【都までの道程と、それに関わるいくつかの話】2-8
「・・・ぅ、、」
頭がずきずきと痛い、、
メイは自身の頭を抑えながらも目を覚ます。
昨日飲みすぎてしまったのだろうか、、
おぼろげな記憶をなんとか思い出そうとする。
いつのまに私はベッドで、、、
「っ!?」
メイはすぐさまベッドから飛び上がる。
「ぎゅえ」
ベッドからドラコが落ちたようで、変な声を上げる。
「…な、、な、、、」
メイはさっきまで自分が寝ていたとみられるベッドを見ていた。
部屋に二対あるうちの、その内の一つのベッドに三人が全員入っていたようだった。
「ん、、メイ、か、」
おはよう。いまだそのベッドの上に居る彼は、ちょうどいま目が覚めたようで、自身の目をこすりながらメイに挨拶する。
「ドラコ、きしょーう」
ベッドから転落していたドラコはそう言うと床からゆっくり起き上がる。
その赤毛の少女は衣服の類いを一切まとっていない。
「ドラコも、おはよう」
コバヤシはそんな少女へと向かって顔色一つ変えずに挨拶する。
「んな、、な、、なんで、、」
ドラコとコバヤシがこちらを向く。
「なんで三人が一つのベッドに居るの!」
メイはコバヤシを睨みつけながら言う。
「…え?」
コバヤシはぼんやりとしながらもメイから目を逸らさない。
「…三人で?」
彼はドラコと自分を交互に見ながら呟く。
「…いや、確かに昨日そっちのベッドに二人を寝かしたと思うんだが、、」
コバヤシは考えながらも応える。
「メイ、コバヤシと一緒が良いって」
するとドラコが話し出す。
「メイ、ドラコもこっち来なよーって」
昨日の夜にーと、少女はそう付け加える。
コバヤシがじろりとこちらを見る。
え、、? わたし、、そんなこと、、?
いや待てよと彼女は考える。
そういえばなにか、、そう、確かに夜中頃起きたような気がする、、
がんばって思い出そうとしているとドラコが
「メイ、コバヤシの匂いが好きだーって」
「ちょちょちょちょおおお!」
わかった! わかったから! メイは必死になってドラコを止めることにする。
コバヤシは真顔で自分の匂いをくんくんと確認していた。
・・・
「しばらくお酒は控えようと思う、、」
旅馬車の発着場に着くなりメイは謝罪と共にそう口にする。
「メイ、昨日ずっと笑顔ー」
ドラコは楽しそうにそう告げる。
コバヤシはなんと言ったらいいのか迷い「そっか」と一言だけ呟く。
いつもならあんなに酔わないはずなんだけど、、
メイはそう言いながら自分の頭を片手で抑えている。二日酔いだろうか。
「それじゃあそろそろ出発しますよお」
その時、御者がコバヤシ達に声をかけるので、一行は馬車へ乗り込む。
この旅馬車もこないだと同じような造りなんだな、、
コバヤシは内部をぐるっと見回して考える。
「ドラコ、、今日は勝つ、、」
隣では赤毛の少女が神妙な顔つきでなにやら気合を入れている。
メイはまだ辛そうな顔をしていた。
この馬車で野営地まで行き、そこで一泊してから明日の昼頃にはもう王都へ着くとのことだった。
二人ともなんとかがんばってくれと、コバヤシは心の中でそう応援するのだった。
・・・
野営地に着くまで、コバヤシ達の乗る馬車からは怨嗟の声が絶えなかった。
「ぅううぇええ、、」「ぅ、、ぅう、、」「レロレロレロレロレロ…」「ぅ~、、、ぁああ、、、」
コバヤシはアイテムボックスに何か役立つものはないかと必死になって探すも、酔い止めになるようなものを見つけることは出来なかった。
野営地に着くと、彼はさっそく馬車の中で死んでいる二人を一人ずつテントの中へと寝かせていく。
ようやくこのテントみたいなのの中で寝ることが出来るな、、
コバヤシは二人を寝かせながらそう思う。
「二人とも、ご飯は食べられるかい?」
「ドラコ、、ごはん、、ごは、ん、、」
まるでダイイングメッセージのように少女が呟く。とりあえずドラコには少しでも取ってきてあげよう。
「メイはどうする?」
彼は心配そうに彼女にも声をかける。
「私も、、少しだけ、、もらうわ、、」
そう言って立ち上がろうとするのでコバヤシがそれを制す。
二人の分も俺がもらってくるよ。そう言って彼は立ち上がる。
今度馬車を使うようなことがあれば、酔い止めみたいなのは必須かな、、
三人分の食事をもらいながらも、コバヤシはそのことをしかと心に留めておくことにするのだった。




