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【彼のその目に映るもの】1-51

「ドラコ、勝ったー」


川に到着するなり、ドラコはコバヤシから降りてそう宣言する。

両手を上にぴっと伸ばして着地するその姿はまるで体操選手の着地後のそれである。


いったい何に勝ったというのか、、


メイはコバヤシの腕から降りるなりうずくまる。

もしかして“酔って”しまったのだろうか、、

なるべく揺れないようにと気をつけはしたが。

いかんせん人間を“運搬”することなどには慣れていないコバヤシである。


いくらスキルがあるとはいってもな、、


「メイ、大丈夫かい?」

コバヤシはそんな彼女に声をかける。


「・・・かった?」

「え?」


ごめんちょっとよく聞こえなかったとコバヤシは聞き返す。


「…重くなかった、、?」


…なんと、、そんなことを気にしていたのだろうか、、


「二人合わせても全然軽かったよ」

コバヤシは本当のことを言う。


「ドラコけいりょ~」

川へと向かって歩きながらドラコが言う。

おそらく「軽量」と言いたいのだろう。なぜそんな言葉を知っているかはさておき、、


「・・・ま、いいわ、、」

メイは立ち上がり、コバヤシには背を向けたまま川へと向かって歩いていく。耳の色が真っ赤なことぐらいしかコバヤシには確認できない。


「水浴びするなら俺は外しとこうか?」

いちおう気を利かせたつもりでコバヤシは彼女に後ろからそう尋ねる。

するとメイは立ち止まり、


「・・・お、ねがいするわ、、」

そう言うのでコバヤシは「それじゃまた後で来るよ」とだけ言い残し、周囲の散歩に出かけることにする。


「ちべたい」

ドラコが川に足をつけてそう言うのが聞こえた。


・・・


しばらく辺りを散策した後で、コバヤシは再び川へと戻ることにする。

これぐらい時間をおいたら、さすがにもう水浴びも水遊びも終っている頃だろう。

コバヤシが川へと近づくと、ドラコがそれに気づき近寄ってくる。


「水遊びは楽しかったかい?」

コバヤシは近寄ってきたドラコの頭を撫でながらそう尋ねる。


「ドラコ、冷たいのにがて」

そう言って少女はコバヤシの服を掴んでくる。


そうだったのか、、

コバヤシは少し意外に感じながらも、メイはどこに居るのかドラコに尋ねる。


「メイ、あっち」

ドラコはそのままコバヤシを引っ張っていく。


「メイ~」

ドラコがメイの居ると思われる場所へと向かって声をかける。


こちらは川の上流らしく、辺りには大きな石も転がっていた。


「あぁ、ドラコ、どこに行ったのかと思ったわよ。そろそろコバヤ、、ってきゃぁああ!」


断じて見えていないしわざとでもないしそもそもこまで連れて来たドラコにも非があるといえばいやでも最初にきちんと声をかけなかった自分にこそやはり非があってというよりドラコに責任転嫁をしようととするこの自分の…


もちろんコバヤシは何も見なかったので何も問題はない。

しかしコバヤシは即座にこう告げる。


「決して見てはいけど本当にごめんなさいでした」ぺこり

メイはしばらく岩陰から出てこなかった。


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