お、お父さん!?
水野くんと友達になって翌日、僕はPINEに水野くんからメッセージが入ってることに気がついた。
涼<あのこと絶対誰にも言わないでくれ頼む]
涼<(雷雲ザックおねがいスタンプ)]
楓<わかってるよ誰にも言わないって]
涼<頼むぞほんとにバレたらやばいから]
楓<ほんとに大丈夫! すごく気をつけるから! ]
涼<お、おう、、ありがとう]
涼<代わりにと言ったらなんだけど悩みとか頼みとかなんでも言ってくれよな、俺に出来ることならなんでもいいぞ]
楓<ありがとう水野くん]
ザックくんが水野くんだったのは驚きだけど言葉遣いは違ってもどこかザックくんぽさが出てるんだよね。
「(さてと、僕も色々準備しなきゃ)」
水野くんと話して身近にVtuberというものを感じた僕は自分もザックくんみたいになりたいと思って眠れなくなってしまった。
こうなったらいっその事自分もザックくんみたいな男らしくてかっこいいVtuberになってしまおうかななんて思い始めたら止まらなくなってしまったのだ。
「(必要な機材はこれとこれと…)」
配信用にスペックのいいパソコンは必要だし、マイクも予備で2つくらいは用意しときたい。他にもオーディオインターフェース、モーショントラッキング用の装置等々、色々合わせて買わないとVtuberにはなれなさそう。
僕のお小遣いとお年玉と全部合わせても3Dキャラクターまで手が届かないかもしれない。
「(はぁ…お金貯めてからかな)」
水野くんに相談してもうちょっとコスト抑えてできないか相談してみようかな…。
ううん、これは僕がやらなきゃいけないことなんだから。
それに水野くんには驚いてもらわないと。
うんうんと頷いて僕はベッドに横になった。
ーーーーーーーー
「すぅ…すぅ…」
「あら、楓寝てるの? ふふ、可愛い寝顔なんだから」
私は楓の好きな紅茶を入れて部屋を訪れたのだが、肝心の楓はベッドで横になってすうすうと可愛らしい寝息を立てていた。
楓の頭をそっと撫でてから机の上でつけっぱなしになったデスクトップを消そうとする。
「あら、これって…ふふ、楓ったらほんとにVtuberになりたいんじゃない」
「んん……」
「頑張りなさい、あなたならきっとできるわ楓」
デスクトップの電源を落としてから、もう一度楓の頭を撫でて私は部屋を出ていく。
ーーーーーーーー
「んむぅ…」
微かに鼻腔をくすぐるいい匂いで目が覚めた僕はのそのそと起き上がって部屋の外に出た。
お父さんも帰ってきたみたい。
「ぱぱおかえり…」
「お、ただいま、眠そうだな」
「ふふ、ぐっすりだったものね」
ふらふら〜とソファに座るお父さんのもとまで歩いていって隣にぼふんと音を立てて座る。
「楓、お父さんは楓がやりたいことを応援するぞ」
「えーと、なんの話? 」
「Vtuber、やりたいんだろ」
「えっ? 」
いつになく真面目な表情で告げるお父さんに僕は状況が飲み込めない。
「ふふ、お父さんはね、楓の夢応援してくれるって」
「え、え? なんで知って…」
「見ちゃったもの、パソコンの電源ちゃんと切ってから寝なきゃだめよ? 」
「え、あ…」
そういえば電源を消した記憶が無い。
ちょっと休憩のつもりで横になって寝ちゃったから消し忘れてたらしい。
見られてしまったことに恥ずかしさを覚えつつも認めてもらえていることをありがたく思う。
