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例えばこんな転生譚  作者: ウラン
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チュートリアル~それでは進路を決めてください~

 

 お待たせいたしました。


 冥府魂管理部集魂課たましいかんりぶしゅうこんか、アフターサービス係です。


 どうぞ、よろしくお願いします。


 さて、突然ですが、貴方達は現在死亡されています。いえ、冗談とかどっきりとかじゃないですよ?


 皆さんが死んで、ここにいる経緯を説明いたします。

 とある列車事故が起こりまして、沢山の方が一編にお亡くなりになったのですよ。


 全ての命あるものは、その命数ーー寿命が決まっておりまして、我々魂管理部がそれを管理しております。で、お亡くなりになると、魂が体から離れるのですが、体から離れた魂は放っておくと、どこかに流されてしまうのです。その前に、集魂課の回収係が魂を回収に行くのですが、今回は沢山の方が一度に亡くなるということで、スタッフ増員して回収に当たったのです。しかし、やはりと言おうか、現場が非常に混乱しまして。体から離れきっていない魂までも回収してしまったみたいなんですね。

 まったくあいつは、何時まで経っても同じ失敗ばかり・・・ぶつぶつ。

 おっと、失礼。

 本来、そういったはみ出してしまった魂は、その場で体に戻さないといけないのですが、そんな余裕もなかったらしく、こうして冥府まで連れてこられてしまったのです。


 え?生き返りたい?


 無理です。

 それは出来ません。


 わ、ちょっと、怒らないで下さいっ。

 す、すいません、ほんっとすいません。

 とりあえず、話を聞いてくださいっ。


 何故なら、ここと現世(うつしよ)とは、時間の流れ方が違うのです。皆さんの体・・・まあ、ご遺体なんですが、すでに火葬されていまして。

 ええもう、見事に骨!なんですよ。

 それでも戻りたいのなら・・・あ、要らない。結構、ですか?

 了解しました。

 まあ、それ以前に、ここへ来た方は現世にもどこにも勝手に行くことはできない決まりとなっていますけどね。


 だから、拳で威嚇するのは止めてくださいって!!



 それでですね。


 本来なら、天界に行くなり、獄界に行くなり、記憶を浄化して輪廻に乗るなりするはずなんですけど、命数ーー寿命が残っているために、輪廻できないんですよ。

 なので、皆さんにはここで命数を使いきって貰いたいのです。


 もう察していらっしゃる方もいるかも知れませんが、こういう事例は初めてではないんです。

 ですので、サービスの下地は出来ているというか何て言うか、まあ「サービス係」としての仕事は今回が初めてなんですがね。だからこそ、色々な方策を考えてみて、試させてもらおうと・・・えっ!?実験・・・って、そんな違いますよ!

 やだなあ。せめてモニタリングと言って下さい。

 はい、じゃあサクサク行きますよ。説明しますんでね。


 まずは、一番無難ですがお薦めしがたい方法です。今いるこの部屋で、このまま何もせずに命数が尽きるのをひたすら待つ。

 現世と此方で時間の流れが違うので、中には残り数時間な方もいらっしゃいます。そうした方は、このままだらだらと座って待ったりもしています。流石に残り十数年な方にはお薦めしませんけどね。あくまで方策の1つとして、捉えていてください。


 次に、残り時間を冥府の職員として働くというものです。この私のようにね。

 宿舎の貸し出しがあって、そこそこの給金も出ます。現世では使えませんが、冥府の町中で買い物ができます。

 え、買い食いですか?やー、無理なんじゃないですかね。飲食店はあるにはあるのですが、テイクアウトは禁止事項になっているし。食べ物持って歩いていると、魑魅魍魎が寄ってきて横取りをーーえ?「魑魅魍魎」が何かって?

 えー、それ今説明しないとダメですか?

 あーはいはい。しょうがないですね。


 魑魅魍魎と言うのはですね、魑魅魍魎です。



 ・・・・・・ごめんなさい。冗談です。

 本当は冗談ではないんですが、「まあ、そういうもん」とか思っていただければ簡単なんですけど・・・。

 分かってます。ちゃんと説明しますから!

