体育祭準備は順調に...?
話は少し遡って実行委員が決まった次の日、今日の放課後から実行委員の仕事が始まるということで瀬名さんと話す機会を伺っています。
瀬名さんは楓さんのお友達ということで楓さんを通して話す機会を作れれば、放課後までに仕事に支障がない程度までなら話せるようになるかもしれません。
チャンスを伺って楓さんにお願いして瀬名さんと仲介して貰うつもりでしたが、気がついたら午前中が終わってお昼休みになってしまいました。
お昼休みが終わったら午後の授業が2つで間の休みも10分しかないので、お昼に話せなければいきなり放課後を迎えることになりかねません。
何がなんでも今話さなければと楓さんの姿を探します。
見つけました…南さんと走って教室を出ていってしまいました…お昼でしょうか…。
これでは楓さんに仲介を頼めません…。
結局いつも通り紗良さんと真由さんと3人でお弁当を囲んでいます。
「ん? 美咲どうしたの?」
「なんかずっと考え事というか悩んでる?」
「あ、仮装? そんなに気にせずさらっと終わらせればいいと思うよ」
「うん、なっちゃったのは仕方ないしパーティグッズとか適当に付けて走ればいいと思う」
「えっと…ありがと…でもそうじゃなくて…」
私が悩んでいたのを察した二人は心配してくれましたが、残念ながら悩みの種は仮装じゃなくて実行委員の仕事です…。
仮装は確かに悩みの種ですが実行委員の仕事は他の人にも迷惑をかけてしまうので最優先で解決しなければなりません。
「あ〜、つまり瀬名くんと話す機会が欲しいってことね?」
「それなら話しかけるしかないんじゃない? あたし達も一緒に行ったげよか?」
「ありがと…でもそしたらまた二人に頼っちゃいそうだし…」
二人の申し出は嬉しいですけどそうしたらまた紗良さんの後ろに隠れてしまいそうです。
「そっか…そしたら頑張ってとしか言えないね…」
「うん…美咲勇気出して! 今日はあたし達のことはいいから。ほら、瀬名くん外行っちゃうよ」
「えっ…」
振り返るとちょうど瀬名さんは友達と数名と談笑しながら教室の外に出るところでした。
今呼び止めたらきっと迷惑でしょう…放課後頑張るしかないですね…。
そう思って目線を落とすと紗良さんと真由さんが立ち上がって私の腕を掴みました。
「ごめんね美咲、でも私たちには無理やり行かせるくらいしか出来ないから」
「怒るなら後で怒ってね美咲…はい行ってらっしゃい!」
そう言うと二人は私に広げかけていた弁当を持たせて、そのまま引っ張って廊下に連れていったかと思えば瀬名さんの前に押し出されました。
「瀬名くん後よろしくね」
「美咲は任せた!」
二人はそのまま教室の中に戻ってしまいました…。
瀬名さんの目の前に押し出された私は何も喋れずに黙って地面を見つめます。
「えっと…渡辺さん…?」
「…」
黙り込む私と心配そうに見つめる瀬名さんの後ろで瀬名さんのお友達は顔を見合わせます。
「ん、じゃあ絢斗、今日は俺らだけで食べいくから」
「女の子泣かせんなよ」
「え、はっ?」
そう言うとお二人は走ってどこかへ行ってしまいました。
あまりに急な展開で心の準備は出来てません。
当然です。
午前中かけても準備できないのに数十秒で二人きりにされてしまいました。
「えっと…俺に用?」
「…」
「あ、もしかして実行委員のこと?」
「……はぃ…」
「わかった。それお昼だよね? 俺も今から昼食べたいから一緒していい?」
「わかりました…」
おそらく聞こえないような声量で承諾すると瀬名さんは歩きだしました。
私は無言で後ろを着いていきます。
やってきたのは学生食堂です。
向こうの丸テーブルが並んでいる方に楓さんと南さんの姿も見えています。
先程走っていったお二人もカウンター席で既に食べ始めているようです。
「渡辺さん、俺は自分の買ってくるから席取るのお願い出来る?」
「はい…頑張ります…」
答えると瀬名さんはじゃっ、と手を振って券売機の方に歩いていきました。
私もせめて席くらい取らないと、と思って学食全体を見渡します。
既に半分以上は埋まってしまっていて空いている席は結構少なくなっています。
窓際の席はもうほとんど埋まっていて、丸テーブルの所を除くとあとは長いテーブルで人に囲まれて食べることになってしまいます。
私は丸テーブルの方を確保したいと思いテーブル席の固まった方へ向かいました。
けれど丸テーブルは私が到着したタイミングでちょうど埋まってしまいました。
私が遅いからこれでは瀬名さんに迷惑がかかってしまいます…。
困ってしまって立ちすくんでいると楓さんが気づいたようで手を振っていました。
「美咲ちゃん大丈夫? 今日は紗良さん達と一緒じゃないの?」
「席がなくて困ってるならここ空いてるけど」
「えっと…今日は一緒じゃなくて…」
「渡辺さん席取れた? あれ、楓たちと一緒?」
「あっ…ごめんなさい…」
「「絢斗?」」
