表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第5章
95/208

第15話 フローティングアイとの初戦闘

「敵襲!」


 俺の叫びと同時に、雨のように無数の閃光が、俺たちに襲い掛かってきた。

「開放、20。」

 呟く。

 体中に巡る力。

 動体視力が跳ね上がり、閃光の速度が遅く見える。

 

 襲い来る閃光は、レーザーではなく、魔力弾が発光しているだけであるため、弾速はそこまで早くない。

 無数の魔力弾の中から、どの魔力弾が危険かを見分ける。

 

 最も威力の低い魔力弾は、3眼のフローティングアイが放ったものだろう。

 3眼のフローティングアイの魔力弾は、この際、無視していい。

 ここにいるのは、辺境の奥地に挑戦できる上位旅客たちだ。

 この程度の威力の魔力弾でダメージを受けるほど魔法防御力は低くない。

 怪我人への着弾は危険だが、他のメンバーの動きを見ると、怪我人に被害が行かないように動いている。

 問題ない。

 対処すべきは、4眼以上のフローティングアイから放たれた魔力弾だ。

 4眼クラスの魔力弾の数は20ほど。

 さらに、5眼が放ったと思われるものが2。

 そして、それよりも大きい魔力弾が1つある。


 5眼に率いられた群れとのことだったが、どうやら、6眼のフローティングアイもいるようだ。


 

 俺は、6眼が放った魔力弾を止めることにし、その魔力弾の着弾予測地点に移動する。

 狙いは流石だ。

 見事に、最も人が集まっているあたりを狙っている。

 エリザ・エルザがそれぞれ5眼の魔力弾を止めようとしている。

 まあ、あの二人ならば大丈夫だ。

 残りはチーム『青の戦士を仰いで』のリトヴァに任せれば大丈夫だろう。

 

 6眼の魔力弾を止めるため、足に力を籠める。

 そして、跳躍。

 両腕を顔の前でクロスし、全身に力を纏う。

 そして、そのまま、魔力弾に突っ込む。

「ジェダイト・フォートレス!」

 背後でリトヴァの声がする。

 ジェダイト・フォートレスはかなり強力な防御魔術だ。

 4眼のフローティングアイ程度の火力ならば、全く問題はないだろう。

 リトヴァの声を認識してすぐに、俺の身体は6眼の放った魔力弾に到達した。

 俺に当たった魔力弾が拡散し、全身がビリビリと震える。

 魔力弾が拡散しきったころには、おれの速度もほぼゼロになり、重力に引かれ、地面に降り立つ。

 すぐに周囲を確認すれば、エリザ・エルザが5眼の放った魔力弾に対応している。

 エリザが持つ巨大なランスが魔力弾を突いて爆散させ、エルザは大きな盾のシールドバッシュで魔力弾を拡散させている。


「方向4時、距離1000!」

 俺とエリザ・エルザが大きな魔力弾を防いだ直後、コロの声が響く。

「行くっす!爆炎槍!」

 ヴァシリーサの声が響き、燃え盛る槍のようなものが無数に射出される。

 どうやら、皆が防御に回っている中、ヴァシリーサとコロは攻撃に転じていたようだ。

 

 ヴァシリーサの放った槍は、コロの示した座標、1㎞ほど離れた丘の向こう側に着弾する。

 槍は火焔を巻き上げながら次々と爆発する。 

 俺は、単眼鏡を取り出し、その様子を確認する。

 

 地平の先では、爆発に巻き上げられた無数の眼球が宙を舞っている。

 

