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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第4章
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第12話 ノノとの戦い

 

 ノノから、殺気が吹き荒れる。

 

 ノノは、何もしゃべらない。

 ただ、戦闘態勢になったことは、わかる。

 

 俺も、灰鉄の剣と盾を構える。

 

(開放、15)

 開放を引き上げる。

 先ほどのノノの攻撃に対するヴァシリーサの反応は、早かった。

 以前、リコラ達に協力している際にヴァシリーサと戦った時は、開放2で戦ったが、どうやら、その時のヴァシリーサは本気ではなかったようだ。

 先程の反応からすると、ヴァシリーサは、俺の開放8程度の戦闘力があると思っていいだろう。

 それを易々と戦闘不能にしたのだ。

 ノノは、先程の攻撃だけでも、開放10程度の強さはありそうである。

 なので、開放の段階は、余裕をもって15にしておく。

 ノノには分からないように、身体の外への力の放出は、抑える。


 ノノは、俺が力を開放したことに気づいてはいないようだ。 

 先ほどと何も変わらない動きで、攻撃を繰り出してくる。

 ノノの、3本目の腕が、俺に迫る。

 3本目の腕を動かすときは、予備動作がほぼないのが、少し厄介だ。 

 少なくとも、こちらから見える側の筋肉が動いたりはしていない。

 迫ってきた3本目の腕を、盾で弾く。

 そして、その腕を切断するように、剣を振るう。

 しかし、3本目の腕は、不可思議な動きで俺の斬撃を躱す。

 どうやら、関節の数は、1か所ではないようだ。

 ノノの方向から、嫌な感じがしたので、上半身を反らす。

 すると、眼前を、青白い光が通過する。

 ノノを見れば、手に、銃のような兵器を持っている。

 そこから、光は発射されたのだろう。

 2発、3発と光は続けて発射されてくる。

 躱しながら、転がっている石を拾って光に当ててみれば、光にあてた部分が煙を上げて蒸発してしまった。

 それなりの威力があるようだ。

 俺の動きを阻害するように、3本目の腕が、攻撃を仕掛けてくる。

 そして、3本目の腕で動きを阻害したところに、光を撃ちこんでくる。

 ・・・まあ、対処できないほどではない。


 3本目の腕を弾き、光を躱しながら、ノノに肉薄する。

 ノノは、接近を嫌って、光をばら撒き始める。

 光は、先程のレーザーのようなものから、小さな光の弾が毎分500発ほどのペースで撃ちだされるように変化した。


 だが、弾が直線的である限り、避けようはある。

 3本目の腕が動きを妨害しようと攻撃してくるが、それも避ければ問題はない。

 懐まで潜り込む。

 すると、ノノは、光を出す武器を振り上げている。

 銃口らしき場所から、光の刃が出ている。

 あの銃のような武器は、遠近両用の便利なもののようだ。

 今持っている灰鉄の剣と盾は、あの光線兵器を正面から受け止める性能はない。

 この剣と盾を鍛えたボリスは名工だが、灰鉄という素材の限界から、ノノの光線兵器の火力相手には、分が悪い。

 そのため、切っ先を跳ね上げ、光線兵器自体の切断を狙う。

 ノノは俺の動きを看破したようで、バックステップで遠ざかりながら、熱線で斬りつけてくる。


 だが、甘い。


 ノノのバックステップに合わせて、体が密着するほど、大きく踏み込む。

 この位置まで来れば、ノノは、腕を曲げなければ、俺を光線で斬りつけることはできない。

 俺も、この大ぶりな剣を振ることはできないが、そこは問題ない。

 剣を握ったまま、そのハンドガードで、ノノの腹部を殴る。

 硬いような、少し柔らかいような妙な手ごたえだ。

 ノノの着ている服には、衝撃吸収素材でも使われているのかもしれない。

 だが、少しは衝撃が通ったようで、ノノは、数歩後退する。

 そのノノに向けて盾を構え、体ごとぶつかりに行く。

 全身を使ったシールドバッシュだ。

 ノノがよろけた所にクリーンヒットし、ノノは数mほど吹き飛ぶ。

 

 だが、ダメージはあまりないようで、ノノは、吹き飛びながら、すぐに体勢を立て直し、10mほど後方に跳んだ。


「・・・面倒な奴だな。」

 ノノが言う。

「地味に強いじゃないか。」

 そう言い、ノノは、光線兵器を下げ、手のひらをこちらに向ける。

 

 背筋に、寒気が走る。

 

 咄嗟に、横に跳ぶ。

 すると、先ほどまで俺がいたところを、赤い光が奔っていった。

 俺が避けた瞬間、赤い光は消える。


 例の赤い空間だろう。

 まだ制御できていないようなことを言っていたが、ある程度の操作はできるようだ。

 赤い光に見えたモノは、今までの赤い空間と同じ、空間の断裂のようだ。

 強力な空間攻撃だと考えていいだろう。

 

 ノノが、再び手のひらをこちらに向ける。

 また、赤い空間を使う気だろう。

 

 その時、目の前の空間に、ジジ、という音と共に、目の前の空間に、ノイズが走る。

 そのノイズに関わらず、ノノが、赤い空間を放ってくる。

 だが、その赤い空間は、俺まで到達することはなかった。

「・・・まったく。どこの誰かは知りませんが、この空間は、そんな易々と使っていいものではないのですよ。」


 ノノが放った赤い空間は、目の前に突如として現れた人物を飲み込むことができず、止まっている。

 そこには、白衣を着た、背の低い、おかっぱ頭の少女が立っている。


 今回の旅で幾度か世話になっている、技術作戦軍の 懸木 鈴 元帥だ。


「や、鈴ちゃん、いきなりどうしたんだい?」

 目の前に現れた鈴に、声をかける。

 すると鈴は、ノノを見据えたまま答える。

「赤い空間の反応を感知して、来ました。そして、鈴ちゃんって呼ばないでください。」

 鈴ちゃんと呼ばれるのは、少し嫌なようだ。

 鈴は、言葉を続ける。

「あの個体は、研究サンプルとして、回収したいですね。」

 鈴の言葉に、ノノが、声を上げる。

 その声は、苛立ちが隠せていない。

「私を研究サンプルに?・・・面白い。できるなら、やってみたまえ。」

 ノノの言葉に、鈴が答える。

「おや?会話ができるのですね。でしたら、交渉でもしてみますか。」

 鈴は、一切警戒する様子もなく、ノノに近づいていく。

 そして、歩きながら、ノノに声をかける。

「あなたの基本的な権利は尊重します。我々の研究にご協力いただけませんか?」

 その言葉を聴いたノノは、いきなり、3本目の腕を鈴に向けて叩きつける。

 3本目の腕は、鈴の胸のあたりに命中したように見える。

 そして、鈴の背中から、3本目の腕が、突き出す。

「・・・なに?」

 ノノが、思わずといった風に、声を上げる。

「おや、いきなり攻撃ですか。もう少し、知能があると思ったのですが・・・。」

 体を貫かれたはずの鈴の口が動き、声が響く。

 


「あなたは、敵、ということですね。強制的に、確保しましょう。」



 そう言い、鈴は、胸を貫かれたまま、ニヤリと笑うのだった。


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