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【街へ】1-8

「…大丈夫でしょうか」


コバヤシは目の前の女性に声をかける。

見た感じはブロンドの髪にブルーの瞳、どう見ても日本人ではないな。その顔は涙と泥でぐしゃぐしゃになっていた。

服装はかなり乱されているがどうやら無事ではあったことにコバヤシは安堵する。

こちらを見る女性の目にはいまだ恐怖が色濃く残っているように思える。無理もない、、


「…言葉は通じているでしょうか、、」


見るからに日本人ではない少女を前にコバヤシは思考をめぐらせながら話かける。

この《リゼリア語》というスキルの力を信じるのであれば、今現在自分が話している言葉に間違いはないはずだが、、

実際に先ほどコバヤシが一蹴した男三人の言葉は聞き取れていた。


「…あ、、あの、、」


良かった、どうやら言語のコミュニケーションは可能のようだ、、


「あなたが、助けてくれたのでしょうか、、」


コバヤシは少女の目をうかがいながらも答える。


「助ける? いえ、私はちょうど近くに居た者なのですが、ここで叫び声が聞こえてきたもので、、」


先ほどの戦闘ともいえない出来事をコバヤシは思い返す。


・・・


― 男三人が、一人の女性を囲んでいるところが目視できるところまで走ってきた所で、コバヤシは下に落ちている小石をいくつか拾い上げる。向こうはまだこちらに気づいていない。

そのまま近くの木へと近寄り、登ろうと試みる。なんとか足をかけたところで今度はスキルメニューを開く。


よし。


コバヤシはそこに表示されている新しいスキル《木登り》と、水切りの際ついでに獲得していた《投擲》スキルのふたつをマックスレベルまで上げる。


すると今度はさっきまでとと違い、するすると木の上部まであっという間に登れてしまった。

コバヤシは三人の男が見える位置へとつくやいなや、先ほどの小石の一つを手に取り、


シュッ


不安定な足場で投げた石にもかかわらず、その石はまっすぐ男のあご辺りへと飛んでいく。

石は男のあごをかすめたあと地面へ突き刺さる。

かすめただけだったが、コバヤシの予想通り男はひざを付き地面へと倒れこんでいった。


ボクサーのパンチと同じ要領だな。それにしてもスキルの効果は絶大である。


他二人の男が何かを叫ぶ。

コバヤシは淡々と、他二人にも同様の攻撃を加えていった。


・・・


― 目の前に出て行って戦うよりは遥かに危険性の無い行為だったろう。


「え、、あなたが助けてくれたわけではないのですか、、?」

目の前の女性は戸惑いながらさらに尋ねる。


「どうやらそのようですね」

ここで目の前の女性に恩を売るよりも、どうやってこのごろつき達を倒したのかと詳しく聞かれてしまう方がコバヤシは問題だと考える。

この世界の常識をまずは理解すべきなはずだ。


「・・・そう、ですか、、」

女性は少し落ち着きを取り戻してきたように見える。


「そ、そうだ、、早くこの人たちから逃げないと、、」

そう言うと女性は倒れている三人の男をおびえながら見る。


「…死んではいないのですか?」

コバヤシは自分でも分かるくらい冷え切った目でその男たちを眺めながら尋ねる。

「え? え、ええ、恐らく、、」

今度は周囲にある木の上部を少女はざっと見渡す。


「あなたも、早くここから離れたほうがいいと思います、」

少女の目にはだんだんと力が戻ってきているように見える。声も力強くなってきている。

「…あなたはどちらへと向かわれるのですか」


「私は、、とりあえず元居た町へと急いで戻り、先ほど起きた出来事と、その人たちのことをギルドへと通報するつもりです」


ぎるど?

かつて歴史の勉強かなにかで聞いたことがあるような単語だ。


しかし、、

コバヤシは果たしてこの少女にどこまで話していいものなのかを考えていた。

この気絶(?)している男たちがいつ目を覚ますとも分からない以上、時間をあまりかけるわけにもいかないか、、


「…あの、その町まで私も同行させていただいて良いでしょうか」

コバヤシは少女のほうを向き尋ねる。


「え、ええ、それは構わないですが、、」

少女はきょとんとしながらも応える。

「ありがとうございます。では、細かいことについてはそこへと向かいながら話すとしませんか」

コバヤシは倒れている男達を横目に提案する。


「…分かりました、、」

少女の目にはすでにしっかりとした強い意志が宿っている。


これならもう大丈夫そうだな、、


「この男たちはどうしますか」

「…彼らは、、このままここへと置いていきます、、」

少女は冷たく男たちに一瞥をくれると、再び辺りの木を見渡す。

何か探しているのだろうか、、

「わかりました。では道案内をお願いできますか?」

「…はい」

少女は視線をコバヤシへと戻す。


「…そのまえに、」


コバヤシは自身が着ているジャケットを脱ぎ目の前の少女へと羽織らせる。


「あ、、ありがとうございます、、」


少女は少し驚きながらも、その口元には、少しだけ笑みが戻った。

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