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【エルフ&ドワーフ 3】2-18

ゴゥン、、


鈍い音が響く。

ハンマーはコバヤシの身体に当たると、そこで動かなくなる。


「っかったぁ、、」

そう言ってハンマーを手放すのはメイであった。


「あんたなにしたのよ、、」

彼女はハンマーから手を離して両手を確認している。どうやらしびれているようであった。


やっぱり、思ったとおりみたいだな、、

コバヤシは自身の検証結果に納得し、メイにありがとうと告げる。

こちらには一切の痛みは無かった。もちろんコバヤシは特殊な術を使っていたり、何か特別な訓練を受けていたと言うわけでもない。


考えられるのはただ一つ、、

コバヤシは自分の“ステータス”を確認しながら考える。そこにはいくつかの項目が、最大値である999を示している。

これまで確認することは出来なかったのだが、ここに来てようやく検証をすることが出来た。


偶然ではあったが、、

おそらく先ほどの“攻撃”を受けても自分にまるで痛みが無かったのは、このVIT999が原因と考えるのが妥当だろう。他に理由が思いつかない。

ということは、party機能を使って同じくVIT999にしてあるドラコも同等の“防御力”を有しているはずだ。

色々と考えをめぐらせていると、メイが不審な目でこちらを見ていることに気づく。


「あぁ、ごめんごめん」

ちょっと考え事をしていてね、

「今のは、、なんというか、、」

どう説明したもんかと、コバヤシは少し言葉を詰まらせる。


「今のは、、、ちょっとした魔法の一種なんだよ」

そしてまたファンタジー理論に頼ることにする彼であった。そう、これはいわゆる強化魔法という()()なのだから、、

しかしメイは全く納得しないようで、


「魔法ねぇ、、」

とため息をつきつつも何も尋ねてはこなかった。どうやら慣れてきているようである。


・・・


「おおぉう、こんなもんでどうだぁ」

コバヤシとメイがザッチョの居る部屋へと戻るなり、彼がコバヤシの方へなにやら刀のようなものを差し出してくる。

なんだこれはとよく見てみると、驚いたことにそれは自分が使っていたボロボロナイフ(元)であった。


「す、、すごいですね、、」

それはもはや原型とはまるで次元の違うものになっていた。れっきとした“短刀”と言ってもいいだろう。

「あんま時間もかけてねえから、まぁだまぁだやぁなぁ」

がははと笑いながらザッチョが言う。

「しかしこんなことまでしていただいて、、」

何かお礼をしたいと思うコバヤシであったが、頼まれてもないのにお金を渡すのは逆に失礼ではと思われた。


そうだ、、


「良かったらこれの肉とかどうぞ」

コバヤシはそう言うとアイテムボックスから、こないだ仕留めたホーンバードを丸々一体取り出す。

サイズ的にかなり無理があったが、まあ突っ込まれたら勢いでごまかそう、、


「うおぉ、こいつぁ良い肉じゃねえかぁ」

ザッチョはそれを見るなりうれしそうにはしゃぐ。


そういえばこれを仕留めたのはもうずいぶんと前なのに腐敗などは見られない、仕留めたあの時の状態のままのように見える。もしかすると“入れた瞬間から時間が止まる”的な()()()()なのだろうか、、

もはやなにがあってもそうそう驚かないコバヤシである。

ザッチョはコバヤシに「ありがとよぁんちゃん」と言ってウインクをする。

そしてそれを見てメイは顔をしかめる。


「ここらの魔物どもぁ最近妙に固まっててなぁ…」

そんなことをぼやきながら彼は他の作業へと入っていく。

おめらはもう寝てるといいぞぉ、そう告げる彼の言葉に従い、コバヤシとメイは、すでにドラコが眠っているホールへと戻るのだった。


・・・


「メイは、ドワーフのことが嫌いなの?」

ホールへ戻ってくるとコバヤシは気になってたことを尋ねてみる。


「…う~~~ん、、」

彼女は迷いながらも口を開く。

「なんていうのかしら、、どうも好きになれないのよね、、」

あの火と土から愛されてそうなところとか、、


なんでもエルフは風や水から愛されるだとかで、だいたい対立の存在になるとのこと。コバヤシにはいまいち理解できなかった、というより“知らない概念”といった方が正しいかもしれない。


「もうずいぶんと昔から、エルフとドワーフってのは犬猿の仲なのよ、、」

なるべく偏見にとらわれちゃだめってのは分かってはいるんだけどね、

彼女はそう言いながら困ったように微笑む。


この世界にはまだまだ自分の知らないことがたくさんあるのだから、そういうこともあるだろうと、コバヤシは目の前のエルフを見つめながら考える。


それじゃあそろそろ自分たちも寝る準備をしようと、コバヤシとメイの二人はドラコを挟んで寝転がる。

「むにゃむにゃすてーきむにゃむにむにく」

夢の中でも少女の胃袋は止まらないようであった。

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