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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第6章
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第41話 再遭遇


 エミーリア視点



「説明ありがとう、リンガー君。君の考えも、よくわかった。」


 急に聞こえた男の声に、皆、部屋の一角に目を向ける。

 


 先ほどまで誰もいなかったはずの場所に、いつの間にか、レピスタが立っていた。

 唐突なレピスタの出現に、身構える。

 作太郎とリンガー達も、警戒から身構えている。


「ふむ。歓迎されては、おらんな。」

 身構えた皆を見て、レピスタは嘯いている。

 だが、ここに現れ、先ほどのセリフを吐いたということは、リンガーが何を話したかはわかっているのだろう。

「リンガーの言うことは、本当?」

 レピスタに問う。

 リンガーの言うことが本当ならば、レピスタはただの暴君ではない。

 一応、文明の存続に向けて動いていることになる。

 私の言葉に、レピスタは、首を横に振る。

「・・・先程までは、本当だった。」

 ・・・先程まで?

 私が疑問を感じていると、レピスタは、芝居がかった動きで、私のことを指す。

「エミーリア。お前と再開するまでだ。」

 ・・・?

 私と、再開するまで?

 私とレピスタが会ったことで、何か、状況が動くような要素があっただろうか?

「エミーリア。お前の力を見るまでは、宇宙を喰らう宇宙に、対抗することは考えられなかった。」

 私の力?

 疑問に思う私を置き去りに、レピスタは言葉を続ける。

「お前は、予測よりはるかに大きな力を得て、戻ってきた。」

 大きな力。

 メーアから譲り受けた力のことだろうか。

「たかだが3か月で、それだけの力を得た方法は知らぬ。だが、その力により、生じたものがある。」

 私が力を得て生まれたもの。

 レピスタが負ける確率とか、だろうか?

 私がそんな皮肉な妄想をしていると、レピスタは、とんでもないことを言い出した。



「エミーリアよ。お前の内側には、宇宙が、生まれている。」 



 ・・・???

 何を言っているのか?

 私の内側に、宇宙?

「何を言っている?」

 私の疑問を代弁するかのように、作太郎が、問う。

 それに、レピスタが、答える。

「私がその宇宙を得ることで、宇宙を喰らう宇宙に、対抗できるのだ。」

 ・・・話が飛躍しすぎていて、よくわからない。

 だが、一つだけ、わかったことがある。


「では、大人しく取り込まれるがいい。」


 レピスタが、私の命を狙っているということだ。


 言葉と共に、レピスタは、私に向けて紫の棘を放つ。

 私は、その棘を辛うじて躱す。

 やはり、早い。

 レピスタが現れたときから警戒しており、かつ攻撃の速度が早いことがわかっていたおかげで、辛うじて対応できた。

 レピスタには殺気がない。

 レピスタとしては、捕食くらいにしか考えていないのだろう。

 殺気が一切なく、無造作に襲い掛かってくるため、予測が難しい。


 次々と襲い来る棘を、辛うじて躱し続ける。

 作太郎もフォローしてくれているため、どうにか捌くことができているが、じり貧だ。

 どうにかして逃げなければいけない。

 逃げて、『私達』を展開できるようになってから、再度戦うしか、勝ち目がない。

 幸い、この部屋の入口へは、距離が近い。

 このまま逃げられ――。



 そう思った瞬間、足に、重さが加わった。

 回避に動いていた身体は、唐突に足に負荷が加わったことで、バランスを崩す。



 思わず、足元を見る。

 そこには、ヴィールが、いた。

 視界の端に、迫りくる暗い紫色の棘が見える。


 躱せない。

 

 躱せない中で、極限状態で急加速した思考が、回る。

 今回の特殊部隊員は、侵入に特化した者達で、構成されていた。

 ヴィールも、侵入、云わば隠密行動に特化した戦術クラスの超人だったのだ。

 その力を活かし、私に気づかれないよう、私の足元に近寄ってきていたのだろう。

 ヴィールは、レピスタの考えへの信奉者である。

 そのため、機を見て、私の動きの阻害を行ったのだ。


 そんなことを考えたが、意味は、ない。

 やけにゆっくりと、暗い紫色の棘が、自身の胸に向かってくるのが、見える。

 だが、私の身体は、やけにゆっくりなその暗い紫色の棘よりも、遅い。

 躱すことは、できない。



 パリン。



 小さなガラスが割れるような音が、響いた。

 すべてがスローに見える視界の中で、メタルからもらったお守りだけが、素早く、私と暗い紫色の棘の間に動いたのだ。

 そして、その身で、暗い紫色の棘を止めたのである。

 小さなガラスが割れるような音は、取り付けられた、最後の宝石が割れた音だ。


 次の瞬間、お守りから、強い力が体に加わる。

 私はその力に押され、治安維持部隊事務所の外へと弾きだされる。

 そのまま、私は要塞、いや、脱出船の壁を破壊しながら、吹き飛ぶ。

 壁を破壊しているはずなのに、衝撃がほとんどない。

 弾きだされつつ、体勢を立て直す。


 吹き飛びながら、理解した。

 これは、お守りの効果だ。

 エミーリアを危険から遠ざけるための、メタルが組み込んだ効果だ。

 

 空中で体勢を立て直す。

 体勢を立て直した私の方を見て、作太郎が叫ぶ。

「術式を探しに行きなされ!」

 作太郎は、レピスタと切り結んでいる。

 作太郎では、レピスタに勝てない。

「勝てない。」

 私がそう言うと、作太郎が、暗い紫色の棘を受け流しながら、返す。

「なに、それなりのところで逃げまする。」

 作太郎がそう言うと、レピスタが、暗い紫色の棘を放ちながら口を開く。

「逃がすとでも?」

 レピスタはそう言い、私の方を追おうと動く。

 だが、その瞬間、作太郎の剣閃が、レピスタを阻む。

「先ほども逃がしておいて、よく言いよる。」

 先程は一切通用しなかった一閃は、しかし、レピスタの頬を浅く傷つける。

「む?」

 いきなり攻撃が通用し、レピスタの顔が少し、歪む。

 その様子を見て、作太郎が、眼窩に昏い赤の光を灯し、底冷えするような声色で、言い放つ。

「その程度の魔術、二度目で斬れぬとでも?」

 そう言いつつ、さらに、一閃。

 レピスタは、それを躱すように動く。

 そこで、作太郎が再度叫んだ。

「エミーリア、行け!」

 

 その叫びに私は頷き、作太郎に背を向け、走り出したのだった。

 


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