第0話
宇宙の外側。
数多の宇宙が揺蕩う、無とも有ともいえぬ場所。
そこでは、数多の宇宙が常に生まれ、また、消えていく。
星々を内包し、生命を得るほど安定した宇宙は、そもそも時間の概念が宇宙外の場所にあるかは置いておくとして、悠久ともいえる時間存在し続ける。
安定しきれなかった宇宙や小さすぎた宇宙は、星を一つも持つこともなく、生命を内包することもなく、潰れ、霧散し、消えてゆく。
その場所に、新たな宇宙が生まれた。
小さな、小さな、赤い宇宙だ。
もしこの場に観測者がいれば、見逃していただろう程、特徴のない宇宙であった。
あまりにも普遍的なもの。色も、大きさも、形も、何も変なものは無い。
赤い宇宙も、青い宇宙も、巨大な宇宙も、微小な宇宙も、平坦な宇宙も、多次元な宇宙も、無限にも等しい数、あるのだ。
だが、その宇宙は、決してよくあるものではなかった。
それは、このままだと己が消えると、理解していた。
そして、意思か本能か、それは、己を永らえさせる手段も、知っていた。
故に、喰らったのだ。
いや、喰らうという表現は正しくないかもしれない。
それは、厳密な意味で食べたとは言えないだろう。
だが、自らを肥大させ、崩壊を防ぐという点では、ヒトの食事と何ら大差はなかった。
たとえその食べたものが、ほかの小さな宇宙だったとしても。