楓の気持ち
「ファッションステージのリハーサル終わりでーす…次は楓ちゃんのステージなので10分休憩したら準備お願いします〜!」
「楓の準備は?」
「機材とかは整ってるんだけど…本人が心ここに在らずって感じなんだよね…」
「そっか…悪いけど優芽、楓のサポート頼むね」
「了解っ」
ふむ…楓に何があったかわからないけど確かに朝から元気がなかった。
どこまで酷いか分からないけど最悪の場合代わりを用意するか、ステージ自体の中止も検討しなくてはならない。
代わりを用意する線はない…とすれば中止になるけど…楓にとっても初のステージのはずだから出来れば持ち直して欲しいんだけどな。
楓から上がってきたグッズは直ぐに生産ラインに乗せて、昨日ダンボール箱に詰まって送られてきた。
最悪こちらも次のイベントなりで販売することは可能だけど…。
何があったものか…。
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IKUYAZAKIイベント前日のリハーサル、次は僕の番。
既に3Dモデルを動かすためのモーショントラッキング用機器は身につけていつでもステージを始められる。
もう前の番の人は終わったみたいで残りは僕だけ。
だけど僕の心はどこまでも沈んでいた…原因は言うまでもなく南のこと。
今週…月曜日から今日までずっと話すことが出来なかった。
話しかければなにか理由をつけてすぐにどこかへ行ってしまう。
昨日からは話しかけることも出来なくなってしまった。
絢斗も紗良ちゃん真由ちゃん美咲ちゃんも、今まで一緒に下校してた分ギクシャクする僕と南に困惑してた。
最近南は、僕が男の子の頃のように紗良ちゃん真由ちゃん美咲ちゃんと行動することがほとんどで僕は絢斗と行動している。
男の子の頃に戻った気がする。
紗良ちゃん真由ちゃんも何故か僕と距離をとるようになっていた、美咲ちゃんだけは声をかけてくれるけどすぐに紗良ちゃん達に連れてかれてしまう。
距離を置かれるって寂しいな…。
思いふけっていると控え室のドアノブがガチャリと音を立てて下がりドアが開いた。
「楓ちゃん、準備できてる?」
「優芽さん…はい…できてます」
「何があったか知らないけど…話せることなら、私でよければ聞けるから」
「ありがとうございます…」
小鳥遊優芽さん、矢崎さんの助手的な人で仕事のスケジュールから何から何まで矢崎さんの腕となって動いてる人。
僕も何度か会ったことがあって、たまにVtuberの話とかすることがある。
空さんと同年代のお姉さんで南を彷彿とさせるふわふわのボブカットの髪型、仕事はきっちりこなすけど働く人の心の支えになるような…ところどころ砕けてる人?
今日も学校から直接ここに来た時から気にかけてくれている。
「実は幼馴染の友達…南と上手くいってなくて…」
「空ちゃんの従姉妹さんだよね、何かあったの?」
「月曜日に登校してから突然避けられて…心当たりがないから何も出来なくて…」
「その前に普段と違うことあった?」
「南とは何も…」
「南ちゃんと直接関係ないけど楓ちゃんに普段と違うこととかなかった? 南ちゃんの知らないとこで南ちゃんが嫌がることやっちゃったとか」
優芽さんは隣の椅子に座って僕と向かい合う。
控え室には僕と優芽さんだけでさっきまでいたスタッフさんはもう僕のステージ、もうひとつ用意されたステージ、部屋に向かった。
「えっと……心当たりないです…あ、普段と違うことなら日曜日に出かけました…他校の子と、カラオケのオフコラボのためになんですけど…」
「それって男の子? 女の子?」
「男の子…南も知ってる人です」
その男の子もVtuberをやってるんだけど、さすがにこんな状況で涼くんのことを話す気分にはなれなかった。
優芽さんはしばらく考えて口を開く。
「でもそれが南ちゃん嫌がることになるかな…………あ、もしかしてだけど…南ちゃんがその男の子に恋してるとかはない…?」
「涼くんに…南が恋…でも一回しかあったことないし…」
「でも一目惚れって可能性もあるでしょ…」
「確かに…」
「一応聞いておくけど、楓ちゃんはその涼くんって子のことが好きなの?」
「えっと…はい………付き合ってはないんですけど」
「その話南ちゃんにした?」
「はい…あ、そういえば友達がその話を南に話してから急に不機嫌になった気が…します」
あの時南はいつも通り話しかけてきたはず…紗良ちゃんと真由ちゃんから涼くんと僕のことが伝わってから急に不機嫌になった。
もしかしたら僕が涼くんのこと好きになっちゃったことも南は聞いてるのかな…。
「間違いないんじゃないかな…南ちゃんも涼くんのことが好きでデートした話を聞いて楓ちゃんとの距離感に困ってるのかもね」
「そう…かもしれません…」
「でも楓ちゃん…この話は、これからも南ちゃんと変わらず仲良くしたいなら南ちゃんとしっかり話さなきゃだめだと思う…たぶん一人で悩んでも変わらないから…」
「わかってるんですけど考えちゃって…」
「じゃあ私がその悩み一旦預かるからリハーサルだけ頑張れない?」
「はい…リハーサル行ってきます…話したら少しスッキリしたかもしれません…」
「ならよかった、行ってらっしゃい」
そっか…南も涼くんが好き…逆の立場だったら僕も絶対南と距離取っちゃうと思う。
だってなんて話したらいいか分からないもん…。
僕はどうすればいいのかな…僕は元々男の子、こんな僕が南と争って涼くんと付き合えても涼くんは幸せになれない。
なら僕はこの気持ちを我慢すればいいだけ。
涼くんは別に僕のこと好きなわけじゃないんだから…うん、僕はこの気持ちを忘れて南を応援すればいいよね…。
あれ、なんで涙が出るの…。
そっか…涼くん好きだもん…でも諦めなきゃ行けない事だってあるんだから…僕は今は女の子でもあくまで男の子だから…。
南が一人の女の子として涼くんに恋してるんだから応援してあげたいもん。
今度ちゃんと南ともお話しなきゃ…その時にちゃんと応援するって伝えるの…。
そうだよ…あれはデートじゃないもん、涼くんと僕はデートじゃなくて配信のために会っただけだから…配信はなくなったけどその目的は変わらないもんね。
だめだ…涙止まらないや…。
それからしばらく止まらない涙にひとりで泣き崩れた。
涙が止まる頃にはすっかりスタッフさんも待たせちゃったけど自分でほっぺた引っぱたいて力を込めたら何とか気持ちも振るい起こせた。
まずは目の前のリハーサル頑張って明日の本番乗り切らなきゃ…!
タイトルめっちゃ困る...最近あまりにも適当だったからちゃんと考えなきゃと思います...。
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