 簡単に言えば、回収されなかった魂のなれの果て的な物です。

 流された魂が地脈や龍脈、感情の残滓なんかに捕まると、いわゆる悪霊とか、地縛霊とか呼ばれるものになります。捕まらずに漂い続けると、魂が傷ついたり磨り減ったりして、ちょっと別な感じのものになっちゃうんですね。

 それが魑魅魍魎。

 自我もなく、本能のままに、適当に跋扈してますんで、構ったりエサを与えたりしてはいけません。サワルナ、キケンですよ。

 迂闊に近付くと、取り憑かれますからね。この間もそれで、1人呪いを受けて・・・いえ、何でも。

 大丈夫です。ちょこっと顔色が悪くなったりするだけですから。ははは。


 では、続きから。


 ええと、どこまで説明したんでした?

 ・・・ああ、そうそう。そうでしたね。

 それでは、続けます。


 あとは、冥府の町に仮の住民として住まう方法です。宿舎ではなく、アパートになります。しかし、生活をするにはお金が必要になりますので、バイトしてもらうことになりますけどね。


 それ以外の方法もあります。ここからがお試しの方法となります。



 その方法とはーー残った命数分の時間を、皆さんがいた世界とは違う世界で生きて貰うという方法です。但し、現状で体を持っていないため、生まれ直すか、誰かが死ぬ瞬間に立ち会って、その体を借りるかする必要がありますがね。

 どちらの場合でも、残った命数分しか生きられません。

 それから、皆さんがいた世界線へは干渉できません。まあ、ちょっとずつ違う別の世界線が無数にあるので、特に問題はないと思いますがね。

 え?はいはい。そうです。

 いわゆる、異世界転生というヤツです。


 お、嬉しそうですね。さすがラノベ世代。

 でも、そこまで甘くはないんですよ。

 まあ、元々此方の不手際ですし、どの方法をとっても、ある程度の特典をつけようとは思っています。と言っても、大したことは出来ないので、期待されても困るんですがね。


 そこ、はしゃいでないで、ちゃんと聞いてください。

 ・・・。

 もしもーし。聞いてます?

 続けますよー?


 ーーごほん。


 特典についてですが、ここでダラダラの方には、差し上げられません。正確には、上げられるものがないと言いますか。そうですね。お茶ぐらいはお出しします。


 ここの職員をしていただける方には、お好みの部署への配属を約束します。プラス給料アップ!是非とも集魂課へお出でませ!!ぶっちゃけ、スタッフ不足なんで、大歓迎ですよー!


 仮住民登録される方には、いい物件をご紹介します。家具家電付きワンルームで敷金と礼金免除。家賃は頂きますけどね。


 違う世界へと向かわれる方についてですが、方法というか、条件が多岐化しておりまして。


 まず、死に立ち会って入れ替りで体を借りる場合は、借りる相手を選べます。流石に、抗争中に刺されて死ぬヤクザさんが次の体とか、笑えませんからねえ。入れ替わる際には、病気や怪我はきちんと治しますのでご安心下さい。体を借りた瞬間に死んだりしたら、意味無しですから。


 生まれ直す方は、自分の好みの世界を選んで頂くことが出来ます。もしくは、世界を選ばずに特殊能力を選ぶことも出来ます。この場合はランダム転生となり、どんな世界に生まれ落ちるか分かりません。また、能力もあまり突飛な能力の付与は出来ません。此方も万能ではありませんので。


 だーかーら、騒がないで下さいよぉ。

 大丈夫です。後で、一覧表をお持ちします。

 なのでね、静かにしてくださいね。


 注意して欲しいことが2点あります。


 まず1つ。やり直しは利かないということ。

 一度転生なり入れ替わりなりをしてしまうと、後から「やっぱやめ!」と言うわけにはいきませんからね。よく考えて選択してください。


 2つ目。いずれの場合も、記憶の継承は出来ません。それだけはご了承下さい。


 それからもう1つ。唯一記憶を持ったまま異世界へ転生する方法があります。

 世界を選ばず、能力も持たずに転生なさる場合のみ、記憶の継承がなされます。但し、本当に何もなしですよ?それでも良ければ、です。


 説明は以上になります。


 それでは、皆さん。


 どうぞ、今後の進路を決めてください。





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