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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第5章
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第7話 討伐メンバー


「七眼が、確認されています。」


 その言葉を聴き、ブリーフィングルーム内が、ざわり、と騒がしくなった。

「7・・・!伝説レベルじゃねぇか!?」

 叫ぶ者もいる。

 先ほどの俺の質問を笑った旅客は、顔を青くして縮こまっている。


 伝説。

 確かに、七眼のフローティングアイが出てくる伝説がある。

 その伝説は「七星災厄の伝説」と呼ばれており、今からおよそ二千年前に実際にあったとされる伝説だ。

 簡単に言えば、人里に現れた七眼のフローティングアイを、当時最強と謳われた戦士が戦う、という話である。

 実際には、人々と和解しようとするフローティングアイと戦士の対話や、フローティングアイを利用しようとする欲深い人々との確執など、複雑でドロドロした話である。

 だが、現代では、フローティングアイの攻撃が、山を削ったり海を割ったりなど、あまりにも派手なことで、インターネット上で有名になった伝説だ。


 実は、この伝説は、殆どが事実だと言われている。

 実際、伝説の地だと言われている場所には、大きなクレーターや不自然な海溝などのフローティングアイの攻撃の痕跡が残っている。

 七眼のフローティングアイは、地形を変えるほどの怪物なのだ。


 ・・・しかし、七眼か。

 少し、嫌な予感がする。


「さらに、周囲には、六眼以下のフローティングアイが多数確認されています。その群れが討伐対象です。」

 フローティングアイの群れ。

 厄介な存在である。

 普通、フローティングアイは群れない。

 群れるということは、七眼ないしは六眼のフローティングアイがリーダーになって統率しているのだろう。

「群れの詳細は?」

 ざわめきの中、冷静な声が挙がる。

 そちらに目を向ければ、先日、ロンギストリアータ要塞街第3旅客情報局で会った『兎を囲む会』の面々だ。

 その表所は真剣で、一流旅客の雰囲気が漂う。

 少なくとも、フローティングアイを甘く見てはいないようだ。

「六眼が2。五眼が6。それ以下は数が確認できていませんが、多数いるようです。」

 かなり強力な群れだ。

 続けて、軍の担当官が部隊編成をを述べる。

「七眼と六眼を討伐する第1討伐隊、五眼を主に討伐する第2討伐隊、四眼以下を討伐する第三、第四討伐隊を構成し、群れを撃滅します。」

 妥当な編成だろう。

 四眼と三眼のフローティングアイは、文明圏で出現すれば脅威だが、辺境に来ている戦闘旅客たちからすれば、そこまで怖い相手ではない。

 怖いのは、五眼以上だ。

 それらを討伐するチームと、梅雨払いをするチームで分けるのは、自然な判断だ。

 今回の状況でも、その判断で問題はないだろう。


*****


 その後、参加しない者が部屋から退出し、チーム分けも済んだ。

 

