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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第6章
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第27話 要塞探索

 エミーリア視点


 捕まっているであろう特殊部隊員と魔術で拉致された人々を救助したい。

 しかし、どこにいるかわからない。

 救助だけでなく、レピスタのところへたどり着くにしても、どこかで要塞の地図を見つける必要がある。

 

 同じ場所に留まっていると怪しまれるため、一般人を装いながら要塞を探索しつつ、地図がありそうな場所を探す。

 その中で分かったことがある。

 灰神楽自治区の人々の他、かなり多くの人々が、この要塞に移住している。

 そして、その人々は、私財をほぼ持っていない。

 急に浚われてきたような雰囲気だ。

 だが、この要塞にいることを嫌がっているような素振りはなく、皆、意欲的かつ勤勉に仕事に取り組んでいる。

 不気味だ。

 とても不気味だ。

 だが、皆、熱心に仕事に取り組んでいるおかげで、周囲への注意は散漫なようだ。

 おかげで目立たないように移動していれば、怪しまれることがない。

 今のところ、騒ぎにはならずに要塞を探索できている。


 通路を進んでいくと、大きな通路が交差する場所に出る。

 広場のような感じだ。

 中央には吹き抜けがあり、のぞき込めば下の階が見える。

 なんとも、開放感のあるエリアだ。

 吹き抜けの近くに、看板のようなものがある。

 もしや、と思い近づいて見てみれば、幸いなことに、要塞内の地図が載っている。

 大型ショッピングモールなどにある店舗配置図みたいな感じだ。

 掲示されている地図によれば、要塞は地上部5階に、地下部5階の計10階建て。

 最上階の上には、侵入する前に見えた、三連装砲塔などが配置されている屋上がある。

 各階の似たような場所に広間があり、そこは吹き抜けで数階分繋がっているようである。

 地図に記載されているそれぞれの部屋を見てみる。

 行政区、居住区、工業区・・・。

 大まかな区分けと共に、それぞれのエリアにある部屋に番号や名前が記されている。

 部屋名は、一般の住民に関係がありそうな場所のみ記載されているようだ。

 描かれている部屋の中で、捕まっている者たちのヒントを入手できそうな場所といえば、治安維持組織である「灰神楽自治区戦士団」の事務室だろうか?

 また、何があるか書いていない場所も多い。

 建築中なのか、一般住民には関係ないエリアなのか。

 とりあえず、スマートフォンのカメラで、要塞の地図の写真を撮る。

 スマートフォンは、オフライン状態にしてある。

 ここまでしっかり侵入しても、スマートフォンの位置情報でバレては意味がない。


 画像を保存してから、改めて地図を見る。

 ・・・明らかに怪しい場所がある。

 要塞の中央。

 どの階でも、中央部にそれなりの範囲の空白がある。

 頭の中で全ての階の中央部の空白の範囲を重ね合わせてみると、球形に近い形状になる。

 要塞の中央にある、巨大な球形のエリア。

 何かがある、と考えていいのではなかろうか。

 もしかしたら、レピスタもそこにいるかもしれない。

 さらに、各階の空白をつなげて球体を作ると、その球体の底部分が途切れている。

 完全な球体ではなく底が平らなのか、それとも、地下5階よりも下にさらに階が続いているのか。

 そこまで考えたとことで、肩に何かが触れるのを感じる。

 肩に視線を向ければ、作太郎の手が肩を叩いている。

「人が。」

 作太郎が短く言う。

 周囲を確認すれば、こちらに近づいてくる人がいる。

 私たちを気にしている様子はない。

 とはいえ、わざわざ近づかれるまで待つ必要もない。


 私と作太郎は、怪しまれないよう、自然な足取りでその看板の前を離れる。

 どこに向かうべきか。

 情報を得るならば、灰神楽自治区戦士団の事務室が向いているだろう。

 しかし、作太郎も私も元々は灰神楽自治区戦士団の所属だ。

 事務室に行けば、流石に私たちの顔を知っている者がいるだろう。

 そうなれば、侵入していることがばれてしまう。

 人がいない時間帯を狙って侵入するにしても、複数の種族がいる混成の戦士団なので、それぞれの種族の活動時間に合わせて1日中誰かが出勤しているはずだ。

 そうなれば侵入も難しい。

 灰神楽自治区戦士団の事務室から情報を得るのは難しいだろう。

 となると、やはり中央か。

 あの配置図の中で一番怪しかったのは、中央の球形のエリアである。

 