定食の乗ったトレーを持って瀬名さんが戻ってきてしまいました。
席が取れていない現状を謝ります。
「いや、謝らなくていいよ。楓たちも一緒でいいならここおじゃまする? 二人はいいか?」
「僕たちは全然おっけーだけど」
「えっと…ありがとうございます…」
お礼を言って丸テーブルを囲むように、瀬名さんと向かい合わせの形で席に着きました。
「それにしても絢斗と美咲、珍しい組み合わせだよね」
「まあな、実行委員だからな。話すいい機会だし一緒にご飯食べようって誘ったんだよ」
「そうなんだ、じゃあ僕達は戻ろっかな。僕も南も食べ終わるしお邪魔な気がするから」
そう言うとコップに入ったお水だけ飲み干して楓さんと南さんは席を立って帰っていきました。
結局席を譲ってもらったような形になってしまいました。
「ごめんなさい…席も取れなくて」
「気にしてないよ、混んでるし仕方ないからね。俺も長テーブルは人多くて避けたいから楓達と合流してくれて助かったよ。ありがとう」
「ありがとう…ございます…」
瀬名さんは軽く笑いながらいただきますと言うとお茶碗を手にご飯を口に含みました。
私も慌てていただきますと呟いてご飯を口に含みました。
「それで渡辺さんは俺にどういう用事だったの?」
「えっと…放課後いきなりだと話せない気がして…」
「あぁ…なるほど。確かにいきなりさっきの調子だと大変かもね」
「はい…本当はもっと早く話に行くべきだったんですけど…ごめんなさい……」
「謝ることじゃないよ、むしろ俺の方から話しかければよかった。気が回らなくてごめん」
「いえ…こちらこそ…ごめんなさい…」
さっきいきなり前に出されたときよりは話せていると思いますが、私が謝るばかりで途切れ途切れになってしまい話が進みません…。
「渡辺さん、まあ俺のことは気軽に絢斗って呼んでくれればいいよ。これから一緒に実行委員やってくわけだしね」
「はい…私のことは美咲でも好きなように呼んでください…」
「わかった、じゃあ美咲さんでいいかな?」
「はい…私はこのまま瀬名さんでいいですか…?」
瀬名さんは好きなように呼んでいいと言ってくれますがそれは難しそうです。
「ああ、無理せず好きなように呼んでくれ」
「ありがとうございます…」
「まあ、これからよろしくね」
「はい…よろしくお願いします…」
瀬名さんは親身になってくれてとても話しやすい人でした。
勇気をだして話しかけて…無理やり引きずり出してくれた二人に感謝しました。
これなら実行委員も何とかやっていけそうです…。
ですが残念なことにこの日の実行委員で私は体育祭を休もうと真剣に考えるようになりました。
理由はもうひとつの悩み、仮装についてでした。
今年から少し変わったそうです…。
それは実行委員長からの説明でした。
『今年から仮装障害物競走の衣装代が5万円上がるそうです。理由として例年外部参加者も参加出来る目玉のひとつでありながら生徒の仮装のクオリティが高くないことが先生方の間で問題になったそうです。各クラスの仮装競走に出場する生徒にこちらの衣装代を渡してください。うちの学校名で領収書を書いてもらうように伝えてください………………』
5万円…つまり5万円かかるようなクオリティの仮装をしないといけないということです…紗良さん達が適当にやればいいんじゃないかと言ってくれて少しは気が楽になっていたのに…。
楓さんにそのことを直ぐに連絡すると次の日にお出かけのお誘いをいただきました。
まさかあんな衣装を私が頼んでしまうなんて…。
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体育祭でチアと仮装をすることが決まってから僕は矢崎さんに仮装の衣装を頼めないか連絡してみたら、意外にもOKが貰えて美咲ちゃんを連れて矢崎さんのとこに訪れた。
最初は乗り気じゃなかった美咲ちゃんも矢崎さんと話すうちに乗り気になってくれて、僕なんかよりよっぽど凄い衣装を作ってしまった…。
上なんて胸部を覆う羽をボタンと紐で止めたようなものでほとんど露出してるし…下だってダボッとしたズボンに見えて股のところは前から後ろまで思いっきり開いてて…超露出多めの民族衣装みたいですごく可愛いんだけど大胆というか…元のキャラクターは弓を持ってて動きやすさ重視なんだろうけど…。
ほんとにあれ着るのかな…。
ちなみに僕の衣装は…何故か矢崎さんが既に決めてて決定権ナカッタヨ…。
仮装の衣装も既に完成して手元に来てるし、チアの練習も順調で問題なく本番を迎えられそう…。
体育祭まで3日を切って、今日は練習の終わりに届いたチア服を配るみたい。
ちなみにこの学校の体育祭は3色に別れて行われる。
僕のクラスは赤組で応援団衣装もチア衣装も赤を取り入れているらしい。
チア衣装は3年生の先輩たちで決めて注文したみたい…再来年は僕が選ぶのかな…どんなのがいいかな…ってやらないよ!