 俺たちは、七眼ないし六眼のフローティングアイを討伐する第1討伐隊に参加することになった。

 俺たちのチームは、青鉄2名に緑透金1名、硬銀1名。

 戦力としては、ここに集まったチームの中では、最高クラスである。

 自然と、第1討伐隊になった。

 第1討伐隊は、俺たちの他に、2チームが参加することとなった。


 一つ目のチームは、青鉄が2名の二人組である。

 というか、知人だ。

「お、エリザ、エルザ。来てたのか。」 

 そこには、ほぼ同じ外見の二人組がいる。

 白い髪を腰まで伸ばした、背の高い竜人のような人種の女の二人組だ。

 正確には竜人ではなく、人造竜人という、別の人種である。

 ある星で行われていた非合法な産業の結果誕生した、人造人間なのだ。

 すらりと背が高く、その身長は180㎝ほどあるだろうか。

 アルビノのような雰囲気で、全身が白と赤で構成されている。 

 双子で、外見はほぼ一緒である。

 腰まで伸びた白い髪は、先端が赤く染まっており、肌は肌色だがかなり白い。

 瞳は濃い赤色で、光を吸い込むかのような質感のため、瞳に光が無いように見える。

 凶暴な笑顔を浮かべる口にはギザギザの真っ白い牙が見えている。

 頭には、真上に伸びた、先端の赤い白い角があるが、エリザは左側頭部から、エルザは右側頭部から角が生えている。

 背中には羽があるが、その羽も、エリザは左側のみ、エルザは右側の身に生えている。

 装備は、二人で揃いのワインレッドの戦闘用コート鎧を着込み、エリザが巨大なランスで、エルザが大きな縦長のヒーターシールドである。

「あら、姉さん。メタルがいるわ。」

「そうね、姉さん。メタルがいるわね。」

 二人がこちらを見て話す。

 大変ややこしいことに、二人は、互いを姉さんと呼ぶのだ。

 一応、最初に話すのは、必ずエリザであるため、誰が発言したかはわからなくはない。

 この二人は、強い。

 二人同時に戦う際にのみ使える切り札もある。

 その切り札まで含めれば、その強さは青鉄クラスの中でも最高峰だと言っていいだろう。


 もう一つのチームは『青の戦士を仰いで』という、青鉄旅客3名に緑透金2名の、ここに集まったチームでは最強のチームだ。

 青い装備で外見を統一したチームである。

 この星で最も有名な『青い戦士』の伝説を意識しているのがよくわかる。

 青い戦士の伝説は大変有名な英雄譚だ。

 小さい子供への読み聞かせ絵本にもなっており、その頃に憧れて、戦闘旅客になる者も多い。

 前衛が青鉄と緑透金1名、中衛が緑透金1名、後衛が青鉄1名、索敵が青鉄1名の、バランスが良いチームだ。


「儂がリーダーのヴィクトルじゃ。よろしく頼む。」

 リーダーは前衛の青鉄クラス戦闘旅客のヴィクトル。

 ヴィクトルはホクドウジンという背の低い人種だ。

 北にある『パルグラード自治区』という、蒸気機関を中心とした自治区出身の人種である。

 地球の日本地区出身の物が見ると「ドワーフだ・・・」と言うそうだ。

 その自治区の男性の例に漏れず、ヴィクトルは筋骨隆々だが背は低く、頭髪も髭も大変豊かである。

 頭髪と髭の色は深い茶色だ。

 髭の下の方を三つ編みにする編み方は、ホクドウジン的にはかなりトラディショナルな編み方だったはずだ。

 角のついた兜に、両刃の大斧。体を覆うほどの丸い盾。

 典型的なホクドウジンの重戦士だ。

「僕はスカウトのコロ。妖狐だよ。よろしく。」

 そう言うのは、6本の尾を持つ、青い前掛けを身に着けた、尻尾まで含めて大きさ70cmほどの小さなキツネだ。

 オスである、とのことである。

 妖狐は、キツネ系の高度知的生命体の中でも、魔力と呪力に長けている種である。

 外見からすると、コロの原始率は100%にかなり近いようだ。

 美しい黄金色の毛並みをしており、いかにも強い魔力を持っていそうである。

 妖狐の尾の数は力の強さを示す。

 6尾は霊狐としては相当の高位で、伝説に残っている狐もいるほどだ。

「わたしはリトヴァ。リトヴァ=ヘベロマ。フレッシュデッドの魔術師よ。よろしくね?」

 フレッシュデッド。動く死体タイプのアンデッドの中でも、肉体がほぼ腐敗や乾燥をせずに残っているものだ。

 リトヴァは、フレッシュデッドらしい青白い肌をしてはいるが、銀髪を腰まで伸ばした気の強そうな美人で、出るとこは出て引くとこは引いた豊満でメリハリのある体つきをしており、モデルのような体型だ。

 体のラインがわかるぴっちりとしたナイトドレスのような、青い色のローブを着ており、大変セクシーである。

 元は、老化を嫌い、己をフレッシュデッドに変化させたヒトの魔術師だという。

 老化を嫌った理由は、より強さを求めるため、だそうだ。

 青い戦士に憧れたが、戦士に適性はなかったため、魔術で強さを求めたとのことだ。

「私はローランド=ゴーラ。徒手戦士だ。よろしくな。」

 そう言うローランドは、猿人でも、ゴリラ系の人種である。

 原始率はそれなりに高く、姿勢がよくなったゴリラ、といった風貌だ。

 黒い艶やかな毛並みをした、物腰がパリッとした好青年である。

 徒手戦士とは、なかなか珍しい戦い方だ。

 武器はナックルダスターやバックラーで、鎧を着込んだ上で、その鎧の硬さを活かして、拳や体術で戦う戦士である。

 鎧を着た格闘家、といったイメージだ。

 装備は、武骨なデザインの青い全身鎧。

 ガタイの良さと相まって、とても頼りになりそうな雰囲気である。

「あたしはオン=リピ。魔術剣士だよ。よろしくね!」

 元気よくそう言うのは、サソリの頭胸部にあたる部分にヒト種の女性の上半身がある人種だ。

 蠍猿人という、南の『ルーべロス州』の砂漠地帯をルーツとする人種である。 

 ちなみに、リピが名前らしい。

 肌は褐色で、胸は大きくはないものの、メリハリのある妖艶な身体つきをしている。

 髪型はショートボブで、色は濃い緑色。

 上半身は青い軽鎧を着ており、下半身の甲殻には青いウォーペイントを施している。

 女性の上半身部分は四本の腕があり、そのうち1本に魔術杖、2本に小剣、1本にバックラーを持っており、 さらに、サソリとしての鋏と尻尾の張りもあるため、かなり器用に戦えそうである。


 5人全員、一流の強者が放つ独特な空気を漂わせている。

 かなり強力なパーティだ。

 

 エリザにエルザ、『青の戦士を仰いで』のメンバーたち。

 皆、共闘するのが、今から楽しみなほどの、一流の戦闘旅客たちである。


 だが、俺は、七眼のフローティングアイへの不安を拭いきれないのであった。

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