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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第4章
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第17話 辺境の冒険は続く


 ノノと遭遇してから3日後、ヴァシリーサの回復を待っていると、鈴から連絡が来た。

 内容は、ノノのその後についてであった。


 ノノを確保した鈴は、副官であるラピーラと共に、ノノに碧玉連邦への帰化を勧めたらしい。

 鈴やラピーラによる説得の結果、ノノは、技術作戦軍所属になったということだ。

 ノノも、社会に所属した方が研究者として活動しやすいことはわかっていたらしい。

 では、なぜあのような態度になっていたのか?

 その原因は2つあったそうだ。

 一つは、戦う前のやり取りからもわかるように、空間の制御に強い適性を示すエミーリアへの興味。

 これについては、ノノもエミーリアに深く謝罪している、とのことであった。

 そして、もう一つは、ノノの船の中身に原因があった。

 ノノの船には、ノノと同郷の研究者やその家族が、30名ほどコールドスリープ状態で乗っていたそうだ。

 その30名の立場のためにも、最初は強く出て、足元を見られることを避けようとしていたそうだ。

 その証拠に、コールドスリープから目覚めた同乗者達の地位が保証されると、ノノの態度が軟化したらしい。

 技術作戦軍としても、現文明よりも進んだ文明の研究者を確保できることとなった。

 特に、赤い空間を多少なりとも制御できるようになっている者を確保できたのは、大きいようだ。

 鈴も大変喜んでいた。


 次の日。

 ノノと遭遇してから4日後の朝。

 ノノは、律儀にも、ヴァシリーサの見舞いに来た。

 鈴も同行している。

 そこで、ノノは、俺たちに対して、非常に丁寧に謝罪をした。

「私が迷惑をかけたのだ。当然だろう。」

 とのことであった。

 本来は正直で素直な性格のようである。

 ヴァシリーサの見舞いに来たときは、戦闘時に着ていたスーツを脱いでおり、素顔が露わになっていた。

 服装は、白いTシャツに紺色ズボンというシンプルないでたちだ。

 ノノは、非常に整った中性的な顔立ちで、顔立ちからは性別不明であった。

 スーツで、身長が大きく見えていたようで、2mほどだと思っていた身長は、実際は170㎝ほど。

 細身ですらりとした体型をしている。

 胸がほんのり膨らんでいるので、女性だろうか?

 髪は長く、白い。

 皮膚は色白の肌色。

 髪の先端と手の先端に向けて深い青色になるようにグラデーションが掛かっており、深い青色の部分は半透明になっている。

 半透明な部分の内部には、光を放つ白や黄色の小さな粒がたくさん見え、あたかも宇宙のようである。

「訊いていいかわからないっすけど、ノノさんの性別は?」

 ヴァシリーサが、訊きづらいことをバシッと訊いてくれた。

「私は、性別はA3B23だ。」

 ・・・なに?

 

 どうやら、ノノの種の性別は担子菌に近い4極性をしているようだ。

 AとBの性別決定因子の両方が異なる場合、異性ということになるそうである。

 ノノの種の性別決定因子は、Aが1から32、Bが1から45まである。

 そのため、性別は1,440通りあるとのことであった。 

 この星では、担子菌系の人種でよく見る4極性の性別決定様式である。


 ノノ曰く、ノノたちは、古代文明の生き残りだということであった。

 自分たちをより上位生命体にするために、多くの種の利点を融合させた存在だったらしい。

 当時の人種名については教えてくれなかった。

 どうやら、人種名は黒歴史らしい。

 だが、あまりに多くの要素を合わせた結果、身体が不安定になりすぎて崩壊する者が続出し、そのせいで文明が崩壊したとのことである。

 ・・・はて。

 ノノの本名、ノノ=アイヴォ=エルイ。ノノが名で、アイヴォがコミュニティ名、エルイが生まれの番号とのことであった。

 エルイ、という番号を使う文明は、過去にあっただろうか?

