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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第4章
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第6話 要塞の全貌

 昼食を食べた後、エミーリアと作太郎は旅客向け士官教育に向かっていった。

 夕方まで行うらしいので、暇な時間ができる。

 その間に、宿泊先を確保することにした。

 


 さて、ここで、この『ロンギストリアータ第6要塞』の全容を見ておこう。

 要塞は大きく分けて3部分で構成されている。

 最も巨大で、今俺たちがいるカーテンウォールを本体とする『本要塞』。

 要塞前に棚田状に広がっている『防衛要塞』。

 そして、本要塞から独立した、前線基地としての役目を持つ『前進要塞』の3つだ。

 

『主要塞』は、ロンギストリアータ第6要塞の本体である。

 高さ数百m、厚さ約100mのカーテンウォールと、カーテンウォールよりも数十mほど高い、直径約150mの円筒形の塔により構成される。

 カーテンウォールの厚さと塔の直径は、最上部でのものであり、下部に行くほどより厚く、より太く造られている。

 要塞の主砲は、塔の最上部に建造された『50口径150cm汎用魔導火薬複合方式滑腔砲』で、それを三連装砲塔に収めて設置してある。

 さらに、カーテンウォールの壁面や塔の側面に多数の側塔や外殻塔が建造され、80㎝砲や50㎝砲、30㎝砲に50㎜機関砲など、様々な種類の砲が配備されているのだ。

 最前線の要塞だけあり、6つのロンギストリアータ要塞の中で最も火砲が多い。

『防衛要塞』は、最も巨大なカーテンウォールの前に、さらに棚田状に広がっている要塞だ。

 カーテンウォール上だけでは火砲が不足するため、後から追加で建造されたのだ。

 扇状や四角形、円形の陣地を複雑に組み合わせ、全体を見れば棚田のように後ろに行くほど高くなるように建造されている、多層要塞である。

 外壁は厚さ50~100mで金属とコンクリートで造られており、その内部に土が充填されている。

 随所に建設されている塔などを除き、カーテンウォールに近いほど高くなっていくが、その高さは最大でもカーテンウォールの3分の1程度で、要塞前進部を原生生物が登ってきてもカーテンウォールに阻まれるようになっている。 

 土の部分は、防壁よりも数mから十数mほど低くなるようになっており、地下には通路が張り巡らされており、地表部分には、施設や畑が造られたりしている。

 防衛要塞には、主要塞に滞在していない者達が作った街がある。

 主要塞の中に滞在すれば安全性は高いが、狭くて息苦しく、また、軍の施設でもあるため堅苦しい部分も多い。

 そういった部分を嫌う旅客や、後ろ暗いことがある者は、外に滞在場所を求めたのだ。

 カーテンウォールの外とはいえ、要塞の外に建造されているわけではない。

 正門に近い扇状要塞の外壁内部に作られているのである。

 この街は、基本的に要塞からは黙認されており、よほどのことがない限り、軍は取り締まりなどは行わない。

 一方で、いざというときに特別に防衛するわけでもないため、要塞内部よりは危険性は高い。

 まあ、一応棚田状の要塞の外壁内部なので、最低限の防衛は行われることになっている。

 さらに、ごく一部の人々が住まう、完全に防衛要塞の外に作られた集落もある。

 その集落は、何か事情がある者達により形成されており、完全な無法地帯として知られている。

『前進要塞』は、主要塞と防衛要塞から離れた部分に建造された、その名の通り、文明圏の前進のために作られた要塞である。 

 前進要塞は、地上ないし地下で接続された『接続前進要塞』と、完全に独立している『独立前進要塞』がある。

 形も大きさも様々だが、辺境に挑戦する旅客たちの中継基地として、大いに活躍している。

 大きなものでは滑走路を内包する巨大な要塞もあり、小さなものでも、垂直離着陸機の発着ポートは備えている。

 

 

