表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第6章
143/208

第32話 ジェーン

 メタル視点


 俺の目線の先では、エミーリア(?)が、青い顔をしながら、ガタガタと震えている。

 

 ・・・エミーリアではないとわかっているが、あまり気分がいいものではない。

「立て。」

 エミーリア(?)の首筋に蒼硬を突き付けたまま、言う。 

 俺の言葉を聞いたエミーリア(?)は、立ち上がろうとする。

 だが、上手く立つことができない。

「足に力が入らん。立てん。」

 堂々とした声色でエミーリア(?)が言う。

 なぜか、開き直っている。

 時間稼ぎをしているのかとも思ったが、エミーリア(?)の膝を見れば、がくがくと震えている。

 時間稼ぎではなく、俺の攻撃のダメージが抜けておらず、足に力が入らないようだ。

 ・・・ちょっと、やりすぎたようだ。

「立てないか。じゃあ、立てるようになるまで、色々聞かせてもらおう。」

 立てなくても、口は動くようだ。

「話すとでも、思うか?」

 思わない。

 とはいえ、訊き方次第でいろいろ引き出せるかもしれない。

 とりあえず、こいつやここまで俺たちを誘導してきた白銀の鎧が何者なのかを探らなければいけない。

「まず、名は?」

 正直に答えるとは思わないが、とりあえず、訊く。

「ジェーンだ。」

 ふむ。

 今までに、ジェーンという知り合いは何人もいるが、その誰とも一致しない。

 エミーリア似の、全く知らない他人だろうか?

 俺がそう思っていると、ブライアンが口を開いた

「・・・ジェーン・ドゥか。」

 ブライアンの声色は、忌々しそうな感じだ。

 ジェーン・ドゥ?

 確かに、ジェーンと名乗っているが・・・。

 俺の表情が、いかにも何もわかっていなかった様子だったようで、ブライアンが小さな声で耳打ちしてくれる。

「名前不明の人物を指す、地球の言葉だ。」

 なるほど。

 名前を隠すつもりのようだ。

「名乗るつもりはないようだな。」

 ブライアンがそう言うと、エミーリア(?)改めジェーンは、鼻で笑う。

「ほう?よく知っていたな。」

 この、抵抗できない状態で敵に囲まれている状況で、強気なものだ。

 あまりにも、軽率な振る舞いである。


 ・・・いや、もしかして、自身の命が軽いのか?


 この、ジェーンと名乗る女。

 その外見はエミーリアと瓜二つである。

 決して、エミーリアと関係ないということはないだろう。

 もしかしたら、エミーリアと血縁関係にあるのかもしれない。

 ならば、このジェーンと名乗る女も、レギオンである可能性がある。

 レギオンだった場合、自分は複数で一人。

 一人が死んでも、自分自身は死なない。

 だから、強気なのかもしれない。


 ここで尋問している今この時も、他のジェーンが何かしら暗躍しているかもしれない。

 そうなれば、俺たちはまんまと時間を稼がれている可能性がある。

 とはいえ、このジェーンは、自身がレギオンだと気づかれていないと思っているだろう。

「他のジェーンは、どこにいる?」

 俺がそう訊くと、ジェーンは、一瞬、驚いたような顔をした。

 エミーリアのことを知らないため、ジェーンがレギオンである可能性がわからないブライアンは、俺に向かって訝しげな雰囲気を放っている。

「あんた、レギオンだろ?しかも、群体レギオンなんじゃないか?」

 俺がそう訊けば、ジェーンは、明らかに動揺する。

「な・・・なんのことだ?」

 どうも、尋問されることへの心構えなどはないようだ。

 軍人として教育を受けたことがあるわけではなさそうだ。

 俺が群体レギオンと言ったことで、ブライアンは納得した表情になった。

 俺よりも遥かに頭が回るブライアンのことだ。

 俺がジェーンがレギオンだと仮定する何かしらの情報を持っていて、揺さぶりをかけているとわかったのだろう。

「ま、言わないよな。」

 まあ、正直に群体レギオンだと話すわけはないだろう。

「とはいえ、レギオンだって、痛いモノは痛いだろう?」

 

 ジェーンの掌の近くに、蒼硬を突き立て、にやり、と笑ってみる。

「ちょっとずつ、指を削ってみようか?」

 俺がそう言うと、ジェーンの余裕の表情が、少し崩れる。

「それとも、致命傷にならない程度に腹を開いてみれば、いいか?」

 蒼硬の腹で、ジェーンの腹部を、ゆっくりと撫でる。

 ジェーンの体が、少し、震える。

「目は、片方あれば、充分だよな?」

 そう言い、ジェーンの頭に手をかける。

 ジェーンの表情には、余裕がなくなってきた。


「メタルよ。そこまでにしておけ。」

 ブライアンのものではない声で、俺を静止する言葉が聞こえる。

 まあ、実際には、脅しているだけで拷問をやる気はないのだが。

「なんだ、いいとこだったのに。」

 そう嘯きながら、振り向く。

 

 振り向いた先には、覇山が立っていた。


 葉山の前には、カナヘビの胴体を伸ばして手足を増やしたような外見の爬虫類人の女がいる。

 どうやら、覇山は無事に勝利し、爬虫類人の女を案内役にしてここまで進んできたようだ。

 覇山は、見たことのない槍を背負っている。

 あの爬虫類人の女の武器だろうか?

 武装解除して捕虜にしたようだ。

 覇山は無傷。

 爬虫類人の女も、無傷。

 無傷のまま降伏させるとは、相当な実力差があったのだろう。

「情報を聞き出せないのならば、無力化して放置でいい。」

 覇山は、言葉を続ける。

「案内役は、いる。」

 覇山がそう言うと、ジェーンは、驚いたような表情をして、爬虫類人の女を見る。

 すると、爬虫類人の女は、居心地悪そうに、口を開く。

「・・・ごめんなさいね。私、自分の命が、惜しいの。」

 

 爬虫類人の女は、そう言い、ジェーンに向かって申し訳なさそうな表情をするのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