自分で自分にツッコミを入れたところでチア練習の部屋にいくつかダンボール箱が運び込まれた。
「じゃあ今から衣装配るから名前呼ばれたら取りに来てね! みんなそれぞれ採寸させて貰ってるから問題は無いと思うけど一応着てみて通しで練習するよ」
そっかぁ…今日から僕もチア服デビューかぁ…緊張…というか恥ずかしくなってきた…。
「楓ちゃん」
「はい!」
「じゃあこれが楓ちゃんのだから着替えてきてね」
「わかりました…」
そうして僕はカーテンの裏に入ると、既に先に受け取った子達が着替えて可愛い〜なんて言い合ってじゃれている。
良かった…比較的露出低めでそんなに派手な衣装じゃない…。
そう思いながら受け取った袋から自分のチア服を取り出した。
白を基調として赤の色が入った赤組のチア服。
綺麗に畳まれたそれを広げてみる…………。
「………あれ…?」
広げた服を見て固まる僕…。
もしかしたら気の所為かもしれないから一応着てみよう…。
上のシャツを脱いでチア服を身につける…スカートも脱いでチア服のものを着る…。
周りの子より明らかに短いスカート…他の子は全く見えていないおへそ…。
「……なんで…?」
採寸した時より僕が大きくなった…?
でも制服は変わってないからそれは無いはず…。
全員に配り終えて自分のチア服に着替えようとしているリーダーのところへ混乱した頭を必死に整理しながら向かう。
「あの…これどう考えても小さいです…」
「楓ちゃん? あら、ほんとだ…」
「これってどういうことでしょうか…」
「最後に注文したの私じゃないのよね…ほら、あそこにいる佳奈が全部やってくれたから佳奈に聞いてみてくれる?」
「はい…」
おへその出てる腹部がすごく恥ずかしくて手で隠しながら副リーダー的な役割をしている佳奈先輩の所へ向かう。
「あの…これって…」
「あ、楓ちゃん…説明し忘れてたの! 実は全員分を注文した後に電話が来てね…楓ちゃんのサイズのチア服がもう在庫切れになっちゃってて似たデザインだとこれしかないって言われたから勝手にOKしちゃったんだよね…まあこれが楓ちゃんの衣装だと思って頑張ってね!」
「…え…」
「うん、とってもよく似合ってるよ! チア服着るとやる気出てくるよね! 頑張ろうね楓ちゃん!」
上機嫌に笑いながら向こうへ走っていく先輩の後ろ姿を見ながら硬直する僕…。
僕はこれでみんなの前に出るの…?
ほんとに…?
尺的な問題で美咲側の体育祭準備だいぶ飛ばしちゃってるんですがめっちゃ書きたい部分なので後日番外編で投稿します!!
美咲のコスプレ服も楓のチア服もまあ大胆でございまして...ほんとに着るのか...!?
(...後書きに書くことが思いつかない...)
ひとつ大きな事はあるんですけどもう少しお待ちいただければという感じで...(やっぱり話すことがない...)
そうだ番外編の話でもしよう...美咲編とでも言いたいくらいの番外編を書きます!
内容は完全美咲視点の体育祭準備から今後を書きます!(美咲が好きなだけ...)
それでは今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
ブクマ登録、高評価、コメントしてくれると嬉しいです!
...あ!
言い忘れてた番外編の位置が変わりました!