「でもVtuberできるとしたらまだまだ先かな、機材とか3Dキャラクターってすごく高くてもっとお金貯めないと…」
「あぁ、そのことなら問題ないぞ? 楓がリストアップしてた奴は全部買っといたから。はっはっはっは」
「へっ? えぇぇぇぇ!!?!!???」
僕のリストアップしてたのって合わせても50万近く行くくらいあったと思うんだけど…流石お父さん…
「え、でもどうして? 」
「どうしてってそりゃあ、楓の夢を応援したいからだよ。楓はお年玉とかお小遣いで買おうとしてたんだろうがそれは将来のために取っとけ。お父さんは楓の夢のためならサポートは惜しまないからな」
「ぱぱ…ぐす」
両目から涙が溢れてくる。
僕は年甲斐もなく溢れてくる涙を堪えきれずお父さんの胸に飛び込んだ。
「ありがと…ぱぱ…ありがとうふぇぇぇ…」
「ふふ、楓は昔からよく泣くんだから」
「ぐす…そんなことないもん…ぐす、ふぇぇ」
よしよしと撫でられてしばらく、やっと泣き止んだ私にお父さんとお母さんが向き合う。
いつにも増して真剣な表情で私も背筋が伸びてしまう。
「楓、楓には大切な話がいくつかある。まずはやるだけやってみなさい、さっきも言ったようにお父さんはいつでも楓の味方だ、応援してる。それからVtuberになっても最低限勉強はちゃんとすること。それが疎かになるならお父さんは素直に応援できなくなる」
「はい」
親の了承を得れたのはVtuberとして活動してく上で重要だと思う。
勉強は今まで通りの成績に影響が出ないようちゃんとやっていかなきゃ!
「それからもうひとつ、これは今回の話とは直接関係ないがこの夏休みを頃合に考えてた話だ。こういう風に話せる機会もないから一緒に話す。楓、楓はこれから一人暮らしをしなさい。既に学校近くのお父さんが保有しているマンションの一室を空けておいた」
「はい…って、え? 」
フリーズする僕と僕の反応に笑っているまま…。
一人暮らしって聞こえた気がするのだけど気の所為なのかな?
「一人暮らしって、あの一人暮らし? 」
「そうだ、楓ももう高校生だからな、何かといい勉強になるはずだよ。それにうちからもすぐ近いからいつでも顔は見にこれる。防音もしっかりしているからVtuberとしての活動にもちょうどいいんじゃないか? はっはっは」
「ちょっと待ってまだ混乱してる…」
僕は頭を抱えて自分の現状を理解するのにかなり時間がかかった。
ーーーーーーーー
ほわぁ…広い部屋…。
一人暮らしって言うからもっと一室の小さい部屋を想像してたけどなん部屋もあって広すぎるくらいなんですけど!
「どうだ、いい部屋だろう。個室も3つあるから寝室、配信用の部屋にもうひとつは来客用とかにできるな」
ここ数日驚くことが連続しててもう驚かなくなってきてる気がする。
四人家族が住んでもひろい部屋。
「配信機材は個室のひとつに入れといたから後でチェックするように、それから家具とかも今日中には全部届くはずだから外出はご飯買いに行くくらいにしときなさい」
「う、うん…」
「それじゃお父さん達は帰るから何かあったら連絡しなさい」
「う、うん…」
嵐に運ばれて置いていかれたような気分。
確かにお父さんの行動力は昔から凄かったけどここまでとは…。
なんか色々考えもまとまらないうちに凄いことになっちゃったけどとりあえず荷物を見てみようかな!
