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『ドラコの小冒険 ~クエの村編~ 』

しらないてんじょう、、

少女は目覚める。


そうだ、、自分は確か新しい町とやらに着いたのだったと、まだ少しぼんやりした頭で彼女は考える。

ぼんやりとはしていたが、先ほどまでの気持ち悪さは無く、気分もだいぶ回復していた。


コバヤシとメイはどこかに行ったのだろうか、、

少女はここで彼らを待っているべきかと少しの間考えるも、やはり外に出てみようという誘惑が勝る。


がちゃ

ドアを開けようとしたところで、少女は自分がいつものように服を着ていないことに気がつく。


あぶない、、

彼女は前にコバヤシから怒られたことを思い出し、いそいそと自分の服を着る。脱ぎ捨てたと思っていた服は何故かベッドの上へ綺麗に折りたたまれて置かれていた。


よし。

少女(着衣済み)は再びドアへと手を掛ける。


・・・


宿の外に出た少女は、とりあえず辺りをぶらぶらしてみることにする。

運がよければコバヤシとメイにも出くわすかもしれない。そう思うと少女の足取りはさっきよりもずいぶんと軽くなるのだった。


そうだ、この町にももしかしたら“きょうどうよくじょう”があるかもしれない。

あれは良い所だったと、少女は前の街でそこに行った時のことを思い出す。

しかし周りをずいぶんと歩いてみたところ、コバヤシとメイの姿はもちろん、前の街に多く有ったような大きい建物はあまり見られなかった。


もしかしたらここの人たちはみんな“きょうどうよくじょう”を知らないのではないか。もしそうだとしたら、、なんて可哀相なのか、、

「これは、教えるべきか、教えぬべきか、、」

少女は妙な使命感にとらわれ、一人ぐむむとそこに立ち尽くす。すると


「おい、おまえ!」

こちらに向けられた言葉だろうか、少女はその声がした方を見る。


「おまえ、“よそもん”だろ!」

そこには少女と同じくらいの背をした少年が立っていた。

それにしても“よそもの”という言葉は初めて聞く。


「ドラコ、ドラコ」

少女は自分の名前を少年に告げる。大好きな人が付けてくれた名前だった。そして少年をじっと見つめる。

すると少年は少したじろぎ、一歩後ろへと後ずさりながらも声は更に張り上げる。


「ドラコ? 変な名前だな!」

少年の言葉に少女は少しだけ不機嫌になり、これ以上この人間と関わることもないなと判断し、再び“きょうどうよくじょう”探しの旅へと戻ろうとする。


「あ、おい! 待てよ!」

少年はまだ彼女に声をかける。

「おまえ、どっから来たんだ?」

ドラコは応えるべきか少し考えるも、すぐに「あっち」とだけ言って自分が来たであろう方向を指差す。


「この町の外か!?」

ドラコはこくりとうなずく。

やっぱり!

そう言って少年のテンションはどんどん上がっていく。ドラコにはそれが何故か全く理解できなかった。


「俺もいつかこの町を出て冒険に行きたいんだ!」

「そう」

行きたいのならなぜすぐ行かないのだろうかと思いながらも、ドラコは少年に返事をする。

その時、少年の後ろから、おそらくこの少年の名前だったのだろう、を呼ぶ声が聞こえた。


彼は後ろを振り向いてその声の主達に笑顔で応える。

さっきまでの表情とはまるで別人のようだと、ドラコには感じられた。


「あら、可愛い子ね、○○とお話に付き合ってくれたのかしら?」

目の前まで歩いてきたその女性は、少年と手をつなぎながらもドラコへと話しかける。

○○というのがおそらくこの少年の名前なのだろう。ドラコがこくりとうなずくと、少年が

「違うよ! ぼくの冒険の話をしてたんだ!」

彼はそう言うと、握っている女性の手をぐいぐい引く。

「ははは、そんな話聞かせてもお嬢ちゃんは興味ないんじゃないか?」

今度は少年の隣に居る男性の方が応える。こちらは少年と右手をつないでいた。女性がつないでいるのとは逆の手である。


「話し相手になってくれてありがとうね」

女性の方がドラコに向けて微笑みながら礼を言う。

少年は、この女性と男性の二人と話すのに、どうやらもうすっかり夢中のようだった。


「…ドラコ、もう行く」

あら、それじゃあ気をつけてね、女性はドラコにそう告げる。


おそらくあの大人二人はあの少年にとって、ドラコにとってのコバヤシとメイみたいなものなのだろう。

ドラコは、先ほどまでの“きょうどうよくじょう”探しの旅はやめにして、ひとまず宿の方へと戻ってみることにする。

そこにもまだ居なかったら、この町の入り口の方にも行ってみよう、もしかしたら町の外に行ったのかもしれないし、、

少女は、自身のその赤い髪をなびかせながら、少し小走り気味にそちらへと向かっていく。


なぜだかは分からなかったが、彼女はいま無性に、二人に会いたいなと、そう強く思うのだった。

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