 どうやら、命中したようだ。

 様子を見るに、相当被害を与えたようである。 

 すると、遠距離戦を不利と見たのか、丘の向こう側から、多数のフローティングアイが姿を現した。

「来るぞ!交戦用意!」

 ヴィクトルが叫ぶ。

 その叫びに呼応して、皆が己の武器を構える。

 エミーリアは自身を増やし、怪我人を装甲車の陰の比較的安全な場所に運んでいく。


 丘の向こうから現れたのは、100近い数の3眼のフローティングアイ。

 2割くらいは4眼が混ざっている。

 さらに、その後方には、5眼のフローティングアイが2体。

 そして、最後尾に6眼のフローティングアイが1体いる。


「でかいな。」

 フローティングアイを見て、ローランドが呟く。

 それもそのはずで、5眼と6眼のフローティングアイは、でかい。

 5眼のフローティングアイは、眼球一つ一つが直径2mを超え、それが5つ。

 全高は6~7m、ほどあるだろう。

 6眼に至っては、眼球一つの直径は3mを超えている。

 全高も10m近くになり、かなり威圧感がある。

 本来ならば、戦闘せずにやり過ごすような相手なのだ。


 皆の表情は、真剣だ。

 手を抜いて、勝てる相手ではないと判断しているのだ。

 俺も、身体をめぐる20個分の開放の力を確認する。


 いける。

 調子は上々。

 負ける可能性は、ない。


*****


 戦いは、6眼が放った光線により始まった。

 俺が前に出て、その光線を防ぐ。

 それと同時に、旅客たちが前進を開始する。

 怪我人や物資からなるべく離れた位置で戦いたいのだ。

 ちなみに、エミーリアとコロは、怪我人の護衛に残っている。

 人数を増やすことができ、意識も共有できるエミーリアは、周辺警戒しながらの護衛にぴったりなのだ。

 コロは、正面からの集団戦は得意ではないので、居残りである。


「「先に行くわ。」」

 二人同時の声がする。

 その声と同時に、翼をもつ竜人であるエリザとエルザが二人で腕を組んで羽ばたき、フローティングアイの群れに向けて飛翔していく。

 お互い片翼ずつなので、二人でバランスを取りながら飛んでいるのだ。

「翼がある竜人はいいっすね!」

 そう言うのは、ヴァシリーサ。

 ヴァシリーサも竜人だが、尻尾と角だけなので、空は飛べない。

 だが、そう言うヴァシリーサは、クラウチングスタートの姿勢になっている。

「爆走!」

 叫びと共に足元で爆発を起こしたヴァシリーサが、凄まじい勢いで突撃していく。

 そのスピードは、エリザ・エルザに勝るとも劣らない。

「みんな早いね!」

「儂らも遅れるなよ!」

 リピがそう言い、ヴィクトルが叫ぶ。

 見れば、リピの蠍部分に、ヴィクトルとローランドと作太郎が乗っている。

 そして、3人を乗せていても、リピの速度は、速い。

 ヴァシリーサほどではないが、普通に時速60㎞くらい出ている。

 そして、しれっと作太郎も乗っているあたり、ちゃっかりしている。

「まったく。みんなせっかちねぇ。」

 リトヴァが、あきれたような声を出す。

 そして、無造作に腕を一振り。

 すると、薄緑色のシールドが現れ、5眼のフローティングアイが放った光弾を防ぐ。


 先頭を行く俺が6眼の光線を弾き、最後尾を歩くリトヴァが5眼以下の光弾を防ぐ。

 そうこうしているうちに、1㎞も離れていた距離は、ものの30秒で縮まりきる。


 まず敵の集団に突入したのは、ヴァシリーサ。

 爆炎走術は、エリザ・エルザの飛翔よりも早かったのだ。

 ヴァシリーサは、六角棍を鋭く突き出しながら、敵団に突入する。 

 まず、目の前の4眼が、六角棍の餌食になった。

 最初に、一つの眼球に一突き。突き込んだ瞬間に六角棍が翻り、残り3つの眼球も粉砕。

 時と場所によっては『死眼』とも呼ばれるフローティングアイは、一切抵抗できず、易々と撃破される。


 次に突入したのは、エリザ・エルザの姉妹。

 飛翔しながらランスと盾を構え、錐揉みしつつ突撃し、その道すがらのフローティングアイを跳ね飛ばしていく。

 跳ね飛ばされたフローティングアイは、ランスに薙ぎ倒され、盾に圧殺され、多くが戦闘不能か、大きな損害を受けている。

 

 最後に到達したのは、リピとそれに乗ったヴィクトル、ローランド、作太郎の4人だ。

 前衛4人組らしく、突入してすぐに近くのフローティングアイに襲い掛かり、ちぎっては投げをしている。

 

 俺は、6眼に向かったが、目の前に5眼2体が立ちはだかる。

 護衛のようだ。

 まず、近い方の5眼のフローティングアイに襲い掛かる。

 5眼全てで光線を放ち俺に攻撃してくるが、その程度の威力、痛くも痒くもない。

 光線を体で受けながら、そのまま5眼の一つの眼球に灰鉄の剣を叩きつける。

 灰鉄の剣の切れ味では足りなかったようで、ぐしゃりとした感触と共に、5眼のうち1つが潰れる。

 切れ味は足りなかったが、威力は十分だったようで、眼球の破壊には成功した。

 剣の切れ味が足りなかったので、愛剣『蒼硬』も抜く。

 灰鉄の剣で相手をけん制しつつ、蒼硬を振るう。

 3つの眼を破壊した時点で、5眼のフローティングアイは引き始めた。

 

 周囲を見れば、勝てないと悟ったのか、フローティングアイの群れ全体が撤退を始めている。

「深追いはするなよ!」

 ヴィクトルが叫んでいる。

 こちらも怪我人を抱えているため、追撃できる状況ではないのだ。

 

 フローティングアイとの初の戦闘は、一応、こちらの勝利で終われたようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