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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第7章
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第5話 元帥たち


 部屋の中央にある、真っ赤な円。


 その円の周囲を囲むように、配線や術式が剥き出しの、いかにも即席で作ったような機械が展開されている。

「接続部、再安定始めます。」

「03セクションの様子は。」

「安定。」

「よし。そっちはそのまま維持しろ。」

「08セクション、揺らぎが来ています。」

「方向は?」

「拡大です。」

「魔力供給を25%増やせ。抑え込め。」

「了解。」

 飛び交う言葉。

 技術作戦軍の技術者や魔術師、呪術師たちが、せわしなく動き回り、常に機械を調整している。

 その様子からすると、決して余裕があるような状態ではなさそうだ。

 だが、そんな状況でも、緊張感こそあるが叫んだりしていない感じが、なんだかプロフェッショナル感を感じさせる。

 とはいえ、聴いていても、専門用語が多く、その意味はなんとなくしか分からない。

 機械には円形メーターだったり、ばね測りみたいなアナログメーターだったり、魔術式計測陣だったりの無数の測定計器が付いており、それぞれが回ったり、増減したりと忙しい。

 いくつかのメーターを見てみたが、それが何を示しているのかは、さっぱりわからない。

 その機械の一部には、円形の手すり付きパッドが2か所に設置されており、その上にはそれぞれ一人ずつ、軍人が立っている。


 一人は、身長170cmくらいの、黒い髪を床につくほどに伸ばした女性。

 たれ気味で半開きの目をした、おっとりというか若干眠そうな目つきの女性だ。

 170cmくらいの身長で、細身だが凹凸のはっきりとした、グラマラスな体つきをしている。

 その女性からは、大気を震わせる程の魔力が溢れ出しており、機械に吸い込まれている。


 もう一人は、身長が2mを超えていそうな、筋骨隆々とした体形の老婆。

 腰くらいまでの長さがありそうな白髪を、首の後ろあたりから三つ編みにしている。

 毛量が多いのか、三つ編みはかなり太い。

 筋骨隆々な体形からは年齢を読み取れないが、意思の強さを感じさせるその顔には、悠久の時を物語る深いしわが刻まれている。

 こちらの女性からは、空間が歪んで見えるほどの呪力が溢れ、機械に送り込まれている。


 機械は送り込まれる凄まじい量の力を変換したり操作したりして、この赤い円を安定させているようだ。

 女性のうち、大柄な女性が、我々に気が付いたようで顔をこちらに向ける。

「お、来たね!」

 筋骨隆々の老婆の豪快な声色が部屋に響く。

 響いた声に反応し、技師や魔術師たちが、一気にこちらを向く。

「鈴ちゃん!」

 そう叫ぶのは、機械の全体が見渡せる場所に立っていた、メカメカしいごっついゴーグルをつけている女性軍人。

 ツンツンと跳ねたオレンジ色の髪を肩口まで伸ばし、若干ヤンキー感が漂っている。

 技術作戦軍のNo.3、ラピーラ=カルヴァン大将だ。

「お!メタルにエミーリア!剣が峰ぶりだな!」

 ラピーラは気さくに声を掛けてくる。

「元気そうで何よりだ!」

 見かけ通り、ラピーラは明るくさっぱりとした人物だ。

 そんなラピーラに、鈴が近寄り、言う。

「鈴ちゃんって、呼ばないでください。で、状況に問題は?」

 鈴がそう言えば、ラピーラは言葉を返す。

「今は無ぇ。だが、いつまで持つかは、わからねぇな。」

 ラピーラは答えつつも、手を動かし機械を操作している。

「ブライアン中将はどこに?」

 そういえば、部屋の中にブライアンが見当たらない。

「ああ、覇山元帥と一緒に、潜ってる。ブライアン中将の能力がないと、深く潜っていけなくてな。」

 なるほど。

 話を聴くに、どうやら、ブライアンは赤い宇宙の浅いところで、覇山が深く潜るためのサポートをしているようだ。

 そのまま、鈴とラピーラは話し込み始める。

 その間も、周囲の技術者や魔術師、呪術師は、ラピーラに何かを報告している。

 ラピーラは、鈴と話しながらも、報告される言葉にすべて反応し、指示を飛ばしている。

 そのチンピラじみた見た目からは想像しづらいが、ラピーラも非常に有能な指揮官なのだ。

 鈴は、ラピーラと話しながらも、こちらを見て、言う。

「メタルさん。メタルさんは、エメリア元帥と大鏡元帥から、状況を確認しておいてください。」


 碧玉連邦軍には、3つの軍がある。

 戦略作戦軍、技術作戦軍、治安作戦軍の3つだ。

 そして、それらの軍には、それぞれの分野で最強・最高峰の軍人である元帥がいるのだ。

 現在の元帥は、戦略作戦軍には覇山=健仁 元帥を始めとする6名。

 治安作戦軍には、佐藤=柴雄 元帥を始めとする2名。

 技術作戦軍には、懸木=鈴 元帥を始めとする3名。

 兼任の元帥が一名いるため、現在は10名の元帥がいることになる。


 今回来ている元帥2名は、エメリア元帥と大鏡元帥の2名。

 身長170cmくらいの、黒い髪を床につくほどに伸ばした女性がエメリア元帥。

 本名、覇山=エメリア=ロフォス。

 元々の名前はロフォス=エメリア=フォメウスだったが、覇山元帥と結婚し、今の名前を名乗っているのだという。

 エメリアの文化圏では、前後に苗字が付くのだ。

 結婚すると、元の前の苗字を名の後ろに移し、新しい苗字を前につけて名乗るのだという。

 覇山元帥の妻で、戦略作戦軍の最強の魔導師である元帥だ。


 大鏡元帥は、身長2mを超えていそうな筋骨隆々とした体形の老婆で、技術作戦軍の元帥を兼任している、呪術師として最強の元帥である。

 本名は、大鏡=時子。

 実は地球の日本出身で、この星出身ではない。

 辺境と文明圏の境の大規模呪術的監視システムを構築したりなど、戦略作戦軍の任務以外に呪術技術面も超越的であるため、兼任という扱いになっている。

 過去、元帥を兼任した者は数人しかいないため、凄まじい経歴の元帥だと言える。

 

 この二人の元帥に加え、現在は覇山元帥が赤い宇宙の内部に偵察に潜っている。

 さらに、技術面の統括に、懸木元帥。

 4人もの元帥が同じ場所で同じ相手に対して動くなど、ほとんど見ることはできない。


 今回は、宇宙を相手にするということで、この星最高峰の戦士たちが、集結して戦っているのだ。


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