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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第7章
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第11話 黒い球体

 皆さま、いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 昨日、投稿したつもりでしたが、トラブルなのか、次話投稿ボタンを押し忘れたのか、上手く投稿されておりませんでした。

 更新が遅れ、大変申し訳ございません。

 日曜日に確実に投稿できるよう気をつけてまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。


「この宇宙の核と、戦うためさ。」

 そう言うと、黒い球体は、ゆらり、と揺れる。

 黒い球体は、そのまま、ゆらり、ゆらりと揺れている。

 

 俺の勘が、訴えてくる。

 目の前で揺れている黒い球体こそ、この宇宙の核である、と。


 だが、ここは俺が生きてきた宇宙とは異なる、全く別の法則によって成り立つ宇宙だ。

 この宇宙にしかいない生き物などの可能性もある。

 勘だけで攻撃し、余計な体力を使うわけにもいかない。

 そう思い、黒い球体を観察していると、揺れが、止まる。

 そして、黒い球体側から再び話しかけてきた。

「”カク”?カク、*#なに?」

 再び、言葉にノイズが混じっている。

 とはいえ、このくらいのノイズならば、意味は分かる。

 核の意味が、わからないのだろう。


 ・・・いや、待てよ?


 そもそも、この黒い球体は、なぜ、こちらの言葉を話すことができているのだろうか?

「お前、なぜ、こちらの言葉がわかる?」

 俺が悩んでも仕方がないので、単刀直入に訊いてみる。

 すると、再び、黒い球体は、ゆらり、と揺れる。

 ゆらり、ゆらりと数回揺れた後、また、止まる。

「+*!”&#*”&#=+**~&#。」 

 音だ。

 また、意味の分からない音の羅列を黒い球体が、発した。

 黒い球体は、動かない。

 そして、再び音を発した。

「そ*!”&#ん&ゅ=+ほ*~&#。」

 少し、判別できる音は混じるが、言葉にはなっていない。

「こっちが分かるように話してくれないか?」

 俺がそう言えば、黒い球体は、また、ゆらり、ゆらりと揺れ始める。

 どうやら、このゆらゆらと動くのは、この球体が思考している時のようだ。


 しばらく揺れ動いた後、球体はまた止まる。

「そちらの言語を模倣している。」

 今回は、ノイズの混じらない流暢な言葉だった。

 しかし、模倣か。

 何か情報がどこかにあり、その情報から学習してきているのだろうか?

 既に学習を終えているのならば、ノイズは発しないはずである。

 ノイズを発してくるということは、現在進行形で模倣中ということなのだろうか?

 そして、模倣中ということは、その元はどこから得ているのだろうか?

 疑問は尽きない。


 ・・・とはいえ、この疑問たちは、今考えることではない。


 今考えるべきは、この黒い球体は、倒すべきなのかどうか、ということだ。

 模倣できているなら、核という言葉の意味も分かってきているのではないだろうか?

「お前は、この宇宙の核か?」

 俺がそう問えば、核は、少し震える。

 そして、言葉を発する。

「核。・・・物の中心、コア、中核。」

 核の意味は、分かっていそうだ。


「その意味でならば、正しい。」


 なるほど。

 この黒い球体は、核で合っていた。


 敵だ。


 拳を向ける。

 姿勢制御はまだまだ上手くいっていないが、敵が目の前に来たならば、戦いは始まる。

 今の状態で戦うしかない。

 拳を構えた俺を見てか、黒い球体改めこの宇宙の核は、すっと距離を離す。


 まずい!

