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青い星にて戦士は往く  作者: Agaric
第5章
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第22話 眼の数

 メーアの事情は分かった。

 メーアは、自身の力の後継者を作り出そうとしていたのだ。

「さて。私の事情は話した。」

 メーアの表情が険しくなる。

「では、私が苦労して作った群れを壊滅させた理由を聴こうか。」

 こちらと敵対する意図はないとはいえ、それなりに怒りは感じているようである。

 それもそうだ。

 時間をかけて作り上げた群れを潰されたのだから。


 隠していても、仕方がない。

 俺は、なぜ、ここに来たのかを正直に説明することにした。

 第14前進都市への3つの陸路が遮断されたこと。

 そのうちの一つをフローティングアイが塞いでいたこと。

 そして、当初は7眼のフローティングアイが群れの長だと考えられていたこと、など。

 

 話していくうちに、最初は険しかったメーアの表情は、次第に呆れ顔に変わっていった。

「7眼の群れが、陸路を塞いでいた・・・だと?」

 メーアの、ヒト型部分を除いた全ての眼が、ある一方向を向いた。

「逃げられると、思うなよ?」

 巨大な眼球が、青白く光り、淡く力を纏う。

 すると、先ほどの戦いでリールにやられた後、丘の陰に隠れていた7眼と8眼のフローティングアイが、浮かび上がってくる。

 7眼と8眼のフローティングアイは、青白く光っているということは、メーアに持ち上げられているのだろう。

 メーアの表情には、今度は、怒りが浮かんでいる。

「なあ、私は、文明圏とその関係する場所には、手を出すなと言っておいたよな?」

 声色は、低く、恐ろしい。

「ここの陸路も、手を出すなと言っていたはずだ。」

 メーアの言葉に、7眼と8眼のフローティングアイは、震えあがっている。

「なぜ、手を出した?理由を、聴こうか。」

 一応、理由は聴くらしい。

「この場所ならば、強者がよく来るので、より早く、強くなれるかと・・・。」

 8眼のうち、傷の浅い方がそう答えた。

 その答えに、メーアは、呆れ果てた表情を浮かべる。

「・・・それで、上位者からの言いつけを破っては、どうにもならないだろうに・・・。これだから、眼数が少ない奴らは・・・。」

 その声色は、怒りと呆れを通り越して、失望すら感じられるものだった。

 

 メーアは、こちらを振り向くと、申し訳なさそうに言う。

「うちのモノが、そちらに迷惑をかけたようだ。さらに、その尻拭いまでやってもらってしまったようで、申し訳ない・・・。」

 なんだか、見ているこっちが申し訳なるくらいの縮こまり具合である。

 メーアの眼が、怪我人を治療している装甲車側に向く。

「そちらにも、被害を出してしまった。重ね重ね、申し訳な・・・。」

 

 そんなメーアの言葉と視線が、一点を見つめたまま、固まった。


「・・・なあ、メタルよ。」

 なんだか、愕然としたような声だ。

 ・・・先ほどから、ころころと表情がよく変わる。

「あそこにいる娘は、メタルの知り合いか?」

 はて?

 誰のことだろうか?

「とぼけるな。あそこで、怪我人を治療している、たくさんいる娘だ。」

 そう言うメーアは、装甲車を指し示す。

 そこには、作太郎と協力しながら、リピとリトヴァ、コロ、ヴァシリーサをかいがいしく治療しているエミーリアがいた。

 最初は5人程度で治療していたようだが、今では、怪我人一人につき二人ずつで、計8人のエミーリアが治療している。

「え?知り合いだけど、どうしたの?」

 メーアは、呆然とエミーリアを見つめている。


「素晴らしい!」


 突如、メーアが叫んだ。

「うお!?」

 思わず、驚きの声を上げてしまった。

 あまりの豹変ぶりに、少し怖い。

「今見えているだけでも、あの娘は、16眼に達しているではないか!」

 メーアはさらに言葉を続ける。

「しかも、なぜかは知らんが、内部はほぼガランドウときた!我が力も受け入れられるのでは?」

 

 なんと。

 どうやら、メーア的に、エミーリアは自分の力を譲るにあたって、お眼鏡にかなうようだ。


 あまりのメーアの興奮具合に反応できないでいると、メーアに吊り上げられたままになっている傷ついた8眼のフローティングアイが、声を上げた。

「そ・・・そんな・・・。同族ですらない相手に・・・。」

 その声に、メーアがぎろりとその8眼を睨みつける。

「・・・貴様、言いつけを守ることができないばかりか、目の数すら劣るのに、何を言っている?」

 目の数は、そんなに重要なのだろうか?

 そう思ったが、目の数すら劣る、と言われた8眼のフローティングアイは、完全にうなだれてしまった。

「・・・そう・・・ですな・・・。やはり、目の数で劣っては・・・。っく・・・。」

 目の数は、どうやらフローティングアイ的にはだいぶ重要なようだ。


「ということでだ、メタル。あの娘と話をさせてもらっても、構わんか?」

 そう言うメーアの表情は、キラッキラしている。

「何が、ということで、なのかはわからないけど、話すだけならいいよ。」

 俺の言葉に、メーアが早速エミーリアの下に向かおうとする。

 それを、俺は肩を掴んで止める。


「まあ待て、話すのはいいが、俺も立ち会うぞ。」

「なに?・・・まあ、いいだろう。」

 メーアの力は、非常に強い。

 エミーリアでは、到底敵わない。

 メーアが、嫌がるエミーリアに力ずくでなにかをしないよう、立ち会わなければいけない。


*****


 数分後。

「・・・・・。」 

 いつもどおり無表情で、しかし、その中にも警戒をにじませて立っているのは、エミーリア。

 その数は、51。

 エミーリアの力も大きくなり、その総数は59人まで増えている。

 8人を治療に残しつつ、残るはメーアとの会談に出てきたのだ。

「お・・・おぉぉ・・・!」

 その光景に打ち震えているのは、メーア。

 フローティングアイ的には、エミーリアは118眼のフローティングアイに並ぶ存在として見えているのだ。

「た・・・確かに、この目の数では、敵わぬ・・・。」

 メーアの後ろに控え、エミーリアに圧倒されているのは、7眼と8眼のフローティングアイ。

 目の数は、本当に重要なようだ。

「で?話って何?」

 そこに立ち会うのは俺。

 エミーリアの意思に反してメーアが何かしないか、目を光らせる。

「そうだな。単刀直入に言おう。」



「エミーリアとやら。力には、興味がないか?」



 メーアがそう言った時、エミーリアの眼が、少し、輝いた。


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