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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第6章
125/208

第14話 メタルたちの準備

 俺と覇山、それにブライアン。

 超人3人に加え、3人の超越師団支援大隊の幹部も合わせ、作戦をすり合わせる。

 

 今回動員される支援大隊は、通信大隊、衛生大隊、航空大隊がそれぞれ1個ずつだという。

 彼ら支援大隊の力を借り、俺たち3人は、原生生物の大移動の原因だと思われる暗雲の原因を探りに向かうのだ。


 今回発生している暗雲は、地表面から高度8000m程度までの範囲に発生している。

 暗雲の形状は釣鐘型で、直径は10,000m程度。

 暗雲の密度は非常に高く、暗雲の内部は1m程度の深さまでしか見えず、内部については全くわかっていない。

 一度、ドローンを投入したところ、未帰還ではあったが弾き返されることはなかったため、突入自体は可能だと判断された。

 そこで、未知の暗雲に突入させても生存可能なレベルだと考えられる超人3人を突入させ、その内部を探ることになったのだという。

 

 そこで、まず、俺たち3人が上空から暗雲に向けて降下するため、目標上空15,000m地点に移動する。

 暗雲自体は8000m程度の高度までしか達していないが、その上空には乱気流が渦巻いていることが、ドローンや観測気球による調査により判っている。

 その結果、安全に飛行するには5000m以上高度を離す必要があると見積もられたのだ。

 暗雲上空15,000m地点で、俺たちは輸送機から飛び降り、暗雲に向かう。

 その際、パラシュートを使うと乱気流によって吹き飛ばされてしまうため、パラシュートなしで飛び降りる。

 内部に突入した俺たちは、暗雲内部の状況によって、そのまま原因を撃滅するのか、情報を収集して撤退するのかを判断することとなる。

 また、作戦中、航空大隊の機体のうち1機が上空に待機するそうだ。

 そこに通信大隊と衛生大隊の医療部隊が搭乗し、空中の前線基地としての機能を持たせるそうだ。

 通信大隊は、その空中基地に加え、さらに要塞から暗雲上空までの間の数か所に展開し、暗雲に突入した俺たちと要塞の通信を維持する任務も行うとのこと。

 衛生大隊は、俺たちが負傷した際に迅速に治療を行うために上空に待機するとともに、待機部隊以外は輸送部隊として医療品や食料品等を用意するとのことである。

 およそ1500名を動員した、大規模な支援体制だ。


「普通に、地面を歩いて行っちゃ、だめなの?」

 俺は、覇山に尋ねる。

 航空機から飛び降りること自体は別に嫌ではないが、この作戦では、航空部隊が危険にさらされる。

 俺たちだけで暗雲に突入できるならば、それが一番だと思うのだが・・・?

 すると、覇山は首を振り、答えた。

「大量の原生生物を突破して向かうことは、我らならば可能だろう。」

 それはそうだ。

 俺と覇山、そしてブライアンがいれば、原生生物の千や二千は問題にならない。

「だが、大量の原生生物がいる地上で、我々と通信部隊が通信を維持するのは、難しい。」

 ふむ。

 原生生物には、謎の電波を出すものもいる。

 さらに、地上から進んだのでは、通信部隊が同行できなくなるか。

「さらに、今回、全容把握をより迅速に行うため、メーア殿に現地協力を頼んでいる。」

 メーアか。

 確かに、メーアはその力で辺境にて大きな縄張りを作り、生活していた。

 俺たちよりも辺境には詳しいだろう。

「メーア殿は、現状では俺たちと共に原生生物を突破できる力はない。故に、同行するために航空機とした。」

 なるほど。

 メーアは、エミーリアに力を譲ったため、今はだいぶ力が落ちている。

 それでも、並の原生生物よりは遥かに強いが、俺たちのように無数の原生生物を突破できるほどではないのだろう。

 そのため、メーアは一緒に航空機で進出して上空待機し、俺たちから受けた通信を元に、暗雲の解析に協力してくれるそうだ。

 どうやら、いろいろと理由はあるようである。

 それならば、まぁ、納得だ。


 俺が納得したのを見て、覇山とブライアンが、立ち上がる。

「では、戦支度だ。1500、第3滑走路の第38ハンガー前に集まるように。」

 腕時計を見れば、今の時間は14時半。

 30分ほどの準備時間がある。

 俺は頷き、一度、滞在している部屋に戻ることにした。


 要塞の複雑な通路を通り、部屋に戻る。

 所要時間は3分くらいか。

 準備に割ける時間は、20分ほどだ。

 部屋の中を見れば、既に俺の分しか荷物が無い。

 ヴァシリーサは、要塞から引き払ったのだろう。

 置手紙と共に宿代が机の上に置いてある。

 エミーリアと作太郎の荷物も、全て無くなっている。

 一足先にここに来て、準備をしていったようだ。

 荷物を全て持っていったということは、軍との共同作戦が終わっても、目的達成まで灰神楽自治区に留まるつもりなのだろう。

 荷物が一切残っていないことに、不退転の決意を感じる。

 ヴァシリーサの封筒の隣に、エミーリアと作太郎の宿代も置いてある。

 これが今生の別れにはならないだろうが、少し、寂しい。


 これなら、一度、宿をチェックアウトした方がいいだろう。

 俺も、手早く荷物を纏める。

 そして、宿からチェックアウト。

 旅客証を見せれば、すぐに手続きは終わった。

 腕時計を見れば、集合まで残り5分。

 急いで向かうことにする。


*****


 第3滑走路の第38ハンガー前までは、迷わずに来ることができた。

 ロンギストリアータ要塞には、11の航空基地がある。

 要塞にのカーテンウォールに内蔵されている航空基地が5、要塞の外、文明圏側に設置されているのが3、辺境側に設置されているのが3である。

 要塞のカーテンウォールに内蔵されている航空基地の滑走路は、カーテンウォールを辺境および文明圏の両方向に対してそれぞれ1.5㎞ずつ突出させ、その内部に作られている。