 

 本能が、勘が、大音量で警鐘を鳴らす。

 何か来る。

 ヤバい一撃が来る。

 その警鐘に従い、両手を顔の前に交差し、防御態勢をとる。

 その瞬間、凄まじい衝撃が防御姿勢をとった上半身に襲い掛かってきた。

「っ・・・!」

 衝撃はガードを貫通し、頭部に届く。

 頭が揺らされ、声すら出ず、一瞬、意識が遠のく。

 とんでもない威力だ。

 ナターリアの固有世界で受けた攻撃の、さらに数段上の威力である。 

 このクラスの威力の攻撃は、久々に受けた。

 そのくせ、周囲の赤い空間に変化はなく、一切の予兆が感知できない。

 

 その凄まじい衝撃は、続けて何発も、四方八方から襲い掛かってくる。

 覇山たちも、この攻撃に晒されたのだろうか。

 ならば、覇山はともかくとして、ブライアンが生きて帰って来られたのは、とても幸運だったのだろう。 


 一撃ごとに、意識が飛びそうになり、吐きそうになり、身体が捩じ切れそうな思いをする。

 周囲が真っ赤でわかりづらいが、遠くに見える核の位置と体にかかる慣性から、一撃ごとに大きく吹き飛んでいることがわかる。

 これは、なかなかキツい。

 姿勢制御すらままならないところに、全周囲からの攻撃。

 周囲の景色が赤一色で変わらない中でもみくちゃにされ、自分の姿勢すらわからなくなる。



 だが、耐えられる。 



 今のところ、凄まじい力だが、俺に致命傷を与えるには至っていない。

 幸い、急所を狙ってくるほど器用な攻撃ではない。

 体を丸めて急所を隠せば、致命傷は避けることができる。

 ならば、耐えながら、観察できる。

 

 身体を丸め、全身の筋肉を引き締め、纏っている力の出力を上げる。

 

 未だ、ピンボールのように身体は跳ね飛ばされているが、まだまだ、耐えられる。

 肩に衝撃が来る。

 身体が吹き飛ぶ。

 だが、俺の筋肉は突破されていない。

 頭に衝撃が来る。

 腕で阻む。

 身体は吹き飛ぶが、頭部まで衝撃は貫通してこない。

 こちらの力の密度を濃くしたことで、威力を受け止めきることができている。


 そのまま、一発一発を、観察する。


 観察して、わかった。

 これは、ただ、膨大なエネルギーを叩きつけてきているだけの攻撃だ。

 凄まじい威力だが、とても雑な攻撃である。

 だが、納得の攻撃でもある。

 相手の宇宙から見れば、俺一人など、矮小な存在だ。

 ヒトが小さな虫を踏み潰すのと一緒で、技術を凝らす必要など、無い。

 宇宙からすると、俺など、虫と一緒で、その体重を乗せれば、簡単に潰れるものでしかないのだ。

 そして、恐らくだが、この宇宙は『戦い』を経験したことがないのだろう。

 それも当然だ。

 宇宙に並び立つモノなど、他の宇宙しかない。

 そして、他の宇宙は捕食対象であるため、相性的に、戦いになりはしない。

 一方的な捕食になるだけだ。


 だから、こんなにも雑な攻撃を繰り返すのだ。


 いや、攻撃ですらないのだろう。

 踏み潰そうとした虫が、足を避けた。

 だから、また足を振り下ろした。

 それだけなのだ。


 ・・・衝撃が来る、ということは、エネルギーの動きがある。

 俺にぶつかり、衝撃を伝えるだけの密度のエネルギーが、動いてきているのだ。

 腕に、衝撃。

 俺の身体は吹き飛ぶ。

 それを迎え撃つように、背に衝撃。

 正面方向に、俺は吹き飛ぶ。

 俺の正面から、衝撃。

 腕と脚で、分散させて受ける。

 吹き飛んでいる方向から、迎え撃つように衝撃が来ている。

 ならば、次は、背の方向から、衝撃が来るはずだ。


 衝撃が来る瞬間、そちらを、蹴る。

 

 捉えた。


 足裏に、異様な重さを感じる。

 その重さは、脚から、身体に伝わってくる。

 その重さを、ダメージにせず、身体を押し出すことに使う。


 見据えるは、離れたところに浮かぶ、核。


 拳を、硬く、握りこむ。

 脚から伝わる重さだけでは、足りない。

 丸めていた身体を大きく伸ばし、全身の力も追加する。 



 跳躍。



 一瞬で、黒い核が、目の前に迫る。

 

 俺は、核に向け、硬く握り締めた拳を、振りぬいた。


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