 地図から少し離れ、角を曲がったところで、作太郎に声をかける。

「中央を調べる。」

 私の言葉に、作太郎が頷く。

「やはり、そこでしょうな。明らかに怪しい空間でござる。」

 作太郎も、私と同じく中央部の空白を怪しいと思っていたようだ。

 

 スマートフォンで撮影しておいた地図を見ながら、要塞の中を進む。

 改めて地図を見れば、要塞は、船のような形状をしている。

 私たちがいるのは、要塞を船に例えるならば、船首か船尾の端っこのあたり。

 中央まではそれなりに距離がある。

 とはいえ、要塞内は開けており、吹き抜けなども多いため移動は簡単。

 要塞らしくはないが、この移動のしやすさは助かる。


 地図上は結構な距離があったが、移動しやすいおかげですぐに要塞中央に着いた。

「・・・これは一体?」

 中央にあったものを見て、作太郎が首を傾けている。

 私も、目の前にあるモノが何なのかは、よくわからない。

 要塞の中央にあったものは、鈍色に輝く金属でできている、巨大な球形の構造物だ。

 その球形の構造物の周囲は吹き抜けになっており、球形の構造物の上から下まで見ることができる。

 私たちは最上階にいるため、上から球形の構造物の全体が見える。

 外見は、鈍色の金属がむき出しで、さらにいたるところにパイプやコードが走り回っており非常に無骨だ。

 その直径は100m以上はありそうだ。

 その外見は、周囲の柔らかな白色の壁やワインレッドのカーペットが敷かれた洒落た内装には似合わない。

 ところどころから太いパイプやケーブルが要塞へと伸びており、この球体が何かしらの役割を持っていることがわかる。

 だが、外見からは何のための球体なのかは、よくわからない。

 見れば、所々に内部に入るためのハッチやドア、それに付随するキャットウォークが見える。

 さらに、1階と2階からは球体の中に入るための通路が伸びており、球体にも入口の扉があるのが見える。

 それらの入口には、灰神楽自治区戦士団だと思われる武装した警備員が複数立っている。

 それなりにしっかりとした警備態勢だ。

 球体の入口と接続されている1~2階あたりの警備員数は多いが、幸い、私たちが今いる5階部分に警備員はいない。

 今まで探索してきた中で、警備されている場所はなかった。

 いよいよもって、この場所は怪しいと感じる。

 だが、いきなり侵入したら、危険かもしれない。

「入る?危ない?」

 作太郎に、尋ねる。

 私の問いに、作太郎は答える。

「確かに、危険ではござろう。しかし、こちとら既に侵入している身。なにか動かねば、状況は変わらぬかと。」

 ・・・それもそうか。

 ならばあの球体へ侵入し、ここに助けるべき人がいなくとも、灰神楽自治区についての情報を得るべきだろう。

「わかった。入る。」

 私がそういうと、作太郎は頷く。


 私と作太郎は、球体に向けて、跳ぶ。

 私たちがいた足場から球体までは十数mほどあるが、超人である私たちには問題のない距離だ。

 無事、見つからずに球体に取りつくことができた。

 さらに、近くのキャットウォークへと飛び移り、そこにある扉から、球体の中へと侵入を試みる。

 扉を少し開けてのぞき込んでみれば、扉の先は暗い。

 荷物などは見えるが、幸い、人はいないようである。



 私と作太郎は、音を立てないよう、球体の中へと歩を進めるのだった。

 

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