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例えばこんな転生譚  作者: ウラン
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終わりの朝

 


 ーー午前7時8分。


 ガタンゴトンと列車が揺れている。6両編成の1両目。まだ早朝ゆえに、乗客は少ない。とは言え、それはこの車両だけで、他の車両はもう少し乗客が多い。もう少ししたら、この1両目も混み始めるだろう。

 乗っている乗客の数は、8人。

 椅子に膝を乗り上げて窓の外を眺める男の子と、その母親。

 片耳にイヤホンを指して、スマホを操作する女子中学生。

 にやけそうになりながら、時々フリックして、スマホの画面を眺めている男子高校生。

 陰気な表情で疲れたように、膝のビジネスバッグをすがるようにして抱え込んだ、中年サラリーマン。

 膝に風呂敷包みを抱えて、ゆらゆらと居眠りをする老婆。

 一心不乱にタブレット端末に指を踊らせている、若いスーツの女。

「おかあさん。かんばん、よめなかった」

 誰もが無言のなか、男の子の高い声が、電車のなかで大きく響く。

「そうね。・・・でも、この電車、こんなに速かったかしら?」

 母親の声が、控えめに響く。

 車内アナウンスが入った。

『毎度ご乗車、ありがとうございます』

 機械の録音されたガイダンスではない。運転手の声だ。

 淡々とした声が、路線名と目的地を告げる。しかしーー。

『次の駅へは、停車しません。行き先を変更いたします』

 乗客が、顔をあげる。窓の外の景色が、飛ぶ勢いで通り過ぎる。

 ーーガタン!!

 車体が大きく揺れて、衝撃に、文字通り乗客たちの体が浮いた。そこかしこで短い悲鳴が上がる。不安そうに周りを見回す。

『この列車は、地獄行きです。皆様どうぞ、死出の旅にお付き合いください』

 さらに列車は加速して、車体は軋みをあげた。重圧が掛かる。擦れる金属音。

 ーーガ、ガギャギャギャギャギャっ!!!!ガンっ!!!!

 列車が大きな悲鳴をあげて、乗客の体が宙に浮く。そのまま上下左右もわからないくらい激しく揺さぶられてーーー・・・・・・。




『午前8時になりました。ニュースをお伝えします。まずは、先程飛び込んできた速報です。

 午前7時5分発の、緑山線高丘行きの普通車両で、脱線事故が発生しました。詳しい状況は確認中です。死傷者が多数確認されており、現在も救助活動が続けられている模様です。それでは、現場のーーーー』




 たくさんの人が、列をつくって、並ばされている。

 一人づつ、進む方向を指示されて。

 彼らの前方に、3方向に分けられた廊下が見えた。その廊下を、一人づつ、順番に、示されて進んでいき、すぐに見えなくなる。

 すぐに自分の番が来て、名前を確認されーー首を傾げられた。

「あなた、リストにありませんね。それでは、あちらでお待ちください」

 指し示された壁際のベンチに座り、人の流れの捌けていく様子を眺めた。



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