恋する乙女
初めて異性…男の子とデートして駅で涼くんと別れたあともなんだかポカポカ気分の僕。
今から帰って夜ご飯を用意する気にもなれず、近所のスーパーでお弁当だけ買って家にたどり着いた。
せっかく買ったお弁当もテーブルにほっぽってそのままベッドに倒れ込む。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
今日は色々あったなあ…手繋いだり…食べさせあ間接関節キスしちゃったり…下着見られちゃったり…。
目の前に持ち上げた腕でシャランと可愛らしく音を立てたブレスレット、涼くんが帰り際にくれた桜色の可愛らしいアクセサリ。
なんで涼くん買ってくれたんだろう…。
男の子が女の子にアクセサリプレゼントする時ってだいたい好きだからとか恋人だからとか、指輪だったら結婚とか… 少なくとも好きな子じゃなきゃあげないよね…。
でも僕達そんな関係じゃないし、どうして…。
うん、そうだよね、もしかしたら僕が間違ってるだけで仲のいい異性ならプレゼントするかもしれないし…もしかしたらなにかお礼とかかな…僕なにかしたっけ…。
でもでも…もしかして…涼くんが僕のこと好きとか…。
そうだったら僕ってなんて答えるのかな…僕は涼くんのことどう思ってるのかな……ってないよね、ないない!
変なこと考えちゃ涼くんに悪いよ!
でももしも、涼くんに好きって言われたら……僕はなんて答えるのかな……好き?
ついこの前まで男の子で…僕なんかが涼くんに好きって言われちゃったら…僕は涼くんのこと好き…?
好きか嫌いかって言われたら好きって言えるけど恋愛的な意味なのかな……。
ま、まさかね!
ピコン
涼<今日はありがとう。それからブレスレットは特別な意味はなくてただ単に服の時のお詫びというか、そういうやつだから。だから好きとかそういうのじゃないというか]
ほら、やっぱり!
よかったぁ……のかな…。
なんでだろう…好きって言われたらどうしようって悩んでたのに違うって言われてすごく悲しんでる…。
あれ、なんて返せばいいんだろう…普通にありがとでいいのかな…なんか色々書かなきゃいけないのかな……。
当たり障りなく書けばいいのかな…。
楓<わかってる、勘違いしたりしないから大丈夫だよ]
これでいいかな…。
送信を送って画面を眺める。
「涼くん…」
名前を呼ぶだけで熱くなる胸の奥がズキズキ痛んでやまない。
なんでこんなに苦しいの…だって普通のことでしょ?
別に僕だって涼くんのこと恋愛的な意味で好きってわけじゃないし…。
普通のことなのに…。
僕どうしたらいいんだろう…こういう時はお姉ちゃんに電話してみようかな…。
『楓? どうしたの?』
「えっと…」
『?』
「なんか自分の気持ちがよくわかんなくなっちゃった…」
『待って待って、もう少しちゃんと話してくれないと分からないよ…? どんな気持ちなの?』
「今日涼くんと出かけてきてね…」
『配信無くなったって見たけど何かあったの? 喧嘩した?』
「ううん、そうじゃなくて…喧嘩したとかじゃなくてむしろ僕の希望を色々聞いてテラ〇モール行ったりして…」
『それで…?』
「涼くんがブレスレットをくれたの…でもこういうのって好きな人に渡すものだと思うからって…考えちゃって…でも涼くんから好きな人にとかいう意味じゃないって言われてから、モヤモヤしちゃって…」
『…そう…ねえ楓、きっとそのモヤモヤの答えは私から何か言うことじゃないと思う…楓だってわかってるんでしょ?』
「うん…」
『ならね…私から言えるのはひとつだけかな…楓、自分に正直になってみたら?』
「正直に…」
『じゃあね、また何かあったらすぐに電話していいからね!』
電話が切れる音。
僕に有無を言わさずという様子でさっさと電話を切っちゃったお姉ちゃん。
お姉ちゃんの言う通りだよね…僕の気持ちなんて僕にしかわからないもん…。
「涼くん…」
わかってるの…わかってるはずなんだよ…だってこんなのわかりやすすぎるもん…。
涼くんのことどう思ってるか、涼くんに好きとかじゃないって言われて悲しんでる理由もわかってるもん…。
でもついこの間まで男の子で、そんな僕がなるはずないって思っちゃうの…。
わかってる…最初から不思議と惹かれる人だった…ナンパから助けられたのはあるかもだけど…僕から連絡先聞くとか初めてだったりするし…。
女の子になっちゃったこと言えなくて、後で怒られた時はまだ出会って日も浅いのに誰よりも嫌われたくなくて胸が痛かった。
友達、親友、それとはまた違う…全然違う好き…わかってるの…この気持ちの正体くらい…。
好き…。
僕は…涼くんが好き…どうしようもなく好き…。
変なことだってわかってる…でも隠そうとしても溢れてくるこの気持ちはとても誤魔化せない…。
でもね、ごめんなさい…この気持ちは知らないフリさせて…涼くんは僕のことそんな目で見てない…。
言っちゃったらきっとこの関係も難しくなって一緒に出かけたり笑うことも無くなっちゃう…だからこの気持ちは絶対に言わないの。
「涼くん…」
♣♠♣♠♣♠♣♠♣♠
楓<わかってる、勘違いしたりしないから大丈夫だよ]
すごく素っ気ない文。
気恥しさから慌てて送っちゃった言葉に俺は後悔していた。
あんなの全部嘘だ。
楓の前で自分に言い聞かせる言葉も全て嘘。
わざわざ楓の目を盗んでまで内緒で買ったブレスレット。
楓の喜ぶ顔が見たいから、それをつけてまたデートして欲しかったから。
わかってる、何度も自問自答して何度も誤魔化してきた。
俺は楓が、夢川楓が心から好きなんだ。
男は簡単に好きになっちゃうと言うけれど本当の好きってのはそういうのと違う。
本当に好きにならなきゃこんなにも楓の存在が、毎日、全ての時において俺の中で渦巻くはずがない。
暇な時も暇じゃない時もいつも考えてるのは楓のこと、楓の笑う顔、楓の声、楓の体温、なんて愛しいんだろう。
詩みたいで気持ち悪いって思われたらそれまでだけどでもこの気持ちは考えれば考えるほど、楓を思えば思うほど俺をおかしくする。
「楓…」
恋がこんなに苦しいなんて…。
今まで何度か告白を受ける機会はあった、その度に大樹に彼女作らねえの?って言われてきたけどその時は好きになるはずがないって思ってた。
恋愛に興味がなかったというか将来どうなってるか分からないけど今はいいやって思ってた。
あぁ…こんなにも苦しいんだな…好きな人がいるって…。
次は掲示板回をふたつ挟んでいよいよIKUYAZAKIイベントになります。
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