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【魔法がもたらす影響とその行方】2-5

この一帯で取っておきたい物があるのよ。

メイがそう言うので、裸の少女はそのままに、二人で少し町の外へと向かうことになった。まだ陽もずいぶんと高い。


なんでも今回の依頼で必要となる採取物らしい。

他にもついでに取れそうなものがあったら一緒に取ってこよう。果物とか、後は食用になる植物とかあればいいけど、、

そんな都合のいいことないかと思いつつもコバヤシは心に留めておくことにする。


クエの町の周りは、開けた草原(コバヤシ達はこちらから馬車でやってきた)と、その隣にちょっとした森が広がっていた。

コバヤシとメイの二人はそっちの森の方へと足を踏み入れていく。

メイは地面に生えている植物を一つ一つじっと観察しながらも森の奥へと進んでいく。


「探している植物は何てやつなの?」

いちおう護衛として連れて来られていたコバヤシだったが、索敵に引っかかる存在も特には無かったので、メイの手助けが出来ないかと尋ねることにする。

「そうね、、いくつかあるんだけど、、、」

メイは地面を観察しながらも、採取しようと考えている植物の名前をぽつぽつとコバヤシに伝えていく。


よし、、

コバヤシは聞き出した植物の名前を一通り覚えると、片っ端から周辺の植物を《鑑定》していくことにする。


・・・


「…いったいどんな魔法を使ったのよ、、」

てきぱきと素材を見つけては採取していくコバヤシを呆れ顔で見ながらメイが尋ねる。


「いや、、魔法というかなんというか、、」

スキルに関してはどう説明しておけば良いのだろうか、、

「そういえばメイは魔法とか使えるのか?」

コバヤシはなんとか話題を逸らしておこうとそのように尋ねてみる。


「私? そうね、風魔法だったらかなり得意よ」


風魔法、、


「その、、風魔法とやらを見せてもらってもいいかな、、」

コバヤシがそう尋ねると、メイはすこしぽかんとした顔でこちらを見つめてくる。


「…別にいいけど、、」

そう言って彼女はコバヤシを背にして、右手を前に突き出す。

しかしそこで森の奥のほうから、なにやら豚の鳴き声のようなものが聞こえた。

索敵には特に何の反応も無い。


「ちょうどいいわ。()()を捕まえるついでに見せてあげる」

メイはそう言ってこちらを振り向きニヤリと笑いかける。どうやら彼女には先ほどの声の主が何か分かっているようだった。

コバヤシはこくりとうなずき、先へと進んでいくメイの後ろをついて行く。


・・・


先ほどの鳴き声からして、おそらくは豚のような何かであろうと見当をつけていたコバヤシであったが、遠くに見えてきたそれは豚というよりはイノシシといった風体であった。


「やっぱり、イボシシね、、」

メイはその動物を眺めながら呟く。


いぼしし?


略称か何かだろうかと思ったが、どうやらこのイノシシのような生物の正式名称のようだ。鑑定のスキルにも同様の名前が表示されている。

コバヤシの前でしゃがみながらメイはそのイボシシを静かに見つめている。


「…ふぅー、、」

それからゆっくりと深呼吸をしながら背中に掛けていた小弓を取り外す。


最初にメイと出会った時、彼女は短剣しか所持していなかったのだが、本来の装備は短剣と小弓の二段構えとのこと。どうやら最初に会ったときは弓の方をどこかで紛失していたらしい。メリエの街でいつのまにか新調していたようだ。


「    」

メイが弓に矢をつがえながら何かを呟く。


今のは一体、、

コバヤシには上手く聞き取れなかったが、もしかしたら魔法の“詠唱”かなにかなのかもしれない。

イボシシへと向け、メイは矢を放つ。

放たれた矢は、何故かコントロールされたように途中で不自然に上空へぐにゃりと曲がり飛翔する。どこまで上空へ飛んでいくのか、というより一体何を狙ったのだろうかとコバヤシが思ったのもつかの間、上空の矢は突然そこからイボシシへと向かって急降下を始める。

再び豚のような鳴き声があたりに響く。今度のそれは最後の断末魔のそれであったが、、


「今のが、風魔法で矢の動きを操作したってやつね」

そう言って自慢げにメイはふふんと胸を張る。


すごいな、、

「…風魔法だけでもいくつも種類があるのかい?」

コバヤシがそう尋ねると、メイは再び自慢げに風魔法のいくつかを説明してくれる。


「まあ魔法の種類なんて挙げていったらきりがないわよ」

最後にメイはコバヤシにそう告げる。

「さ、早いとこあれを血抜きしちゃいましょ」

メイが自身の短剣を抜きながらさきほど仕留めたイボシシへと向かって歩き出す。


そうか、血抜き、、

こういったサバイバル的なことをするのは本当に久しぶりだなと思いながらも、コバヤシはメイの後に続く。


まぁ、イノシシの解体なんてさすがにしたことないけど、、

若干の不安を抱えながらも、彼は自分の短剣ボロボロを抜く。

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