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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第4章
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第15話 事後処理

 「で、ノノさん、まだやりますか?」

 鈴の声が、無情に響く。


 ノノは、その声に、力なく首を振った。


 戦いは、終わった。


 その時、上空から轟音が響く。


 突如響いた音に、思わず顔を上げる。

「来ましたね。」

 鈴が、言う。

 上空を戦闘機が通過していく。

 ヴィリデレクス州で開発された、デルタ翼の小型戦闘機だ。

 それが、20機ほど。

 それに遅れるように、空気を叩くような音が聞こえ始める。

 そちらに目をやれば、多数の攻撃ヘリと強襲ヘリ、輸送ヘリが飛んでくる。

 ノノの船を一部回収していく予定であるようだ。


 どうやら、鈴は、自分が出撃したときから勝利を確信し、輸送部隊を用意していたらしい。

 輸送ヘリ部隊は、多数の戦闘機と攻撃ヘリに護衛されながらやってきたのだ。

 辺境で輸送ヘリのみを飛ばすのは、自殺行為である。

 多数の護衛が必要なのだ。

 ノノの船の周囲に降り立った輸送ヘリと強襲ヘリから、技術作戦軍の軍人と、陸軍の軍人が降りてくる。

 陸軍の軍人は、作業中の護衛だろう。

 攻撃ヘリは、周辺警戒を続けている。

 飛んできたヘリの中には、救護ヘリも数機混ざっていた。

 どうやら、この辺りに、小さな拠点を設営するようである。


 早速、救護ヘリでヴァシリーサが治療を受ける。

 ノノから初撃で手酷いダメージを受けたヴァシリーサは、エミーリアと作太郎により応急処置が行われていた。

 しかし、出血は止まったためすぐに命に関わるわけではないものの、腕の骨と足の骨が一本ずつ折れており、本格的な治療が必要であった。

 救護ヘリが到着したのは、とても助かった。

  

 ノノの身柄は、碧玉連邦技術作戦軍の預かりとなることとなった。

 今のところ、ノノは碧玉連邦の国民ではないため、大きな罪に問われることはないらしい。

 ヴァシリーサを傷つけたことのみ罪に問われるそうだ。

 ノノの船は、鈴の魔術によって千個ほどに解体されている。

 案の定、技術作戦軍によって回収されるとのことである。

 後始末は、軍に任せてよいだろう。

 

 鈴の本体である知恵鈴懸木は、分体だけ残して、空間転移で帰っていった。

 鈴の分体は、現場で指揮を続けるようである。

 先ほど、鈴の服を回収しておいてよかった。

 木の本体から現れた鈴は、全裸だったのだ。

「メタルさん、いろいろと、ありがとうございます。」

 そう言うのは、俺が回収しておいた服を着た、鈴である。

 顔が赤い。

 本体である知恵鈴懸木の葉でどうにか身体を隠していたため裸は誰にも見られることはなかったが、それでも恥ずかしかったようだ。

 

 ノノの船の回収などで、鈴はしばらくこの場所に残ることになった。

 この後、ノノの船の回収用に、地上部隊も展開してくる予定らしい。

 巨大な船なので、回収には半月ほどかかる計算だとのことだ。

 軍の輸送ヘリは、ノノの船でいっぱいになる予定なので、俺とエミーリア、作太郎は、歩いて要塞まで帰ることになった。

 ヴァシリーサは、怪我が比較的重いため、救護ヘリで搬送される。


 初めての辺境にしては、なかなかに大きな出来事になったと言えるだろう。


*****


 エミーリア達と、ロンギストリアータ第6要塞まで戻ってくる。

 要塞に着いたのは、18時くらいであった。

「・・・ヴァシリーサ、大丈夫かな?」

 エミーリアが、ヴァシリーサを心配する。

 命に別状はないとはいえ、俺もヴァシリーサは心配だ。

「ちょっとお見舞いに行こうか。」

 なので、要塞内の軍病院に、ヴァシリーサを見舞いに行くことにした。

 この要塞の軍病院は、要塞の一区画であり、医院区画といった方がいいかもしれない。

 医院区画に行き、受付からヴァシリーサの病室番号を調べる。


 ヴァシリーサの病室番号を調べた後、その病室に向かう。

 医院区画は、他の要塞区画よりもわかりやすいようになっている。

 そのため、すんなりとヴァシリーサの病室に着いた。

 病室に入ると、ヴァシリーサは治療も終わって、ベッドに横になっていた。

 ヘリによって3時間ほど前に要塞に到着していたので、治療は既に終わっていたのだ。

「あちゃー、カッコ悪いとこ見られちゃったっすね。」

 ヴァシリーサは、そういって、苦笑いする。

 それに、エミーリアが、首を振る。

「・・・私を庇ってくれて、カッコよかった。」

 エミーリアがそう言うと、ヴァシリーサが顔を赤くする。

 確かに、エミーリアを守るために啖呵を切ったヴァシリーサは、格好良かった。

「名誉の負傷でござる。ゆっくり休まれよ。」

 作太郎も、頷きながら、言う。

「あー・・・。面と向かって言われると、照れるっすね。」

 ヴァシリーサは、照れながら、無事だった右腕で、頬を少し引っ掻いている。

 ベッドからはみ出した、黒い艶やかな鱗に覆われた尻尾も、落ち着きなさげに揺れている。

 しかし、ヴァシリーサの怪我は思ったより酷かったようだ。

 左手と右足にギプスがはめられ、それ以外の部分も、包帯でぐるぐる巻きである。

「けがの具合は?」

 俺がヴァシリーサに訊くと、ヴァシリーサは、けろりとして答えた。

「ちょっと、擦り傷とかが多かった感じっすね。骨折以外は、大した怪我じゃないっすよ。全治1週間くらいっすかね?」

 竜人であるヴァシリーサは、怪我の治りが早い。

 骨折でも、1週間もあれば、くっつくのだ。


 その後、30分ほどヴァシリーサと話していると、ヴァシリーサの食事の時間が来た。

「では、面会はここまででお願いしますね。」

 看護師にそう言われ、軍病院を後にする。

 竜人向けの病院食は、肉を中心とした、かなりボリューミーな物である。

 それを見たエミーリアの腹が、音を鳴らす。

「・・・。」

 エミーリアは、顔を赤くしながら、黙ってお腹を押さえる。

「俺たちも、飯、食いに行くか。」


 俺がそう言うと、エミーリアは、嬉しそうに頷いた。



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