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【コバヤジェット】1-50

依頼を終え、お互いの信頼が深まったからか任務完遂のお祝いからか、コバヤシ達一行はその日の夜、全員の食べ物を全て出しあってちょっとしたパーティーを行った。

といっても、焚き火をみんなで囲ってわいわい話していただけだったが。


討伐を達成した安堵からか、メイはすぐに倒れたように眠ってしまった。

うとうととしながらも、パーティーにがんばって参加していたドラコは、今ではぱたりとコバヤシのひざの上で寝息をたてている。


メイがパーティーの最中に話してくれた、彼女の昔の冒険譚はどれも興味深く、コバヤシを久しぶりに童心へと返らせてくれた。

そのお礼という訳ではないが、今日は自分が一日見張り番をするかなと、二人の寝顔を見ながらコバヤシは思う。

メイにも話したが、一日ぐらいなら寝なずともまるで問題はなかった。

社畜という苦行で得られる悲しいアビリティである、、

コバヤシはそんなくだらないことを考えながらも、索敵は怠らず、満天の星空を眺めながら過ごすのだった。


・・・


「ごめんコバヤシ!」

メイは起きるなりすぐにこちらへ謝罪してくる。


「良いって、寝ないのは得意だって言っただろ」

メイは少しばかり安堵のため息を漏らすと


「今日はまた結構歩くんだから、今からでも少しは寝てて」

おねがい、そう言ってメイはコバヤシを促す。


朝はまだずいぶんと早い、もちろんドラコはいまだ夢の中である(良かった服を脱がなくて、、)


「じゃあ、お言葉に甘えて、少しだけ寝させてもらうよ」

ドラコのことよろしくねとだけ伝え、コバヤシは少しだけ仮眠を取ることにする。


・・・


目の前に何かが近づいてきたような、そんな圧迫感を感じコバヤシは目を覚ます。


ちょうどドラコも起きたぐらいらしい。


「おはよう、コバヤシ」

「ん、あぁ、おはよう、、」

コバヤシは目をこすりながらメイに挨拶を返す。


「いま何か、、俺の顔に、、」

コバヤシはぼんやりとそう呟くと、メイの耳が少し赤くなった気がした。


何かあっただろうか、、


「ドラコもおはよう」

メイはすぐに今度はドラコへ挨拶する。

「んぁ~~~ぅ」

ドラコも挨拶(おそらく挨拶)を返す。


「さて、それじゃあぼちぼち凱旋しに行きますか!」

メイはそう言うと二人に準備を急かすのだった。


あれ、なに聞こうとしてたんだっけ、、

まあ、いいか、。コバヤシはドラコを起こしながら自身も準備を始めることにする。


・・・


「そういえばあなた、いつのまに着替えてたの?」

メイはコバヤシの服装を見て尋ねる。


あぁ、そういえば、、


昨日、コバヤシは竜の首を()()した後、近く(コバヤシ基準で)に見つけた川で血まみれだった自身の右腕を洗い流すと共に、アイテムボックスから出した新しい服に着替えたのだった。


「ちょっと近くに川を見つけたんでね、そこで身体洗うついでに予備の服に着替えたんだよ」

そう言って自分の持っているぼろぼろの鞄をポンとたたく。

中にはカモフラージュ用の荷物が少し入っていた。


「え? 川なんてこの近くにあるの?」

良いなあ私も行こうかしらとメイは呟く。

ドラコはいまだ眠そうにまぶたをこすっている。


「帰る前にちょっと寄っても良いかしら」

メイはそう言ってコバヤシの方を見る。


これはちょっとミスしたかもしれない、、しかしメイにはもうあらかたばらしてしまっているからいい、か、?

コバヤシは少し考えた後で、


「…いや、なんというか、近くっちゃあ近くなんだけど、、」

歯切れの悪いコバヤシをメイは少し怪訝そうに見る。


「あれだよ、、俺がちょっとがんばって走ったら、っていう距離というか、、」

それを聞くとメイは「あぁ、、なるほど、」とどこか納得したようにため息をつく。


「それじゃ、しょうがないわね」

メイはそう言って諦めようとする。


「メイ、コバヤシが運ぶ」

ドラコはそう言ってコバヤシの方を見つめていた。


あー、、、


コバヤシは前にドラコをおんぶして走ったのを思い出す。

「いや、あれはドラコだったからであってな、、」

そうドラコに向かって言うと、ドラコは急に目を輝かせる。


「コバヤシ! 約束!」

そう言ってドラコはコバヤシに向かい両手を挙げている。


あー、、、


そういえばそんな約束してたんだった、、

コバヤシは色々とやらかしてしまったと思い少し後悔する。

目の前のドラコは目をきらきらと輝かせている。


今回も断るのはなぁ、、


「…よし」

コバヤシは覚悟を決め、ドラコの目を見つめ返す。

「ドラコ、それじゃあ帰る前にちょっと川にも寄ってくけど良いかい?」

コバヤシがそう言うとドラコは笑顔でこくりとうなずく。


コバヤシは次にメイの方へと振り返る。

メイはさっきから二人の会話がよくわからなかったようで(無理もない)顔にはクエスチョンマークが浮かんでいた。


「メイ、川には寄っていけるし、たぶん街へも、、かなり早く着くことになるよ」

コバヤシはそう言うと背中にまずドラコを乗せる「びゅ~ん」そして今度は

「じゃあ、今からメイのこと抱えるから」

そうメイに告げる。


「…は!? ちょ、え、、え?、そんなの、、」

メイの耳がどんどん赤くなっていく。


「メイも、びゅ~ん」

ドラコは背中で不思議なオノマトペっている。

「いや、、でも、、」

メイはいまだ渋っている。


「だいじょうぶだいじょうぶ、落とさないよう気をつけるから」

コバヤシはメイを安心させるべくそう声をかける。


「いや、、そういう問題じゃなくて、、その、、」


これは埒が明かないな、、

そう考えたコバヤシは目の前のエルフを横からさっと掬うようにして抱えてしまう。


「きゃっ!」

いわゆるお姫様抱っこされたエルフ嬢の耳は今ではゆでだこの様である。


「それじゃいちおうつかまってて。ドラコも落ちないように」

「こばやじぇっとぉ」

うちの子は今日も愉快である。


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