「(たくさんある…こっちはパソコン、これは液晶と、こっちはキーボードかな? マウスもある、あれ、これバイノーラルマイク? リストに入ってないのもある…)」
お父さん僕がリストアップしてたもの以外も色々買ってるみたい…全部合わせたらいくらになるんだろう…。
でもこうなったらあとはキャラクター作らなきゃいけない。
キャラデザインを作ってもらってそれを3Dデザインするんだけどどうしようかな。
色々と考えたいこともあったけれど、結局この日は次々と届く荷物の荷解きと家具の搬入の対応で一日を終えた。
ーーーーーーーー
「おお、広い部屋〜」
「ほんっと、一人暮らしには豪華過ぎない? 」
翌日、新居の玄関で絢斗と南が固まっていた。
理由は当然この部屋を見て。
「僕もそう思うんだけどお父さんが全部用意してくれて…」
「突然一人暮らしっていうからびっくりしたけどこんな部屋に住むなんてもっとびっくりしたわ」
「私も」
「ま、まあ2人とも上がってよ、まだ少し片付いてないところもあるけどだいたい終わってるから」
二人を半ば強引に招き入れてリビングに座らせる。
五人くらい座れるソファは一人暮らしには少し大きすぎて一人だと寂しくなってくる。
こうして親友が来てくれると明るくて寂しさも消えていく。
「にしてもほんと広いな〜、ここリビングであっちの扉の奥が個室? 」
「えーと、あそこ廊下で部屋三つ…」
「個室だけで三つもあるのね…」
南が呆れた様子で苦笑していた。
僕は二人を寝室に案内して客室用の部屋にも案内した。
「泊まりに来るならここの部屋使うことになるから」
「あぁ…」
「えぇ…」
「二人とも大丈夫…?」
二人は明後日を見るような目で部屋を見つめている。
きっと昨日の僕もこんな感じだったのだろう。
改めてお父さんにお礼しに行かなきゃ。
「それであっちの部屋は何があるの? 」
「あ、たしかにまだ見てないな」
「えっと、この部屋はまだ片付いてな…」
僕の制止は遅く既に南が部屋の扉を開けていた。
配信用の部屋は大体がくみ上げ終わって大きめのデスクに液晶が3枚とキーボード2つ、メインと予備のマイク2つ設置されている。
壁際にはバイノーラルマイクが立ててあり…。
「な、何この部屋!? これって、バイノーラルマイクまである…」
「楓まさか…」
「「Vtuberになったの(か)!? 」」
「えっと、まだ…かな? 」
僕は事情を全部説明して3Dキャラクターの目処が経っていないことを話した。
「ん〜、絵師を捕まえなきゃだし3Dキャラメイクをしてくれるデザイナーも見つけなきゃだから…」
「そうなんだよね…だからまだ難しいかなって」
「ん〜、よしわかった、楓のために私が一肌脱ぐよ。ツテがあるの」
南はウィンクしてIvirtualのホログラム画面を操作し始めた。
「なんか楓が遠い存在になっていく気がするよ」
「そんなことないよ!? 僕は今まで通りだから! 」
「でもこんな部屋に住んでVtuberデビューだろ? でも俺は楓を応援するよ、男の娘Vtuber、絶対流行るぞ」
「そんな路線でやらないから!! 」
ーーーーーーーー
南<横浜のカフェで打ち合わせになったから9時に藤沢駅ね]
楓<うん、わかった。それでなんの打ち合わせ?]
南<詳しい説明は後でするから]
南<とりあえず楓の絵師の人って言っといたらいいかな?]
楓<絵師の方!? 全然聞いてなかったよ??]
南<今言ったからね!]
楓<ねえ! どういうこと??]
南<また後でね〜!]
「(大丈夫かなぁ)」
翌日の朝9時に藤沢駅JR改札前で待ち合わせた僕と南はそのまま電車に乗り込んだ。
今日の南は白のワンピースを着て涼し気な印象を受ける。
ふわふわと揺れる髪からいい匂いが…ってダメダメなんか変態みたいじゃん。
対して僕は…相変わらず持ってる服の中でなるべくボーイッシュなものを選んできた。
黒のTシャツにブカブカのジーンズワイドパンツ。
もう、ままは女物しか買ってこないんだから…。
外でトイレとか行くの大変なんだからね?
「楓、今日はスカートじゃないの?」
「ぶぶっ!! す、スカートなんて履くわけないじゃん! 僕男だし! 今日"は"って、今まで履いたことないから! 」
「え〜絶対似合うのに〜、ちぇ〜、でも今日の楓もとっても可愛い! 」
「あ、ありがとう…? 」
男に可愛いって違うって何度言ったらわかるのかな南は!
