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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第6章
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第34話 拘束術式

 メタル視点


 ジェーンと白銀の鎧には、覇山とブライアンが協力して、拘束術式をかけることとなった。

 ジェーンと白銀の鎧は、こちらに協力する様子が一切なく、この2名に時間をかけても仕方がないという結論になったのだ。

「どういった術式がいいだろうか?」

 覇山が、ブライアンに尋ねる。

 総知識量ではブライアンの方が優れている。

「牢獄式がいいでしょうな。」

 拘束魔術および拘束呪術には、タイプがいくつかある。

 相手を捕まえることに向いた捕縛型や、一定のエリアからの脱出を防ぐ管理型、より狭い範囲に押しとどめる牢獄型など、その分類は多岐に渡る。

 ここに来るまでに見た、捕らえられた第6前進都市の住民が施されていた、首が白く光っていた魔術は、管理型の拘束術式だと言えるだろう。

 今回の術式は、牢獄型にするようだ。

 牢獄型は、展開難易度はやや高いが、構造を多層化することで脱出されづらくできることが利点である。

 覇山とブライアンは、ジェーンと白銀の鎧の見張りを俺に任せ、拘束術式の準備を始めた。

 二人は、専業の魔術師や呪術師ではないが、魔術と呪術の知識量は多く、技術は高い。

 覇山はその魔眼の管理に必要であるため呪術への造詣が深く、さらに、妻が大魔術師であるため、魔術の知識も多い。

 ブライアンは、魔法拳士や呪法拳士ともいえる戦い方をするため、魔術と呪術、双方に精通しているといってもよい。

 二人が協力すれば、それなりに強力な拘束術式を展開することができるだろう。


 俺は、魔力が足りないため、拘束術式は手伝うことができない。

 そのため、拘束術式の準備をしている間、二人が逃げ出さないか監視する役目となった。

「お前たちは、何者だ?」

 監視しつつ、ジェーンに訊く。

 しかし、ジェーンには鼻で笑われてしまった。

「はっ。話すとでも?」

「まあ、そうだよな。」

 そりゃそうだ。

 エミーリアとそっくりなジェーンについて、探りを入れたいものの、どう質問すればいいかわからない。

 うーむ。

 ならば、白銀の鎧の方に訊いてみよう。

 そもそも、捕まっているのに鎧を着たままというのもおかしい。

「とりあえず、隠し武器があるかもしれん。そっちの白い鎧の奴、兜ぐらい取れ。」

 俺がそう言うと、白銀の鎧のバイザーが、手をかけることなく、開く。

「所持品は、ない。」

 白銀の鎧は、言う。

 白銀の鎧の言う通り、バイザーの奥には、何もなかった。

 鎧を着ているであろう人物の身体すらない。

 鎧の内部の空洞があるだけだ。

 リビングアーマー。

 地球出身の者からは、ゴーレムの一種とも言われる種族だ。

 自然発生の者と人工発生の者がいる種族である。

 リビングアーマーでは、鎧を脱ぐことはできない。

 ヒトに、身体を捨てろと言っているのと同じだ。

 ・・・むむ、なかなかうまく尋問はできないな。

 エミーリアとジェーンの関係を探りたいが、エミーリアの名を出してしまえば、余計な情報を与えてしまいそうだ。

 余計な情報を与えてしまえば、別に動いているエミーリアの方へ情報が伝わり、余計な障害になってしまうかもしれない。

 難しい。

 そんな感じに俺が悩んでいると、覇山から声がかかる。

「メタルよ。準備ができたぞ。」

 ・・・下手くそな俺の尋問では、白銀の鎧の種族がゴーレムであることが分かったことぐらいで、結局、ほとんど何もわからなかった。


 準備が終わった覇山とブライアンは、ジェーンと白銀の鎧の前に移動する。

 ブライアンが鈍い金色に輝く右手を翳し、刀を鞘に納めたまま床に突き立てる。

 覇山とブライアンは、呪力を練り上げ、呪術を展開。

 その呪術により、床に魔法陣が広がる。

 そして、その魔法陣に魔力が流れる。

 すると、ジェーンと白銀の鎧がゆっくりと宙に浮き、周囲に魔力の壁が形成されている。

 数秒で、ジェーンと白銀の鎧の全方向に、青白い光と黄色い光が入り混じった複雑な光を放つ稲光のようなものが展開。

 それによって牢獄が形成される。

「---。」

 ジェーンが、口をパクパクしている。

 何か話しているようだ。

 だが、術式には音声遮断機能もあるようで、声は聞こえない。

 こちらに反応がないことを見て、ジェーンはむすっとして黙ってしまった。

 牢獄から放出される魔力で、周囲の空間が歪んで見える。

 空間魔術を使っているときの特徴だ。

 展開された魔法陣を読み取ってみる。

 魔法陣と呪術陣が複合された、高度な陣だ。

 今回は、空間魔術を中核とし、魔術5層、呪術3層を1セットとして、さらにそれをブライアンの特殊能力で補強したものが20セット、合計160層施されているようだ。

 一般には、牢獄型拘束術式は5層あれば脱出はかなり難しいと言われている。

 脱出方法をそれぞれの層ごとに用意しなければいけないため、5層あれば、通常であれば個人で用意できる範囲を超えてくるからだ。

 そこから考えれば、今回の術式は、かなり重厚だと言える。

 だが・・・。

「・・・3時間、か?」

 俺は、ブライアンに問う。

「そこまでいけば、上出来でしょうな。」

 ブライアンは、答える。

 今回の術式は、通常の牢獄型術式と比べれば、かなり強力だ。

 とはいえ、ジェーンは、戦略級超人であるブライアンと互角に戦うだけの力を持つ超人だ。

 160層では、正直、足りない。

 さらに、先ほどまでの戦い方からすると、ジェーンは魔術師だ。

 加えて、レギオンは呪術への適正も高い。

 呪術も使えると考えた方がいいだろう。

 ならば、術式の解除も早いくなると想定される。

 長くて、3時間。

 ジェーンを拘束できるのは、その程度の時間になるだろう。

 一応、術式がどの程度破られたかは、ブライアンに伝わるようになっているらしい。


 その3時間の内に、暗雲の術式を発見・解除し、第6前進都市の人々を見つけ、事態の収拾を図らなければいけない。



 何のヒントもなければかなり難しいが、今回は、捕虜がいる。

 覇山が捕らえた爬虫類人の女だ。

 敵組織の中でどの程度の地位の者かはわからないが、それなりに情報は知っているはずである。

「さて、まずは術式の中枢に案内してもらおう。」

 ブライアンが言う。

 ジェーン達を抑えておくことができる時間は短い。

 悠長に尋問している時間はない。

 動きつつ、爬虫類人の女から聞き出す必要がある。

 幸い、爬虫類人の女は頷くと、抵抗せず、素直に案内を始めた。



 俺たちは、爬虫類人の女の後に続き、ダエダレアの洞窟のさらに奥へと進むのだった。


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