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【3+1】2-26

ドラコとメイの二人は再び宿の前まで戻ってくる。

雨足はかなり強くなってきていたが、それ以上に街の中は徐々に混乱が広がってきていた。


アキラは大丈夫かしら、、

メイは彼のことを考える。するとドラコが「コバヤシ、平気」と言って彼女の手を握ってくる。

そんなドラコを見て彼女は微笑み「ありがとね、ドラコ」とだけ告げる。少女はこくりとうなずく。


確かに、彼のあの()()なら、そもそも私が心配するようなことはないのかもしれない、、

隣で目をぱちくりとさせているこの赤毛の少女も、おそらくは自分よりもはるかに強いのではないかと彼女は考えていた。


全く、ほんとにとんでもない人たちだわ、、

そんなことを考えながらふと笑みをこぼすメイであった。

その時、ドラコが前方上の方を急に指差す。

どうしたのと聞くと、少女は一言「コバヤシ」とだけ呟く。

彼が帰ってきたのだろうかと前方の道を眺めてみても、彼女にはその姿を確認することができなかった。そもそも人の数もとても多くなってきている。

アキラは大丈夫だろうかと、やはり再び心配してしまうメイであった。


「メイ、うえ」

ドラコがそう言って彼女の手を引っ張る。


うえ?


そしてドラコが指差す方をよく見てみると、なんと驚いたことに、コバヤシがフードを被りながら連なる()()()()()()()()跳ぶように駆けていたのである。


「なっ、、」

なんでもありなのかあの人はと思っている内に、彼はかなりのスピードでこちらへと向かってくる。道に居る人たちはコバヤシに気づきもしない。


まぁ普通はそうよね、、

一体誰が屋根の上を駆け抜ける人間がいると考えるだろうか。ドラコは良く気づいたなと、感心しながら思うメイである。


「ん?」


近くに見えてきたコバヤシの姿が、どうやらさっきの別れる前とだいぶ違っていることにそこで気が付く。

というより、その両手に“何か”抱えているのをメイは確認する。

もう目を凝らさずとも()()がなんなのか彼女には理解できた。


「おひめさま~」


ドラコがそれを指差しながら呟く。

そう、彼が走りながら抱えていたのは“女性”だった。


・・・


「遅れてごめん」


大丈夫だったかいと、先ほど屋根伝いに走っていた人間とは思えないほど平然としながら彼は喋る。

この宿の上にたどり着いてから彼はそのままドラコとメイの元へ飛び降りてきたのだった。


「…その女は何、、」

メイは質問には答えずに、いまコバヤシの隣に立っている女性を指差す。その女性はなにやらふらふらとしていた。

う~ん、、コバヤシはしばらくのあいだ答えに詰まる。


・・・。


「彼女は、“サキュバス”らしいんだ」

しばらくしてコバヤシはそう告げる。


「…はぁ!?」


なんでサキュバスなんて連れてきてるのよてかどこから連れてきたの一体何があってそんなことにとかほんとはそれあんたの愛人かなんかじゃないのそんなに困ってるって言うなら私だっていちおうどうしてもって言われたら相手してあげないこともないいやでもやっぱりまだ心の準備がとか、様々なこと(一部暴走)が一瞬で自分の頭を駆け巡る。


「おくとぱす」

ドラコはとなりでよくわからないことを言う。


「これも理由は後で説明するけど、二人には彼女を守っていて欲しいんだ」

どうも“悪いサキュバス”じゃないみたいでね、彼は複雑そうな顔でそんなようなことを告げる。


「悪いサキュバスじゃないって、、」

「いいとも~」

隣でドラコが親指をぴっと立てる。

ちょっとドラコなに簡単に、、


「ありがとう二人とも」

そんな二人にコバヤシはお礼を言う。


「…後でちゃんと説明しなさいよね、、」

メイはコバヤシに向かってふんっとそれだけ言う(また私は可愛くないことを、、)

あぁ、彼はそう言って再びフードを被る。


「この混乱の解決方法を彼女が教えてくれてね」

コバヤシはこのサキュバス、ルゥというらしい、を指差しながらそう告げる。

だからちょっとそれを済ませてこようと思うんだ。


「三人は、俺が帰ってくるまで身を隠すかもしくは逃げていて欲しい」

彼はメイとドラコの方を向きながら話しかける。ルゥとかいうサキュバスも少し回復してきたようだった。


「メイ」

彼に呼ばれてふとびくりと驚いてしまう。

「俺の“魔法”でメイのこともいちおう強化しておくから、もしかしたらいつもと感覚が変わってくるかもしれないけど驚かないで欲しい」

コバヤシはメイの目を見ながらそう話す。

「わ、分かったわ、、」

彼女もコバヤシの目を見てしっかりと応える。

すると彼は少しだけ微笑み、今度はドラコの方を見る。


「ドラコは二人を守ってあげてくれ」

人前ではなるべく“龍モード”にならないように、、

コバヤシはそんなことを言う。“龍モード”?

「ただしどうしても危なくなったら使うように」

分かったな、と彼がドラコに尋ねると、少女はしっかりとその首を縦に振るのだった。

コバヤシはそんなドラコの頭をぽんと撫でる。


「それじゃ、なるべく早く済ませるつもりだけど、三人とも気をつけて」

終わって全員無事だったらまたここで集合しよう。

彼はそう言うなり再び跳び上がり、あっというまに屋根を駆けていってしまう。


街はすでに、大雨と人々の叫び声が混ざり合っていた。


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