僕は男なんだから!
それにしても南の服もすっごい似合ってる、ちゃんと褒めるべきなのかな、男として!
「南も、服似合ってる、よ? 可愛いと思う…」
「楓が褒めてくれるなんて珍しい〜、ありがと〜。でもね、そういう時は顔赤くしちゃダメだよ〜? 赤くなる楓もすっごい可愛いけど! 」
「も、もう! からかわないでよ! 」
ふ、ふん! 褒めたと思ったらこれなんだから!
それにしても南と2人でお出かけするの初めてかも。
これって、で、デート?
「2人でお出かけするの初めてだね」
「どしたの? 急に、あっ、デートかもって考えてたでしょ〜、こいつ〜」
なんか考えてることが筒抜けだった。
ニヤニヤ笑う南がこいつ〜と言いながら僕の脇腹を続いてくる。
「ち、ちがうよ? 」
「え〜、ほんとかな〜? 正直に言いなさい楓〜こちょこちょ」
そういうと南は僕の脇腹をつつくのをやめててこちょこちょに切りかえた。
「やめっ、ひっ、んんっ、こちょこちょっ、弱いんだからっ、ダメっ、」
「白状するまでやめないもんね〜! ほらほら言え〜! 」
「あっ、南っ、ダメだってっ、みんな見てるっ」
そういうと南は顔を上げて電車の中であることを思い出したのか僕の脇腹から手を離した。
肩で息をする僕の背中を撫でてくれて落ち着くまで待ってくれた。
「ごめんね楓」
「ふんっ! 南なんか知らないんだから! 次はないんだからね! 」
ふんって顔背けてやれば南もきっと反省してくれるよね!
手を合わせてごめ〜んって言ってるし、くすぐられたくらいだから本気で怒ったりしてないけどね!
「楓やさし〜。でもでも楓、くすぐり弱いのは知ってるけど電車の中であんな声出しちゃダメだよ?」
「えっ? 」
「楓ってば、す〜っごく可愛い声出しちゃって、みんな見てたのきっと楓だと思うよ〜? 」
「え、僕そんな変な声出てたの? 」
え〜今更?って顔しないでよ!
そんな自覚全然なかったんだけど今もチラチラこっちを見る目線を感じる…。
気をつけないと…。
「楓ってば自分の可愛さを理解してないよね。楓はそこらの女子なんかよりよっぽど可愛いし声だってほとんど女の子なんだから。外でいやらしい声出したらダメだよ? 」
「いっ、いやらしい声なんて出てないよ!? 」
「え〜、少なくとも私は夢中になっちゃう可愛い声だったよ〜?」
「も〜! やっぱり知らない! ふんっ!」
ふんっ! 男の僕にそんなこと言うもんじゃないよ!
南はいっつもこうやってからかってくるんだから…。
そりゃ可愛いって言われて嫌な気はしないけど、どうせなら絢斗みたいにかっこいいって言われたいな。
「怒らないで楓〜、謝るしそろそろ着くから機嫌直してよ〜」
「ふんっ!」
南に手が伸びてきて僕の頭を撫でる。
女の子扱いされるのは好きじゃないけど撫でてもらうのは好きだからされるがままにされるけど別にいいよね!
20時に予約してたはずなんですがなんか出来てなかったみたいで...ぴえんです。
さてさて、タイトルに入っている展開を未だに回収できないまま場面場面を短く進んでいるあたり自分でも納得できないところがあったりします。
6話までにはあの展開に持ち込みたいなとストーリーを構成してはいるのですが相当飛ばし飛ばしみたいな感じになってしまいそうで怖かったりします。
それから初コメを頂きましてアドバイスまでしていただきました。
アドバイスを受けまして!や?の後に半角のスペースは入れてたのですが全角に変更しました。
ブクマ登録やコメント頂けるとやる気満々になります。
これからも頑張って執筆していきますのでよろしくお願いします。あまおとでした。