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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第6章
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第8話 迎撃ブリーフィング

 事前に指定されたブリーフィングルームに着いた。

 部屋に入る。

 すると、既に6割くらいの席が埋まっている。

 部屋の中にいる他の旅客たちは、皆、腕に覚えがありそうな者達だ。

 どうやら、一定以上の強さを持つ戦闘旅客のパーティが集められているようだ。


 俺たちは、部屋の隅の席に腰を掛ける。

 部屋をざっと見渡したヴァシリーサが、小声で言う。

「みんな、結構強い旅客っすね。」

 そうか。

 ヴァシリーサは、結構知っているのか。

「ここにいるのは、硬銀クラスも混じってるっすけど、緑透金クラス以上を中核にするチームみたいっす。」

 ヴァシリーサが見知った顔も多いらしい。

 中には、青鉄クラスの旅客もいるようだ。

「皆、こちらを注視しておりますな。」

 作太郎が言う。

 俺も、感じていた。

 この部屋に入ってから、この部屋の旅客たちからの視線というか、探るような気配を感じる。

「ま、仕方がないっすよ。」

 ヴァシリーサが言う。

「青鉄クラスと、青鉄に片足突っ込んだような緑透金クラスの上位だけで構成されたチームは、珍しいっすからね。」

 それもそうか。

 他の戦闘旅客の情報というのは、時に、命に関わるほど重要な情報だ。

 皆、自分と同格や格上の戦闘旅客について、情報収集をしているのだろう。

 俺たちは、特にここ10日間、実力を隠すことをしていなかった。

 俺とエミーリアだけでなく、ヴァシリーサや作太郎も、軍の闘技場や訓練場で特訓を重ねていた。

 闘技場で非公開設定にしていたわけでもないので、それを見ていた旅客たちも多いのだろう。

 注目されるのも、仕方がないのかもしれない。


 しばらく、ブリーフィングルームで座っていれば、他の旅客からの視線や探る気配は、薄くなっていく。

 今は競い合う時ではない。

 ここで詳しい実力を測る意味は、薄い。

 なんとなく実力がありそうだ、くらいが判れば、とりあえず納得できるのだろう。

 

 次々と、ブリーフィングルームに旅客たちが集まってくる。

 そして、部屋が一杯になると同時に、プロジェクターが起動。

 壁の一面に、辺境の地図が現れる。

 そして、その解説役だと思われる軍人が数人現れる。

「総員傾注!」

 軍人が、キリっとした声で叫ぶ。

 その声で、ざわついていたブリーフィングルームが、しんと静まる。

「これより、状況説明を行う!」

 軍人は、壁に映った映像を操作しつつ、状況説明を始めた。

「本日1000、こちらに向けて移動している、大規模な原生生物の集団が確認された。」

 説明は、続く。


 説明によると、本日の午前10時頃、ロンギストリアータ第6要塞に向けて移動していることが、複数の前進都市から報告があった。

 その報告を基に航空偵察を行ったところ、1200には、原生生物の集団の大移動が実際に確認された。

 原生生物の個体数は、航空写真から算出したところ、400~500万程度。

 移動先の原生生物も巻き込み、さらに拡大している可能性もある。

 集団の移動速度は、最も早い部分で時速約10㎞、発見時間から逆算すると、現在の距離は要塞から西に300㎞程度。

 現在、航空部隊による爆撃を実施中だが、効果は限定的とのこと。

 集団が250㎞の距離に差し掛かったあたりで、要塞の150㎝砲による砲撃を開始予定。

 それにより集団の勢いを破砕し、対応準備の時間を稼ぐそうだ。


 今のところ、前進都市は防衛に成功しており、崩壊した場所はないとのこと。

 だが、防衛に成功した理由が、原生生物が防衛都市に見向きもしなかった、という理由なのが不穏である。

 また、航空偵察により、原生生物の集団の最後尾よりさらに100㎞ほど先に、レーダーで探知できない範囲があることが確認された。

 その部分は、黒い雲に覆われており、写真偵察でも何が起きているか確認できなかった。

 だが、その黒い雲が時速8㎞程度の速度で東進を続けているため、原生生物の集団は、この雲から逃げている可能性が高いと考えられるとのこと。


 俺たち、上位の戦闘旅客の任務は、二つ。

 一つは、戦線の弱いところや戦線が破られそうな所への援軍。

 もう一つは、その原因だと考えられる黒い雲の内部へ侵入、原生生物の集団移動の原因の特定と、できるならばその原因の排除。

 

 戦線の補強や増援については、こういった事態の際、上位の戦闘旅客が必ずと言っていいほど担う任務である。

 上位の戦闘旅客は、辺境の原生生物相手に限れば、軍の特殊部隊に並ぶレベルの強者である。

 たった1チームで劣勢を覆した事例も、少なくない。

 こっちの、戦線の補強や増援の任務については、問題はあまりないだろう。


 問題は、黒い雲の調査任務だ。

 今回の原生生物の集団移動を止めるカギになる、重要な任務なのは確かである。 

 だが、あまりにも危険だ。

 辺境の強大な原生生物がこぞって逃げ出すような相手である。

 第1種戦闘態勢どころか、決戦態勢に移行するレベルの、ヤバい相手である可能性も十分ある。

 そこへ、少人数で乗り込み、情報を得て帰還しなければいけないのだ。

 加えて、乗り込みに行く途中で、原生生物の集団を切り抜けなければいけない。

 さらに、集団を抜ける際は、要塞からの濃密な砲爆撃も切り抜けなければいけない。

 正直、まともな神経ならば、やってられない任務である。


 ・・・なんだか、嫌な予感がしてきた。


 壇上の軍人は、指揮系統や各チームの対応戦線などについて、説明を続けている。

 説明の中で、各チームは名指しで戦線を指定されている。

 戦線を指定されなかったチームは、やはり名指しで遊撃隊を命じられている。

 なぜか、その説明に、俺たちのチームは出てこない。


「以上、ブリーフィングを終了する。」

 ついに、俺たちの名前が出る前に、ブリーフィングは終わった。

「メタル=クリスタル客員大将が率いるチームは、この場に残っていただきます。」

 ・・・やっぱりか。


 俺たち4人を残し、旅客たちは、ブリーフィングルームから、去っていく。

「では、元帥。よろしくお願いします。」


 その言葉により現れたのは、技術作戦軍の元帥、懸木 鈴 技術元帥と、辺境に来てからすぐに戦った、ノノ=アイヴォ=エルイだった。


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