 突出部はカーテンウォールと比べて太く、その幅は300mにもなる。

 その300mの幅の内部に、長さ3100m、幅100mの滑走路が2本整備されているのだ。

 滑走路の長さは、その前後に展開することのできる着陸用のガイド滑走路も合わせると3500mにもなる。

 ロンギストリアータ要塞第3滑走路は、その要塞内蔵式滑走路の1本である。

 第3滑走路の8番目のハンガーなので、第38ハンガーということになる。


 第3滑走路に着いた。

 遠くに、滑走路の出口から差し込む光が見える。

 滑走路の幅は100mで、高さは200m。

 滑走路の壁面には、無数のシャッターがあり、番号が振られている。

 壁面の高いところには、ガラス張りの部屋があり、その部屋が管制塔の役割を担っているようだ。


 ハンガー前に着くと、既に機体は滑走路上に準備されていた。

 25mを超える、巨大な4発デルタ翼機。

 エンジンは、特徴的な太いテイルコーンを挟むように2基ずつ並べられている。 

 それぞれのエンジンは縦置きで、地球のイギリス地区の古い戦闘機、BACライトニングを2機くっつけたようなエンジン配置である。

 ステルス機のようで、機体表面はなめらかだ。

 格好いい。


 この巨大な機体は、C-F/C-3ステルス戦闘輸送機。

 戦闘機と輸送機の機能を併せ持つという、世にも奇妙な機種である。

 乗員はパイロットと管制官、それに超人が最大で6名。

 一応、超人はパラシュートを付けた状態で乗り込めるようになっている。

 まあ、今回はパラシュートは使わないが。

 固定武装は30㎜機関砲が2門。

 最大速度はマッハ2.9で、一時的に無理をすればマッハ3.4まで達することも可能だとのこと。

 最大積載量は11t。

 超人を作戦空域に輸送したり、前線の部隊へ緊急物資輸送を行う機体で、輸送を阻む敵勢力に対して撃滅ないし逃亡できるよう、高い速度と運動性能を持つ。

 3t程度までの積載量ならば、ある程度の空戦を行うだけの性能が確保できるそうだ。

 今回乗るのは、俺と覇山とブライアン。

 荷物を含めても、1tもない。

 機体の性能は十分に発揮してくれるだろう。


 コックピットを見れば、既にパイロットはスタンバイしている。

 すぐに出撃できる状態なのだろう。 

「不要な荷物は、こちらに。」

 そう言い、軍人がカゴを押してくる。

 俺は、その中に不要な荷物を置く。

 荷物は帰還時まで保管してくれるそうだ。

「では、往こうか。」

 覇山が言う。

 機体を見れば、機体底面のハッチが開き、はしごが設置されている。

 そこから機体に乗り込むのだ。

 機体の内部、爆撃機などなら爆弾倉が設置されている部分に、超人の登場スペースがあるようだ。

 

 乗り込んだ先は、意外と快適だった。

 キャビンの幅は2mほどで、広い。

 体格の大きい超人も乗れるよう、それなりの広さを確保しているのだろう。

 天井は弧を描いていることから、天井部分は機体背面の膨らみ部分であることがわかる。

 天井の直上部分は不透明だが、左右には外が見える小さな窓がある。 

 先ほど通ってきた底面ハッチにも窓があり、降下先が見えるようになっている。

 椅子は簡素だが十分なモノで、なぜか飲み物ラックなどもくっついている。

 超人が現地に展開するまでにストレスを溜めないようになっているようだ。

 荷物ラックは大きく、さらに蓋があり、この機体が戦闘機動を行っても、荷物が飛び散らないようになっている。



 俺は、荷物ラックに荷物を押し込むと、椅子に腰かけ、シートベルトを締める。

「・・・これより、離陸します。」

 思ったよりも音質の良い無線で、男性の声がキャビンに響く。

 俺が椅子に座ってすぐに機体が動き出す。

 俺たちが乗り込めば離陸できるように準備はできていたのだろう。


 ぐんぐんと機体は加速する。

 しばらくの加速の後、ふわり、という感覚と共に、窓の外の視界が開ける。

 離陸し、要塞から飛び出したのだ。

 要塞から飛び出してすぐ、機体はすぐに機首を上げる。

 危険な低空域から、一気に高度を上げて安全性を確保するようだ。

 4発のエンジンによる巨大な推力により、機体は猛烈な勢いで上昇していく。


 途中、同じく上昇中の大きな機体が目に入った。

 たくさんの銃座が搭載されている、全翼機。

 機体の全幅は60m近くあるだろうか?

 メーア達が乗り込んでいる、空中管制機だ。

 爆撃機を改装した前線管制機で、航空機としては圧倒的な防御力とそれなりの運動性がウリの機体である。

 今回、辺境の上空で長時間留まるため、防御力の高い機体が選ばれたのだろう。

 周囲には、護衛の戦闘機が10機ほど飛んでいるのも見える。


 それらの機体は、すぐに雲の陰に隠れ、見えなくなった。

 速度的に、降下地点までは10分ほどで着くだろうか?

 離陸してすぐだが、降下準備をしておいた方がいいだろう。


 俺は、荷物ラックから荷物を取り出し、背負っておくのだった。

 

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