 いまいち思い出せない。

 まあ、今重要なのは、ノノは敵ではなくなった、ということだろう。


 ノノの見舞いに同行した鈴から、元々ノノの船が埋まっていたあたりの調査を依頼された。

 ノノの船に由来する者が他に残っていないかの調査だという。

 まあ、それは名目で、実際はノノの戦闘能力等を測るため、辺境に繰り出す口実を作りたいようであった。

 まあ、辺境とはいえ、浅い位置である。

 ヴァシリーサがいなくともどうにかなる、ということで、ヴァシリーサの回復を待たず、白い森に向かうことになった。


 ノノは船を守るためにかなり気負っていたようで、その気負いが無くなったノノは、どことなく気楽そうであった。

 調査中は、辺境に広がる自然環境に興味を示したり、気軽に雑談に興じたりしていた。

 ちなみに、肝心のノノの能力だが、かなり高い者であった。

 優れた身体能力に、豊富な魔力に呪力、それらを効果的に扱う器用さに、とっさの判断に迷うことがない判断力。

 戦闘技術こそ素人レベルだが、それ以外は高次元でまとまっており、浅い辺境では十分に通用するレベルであった。

 そのため、全く問題なく白い森の中心まで到達することができた。

「うーん・・・。この場所の特別な調査は、もういらなそうですね。」

 ノノの船が飛び立った場所を見て、鈴が呟いた。

 鈴の言葉の意味には、この場所の調査が必要ない以外に、ノノの能力を測ることが完了したことも含まれていた。

 その言葉を片耳に聴きつつ、改めて船が埋まっていた場所を見る。

 周囲にあった遺跡は、船が浮上するのに巻き込まれて、多くが倒壊している。

 船が飛び立った跡には、巨大な穴が開いている。

 穴の周囲や底を見れば、俺たちとは別グループの旅客や学者、技術作戦軍の将兵たちが、何か調査を行っている。

「ここの調査は、彼らや旅客たちの通常調査に任せて大丈夫でしょう。」

「そうだな。周囲の自然以外に調査すべきものがあるようには思えん。それでいいだろう。」

 ノノは、どうやら今回の調査が、自分の能力を測るものだとどことなく感じているだ。

 まあ、気づいたうえで何も言わないなら、俺たちが口をはさむことではない。


 調査は、つつがなく終了した。


*****


「いや~、お待たせしたっす!」

 鈴たちと白い森を探索した次の日、ヴァシリーサが退院した。

 当初の見通しでは全治1週間だったが、5日で完治したとのことである。

 ギプスは外れ、包帯もない。

 細かい傷は跡も残っておらず、その再生力に感嘆するばかりである。

「あたしはいつでも仕事に取り掛かれるっすよ!」

 そう言い、ヴァシリーサは腕をぐるぐると回す。

 やる気満々である。

 

 竜人は、身体が鈍りづらい。

 5日間寝ていた程度ならば、リハビリもそこまで必要ないだろう。

 この後にでも、少しばかり模擬戦をしてみれば、感覚はすぐに戻ってくるだろう。

 

 ヴァシリーサが復活したので、辺境のより深い場所まで向かうことを考ることができる。

 より深い、厳しい場所まで到達すれば、エミーリアも強くなることだろう。

「それでは、辺境の奥を目指すのですかな?」

 作太郎も、辺境のより奥深くを目指すことを感づいている。

「・・・用意は何が必要。」

 エミーリアは、早速準備を始める心づもりのようだ。

 意欲があって大変よろしい。

 

 さて。

 辺境のより深くに進むことを考え始めると、いろいろ用意しなければいけないものが出てくる。

 食料、武具、消耗品・・・。

「奥を目指すなら、まず、真っ先に用意しなきゃいけないモノがあるな。」

 俺がそう言うと、エミーリアと作太郎は首をかしげている。

 ヴァシリーサはわかっているようで、うんうんと頷いている。

 俺は、まず真っ先に用意しなければいけないモノについて、口を開く。



「よし、じゃあ装甲車を買おうか!」


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