 さらに、これら要塞に含まれない物として『開拓都市』や『前進都市』、『深部基地』がある。

 辺境の奥地でも、比較的旅客や軍の調査部隊の往来が多く、かつ比較的安全性が高い場所に自然にできた街が『開拓都市』である。

 人口数十人程度の『開拓村』から、数千人にもなる『開拓都市』まで、大きさは様々だ。

 開拓都市が軍ないしは国に届け出をすれば、公式に国の支援も受けることができる。

 『前進都市』は、辺境に築かれた都市である。

 厳しい辺境の中でも、比較的安全だと評価された場所に築かれている。

 軍が計画的に建造することもあれば、旅客たちが安全地帯を利用し続けるうちに自然と都市になった場所もある。

 開拓都市の中でも3か月以上存続しており、恒常的な都市になったと軍が判断したものに番号が割り振られ、前進都市となるのだ。

 番号は、単純にできた順番である。

 その規模は、人口数十人の小さな村から数千人のしっかりした都市まで様々だ。

 数か所しかないが、人口が1万人を超えている都市もある。



 以上が、おおまかこのあたりの辺境の概要である。

 これらの設備を支えるために、この要塞に滞在する人数は200万人超えており、この要塞で生まれ育った者も少なくないそうだ。


 今回、宿泊先は主要塞の中にする。

 俺だけなら防衛要塞内の都市か前進要塞に移るのだが、少々狭く、息苦しいとはいえ、要塞に初めて来た者は主要塞に宿泊するのがいいだろう。

 宿泊費も、主要塞ならば、比較的安い。

 主要塞には、旅客のための区画も多い。

 俺たちは、その区画の中の、要塞宿区画と呼ばれる区画に向かう。


 数分歩くと『ロンギストリアータ第6要塞第3宿泊区画』と書かれた看板が見える。

 その看板が掛けられた扉は解放されており、その先には、大量の扉が並んだ区画が見える。

「ようこそ!第6要塞第3宿泊区画へ!」

 受付に居た女性軍人が、にこやかに言う。

「ヒト型用の4人部屋を一つお願いするっす。」

 2人部屋を2つ予約しようと思っていたら、ヴァシリーサが4人部屋を予約してしまった。

「洗面所とか風呂がついてる部屋をお願いしたいっす。」

 そのあたりの時間を分ければ、大丈夫だろうか?

 まあ、女性陣がいいといえば、大丈夫なのだろう。

 1泊の価格は、1人3万印。

 それなりのグレードの部屋を取ったこともあり、少し高い。

 長期契約にすればもっと安くなるが、とりあえずの短期宿泊だと、こんなもんだろう。

 主要塞の宿は外と比べて安いとはいえ、辺境の宿は高いのだ。

 

 部屋に入る。

 10畳程度の、それなりに広い部屋だ。

 部屋の手前のスペースには、テーブルと椅子が4つあり、壁際に荷物置きがある。

 戦闘旅客向けということで、入り口近くには、大型の武具ラックがある。

 部屋の奥の壁際に、二段ベッドが2基。

 部屋の突き当りから、洗面所と風呂に向かえるようだ。

 まあ、要塞内の部屋とすれば、悪くない広さだろう。

 荷物を置き、エミーリア達が講習を終了するまで時間をつぶすことにする。

 

 ヴァシリーサと、部屋に備え付けてあったボードゲームなどをしつつ時間を潰す。

 ・・・戦績は、ヴァシリーサの勝ち越しである。

「メタルさん、思ったよりも、弱いっすね。」

 ヴァシリーサは、勝ち誇った顔で言う。

「くっ・・・!」

 何も言い返せない。

 そんな感じで楽しんでいると、すぐにエミーリア達が講習を修了する時間になった。

 ヴァシリーサと二人で、エミーリア達との集合場所に向かう。

 

 集合場所は、旅客用の広間だ。

 旅客情報局と同じような機能がある広間で、フードコート型の飲食店や、仕事掲示板などがある。

「・・・疲れた。」

 そう言うのはエミーリア。

 その表情は、疲労によってげっそりしているようにも見える。

「はっはっは。そうでしょうなぁ。」

 エミーリアの様子を見て、カラリと言う作太郎は、疲れていないように見える。

「作太郎さんは疲れてないっすか?」

「某は、元々灰神楽自治区で戦士団の団長をしてましたからなぁ。」

 詳しく聴けば、その時にある程度の士官教育を受けているため、そこまで苦労はしなかったとのことである。

 エミーリアは、初めてのことであるため、だいぶ疲れてしまったようだ。

「しかし、成績は良かったでござるよ。」

 エミーリアの成績自体は良好だったようである。

 

 そんなことを話しながらフードコートエリアで休憩していると、突然、大きな声が響き渡った。

「緊急任務発令!緊急任務発令!腕に覚えのある戦闘旅客の参加を求む!」

 その声に、旅客たちの耳目が集まる。


 さて、いよいよ辺境で戦うときが、来たようだ。


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