、誰が美しくないなどと言えるものか。
だから私は言おう。
『桜は決して儚い花なんかじゃない』
強く、力強く。いつまでもそこにあるのが桜だ。
これは、そんな私達の物語。
ちっぽけな私に残された家族たちを守り、シリアージョのある街を守る。
手の届く人々は見捨てたりなんかしない。
もう、あの時のような無力な思いはしたくなんかない。
だから、だから。
もう、絶対に。絶対に、家族を喪ったりなんかしない。
精神美と純潔の花言葉を持つ桜。
そうあろうじゃないか。
みんなを私が、守って見せようじゃないか。
これは、そんな物語。
足掻いて、足掻いて、どうしようもなくなってもあきらめる事なんてしない。
様々な理不尽に立ち向かう物語。
勇気?そんなものはあるかなんて知らない。
だって、私は私だから。
だから、さぁ、始めようじゃあないか
桜が舞い、桜が咲き誇る、そんな物語を。
こちらは更新が少々遅くなる予定でいます。更新のたびにTwitterで報告させていただきます。