【二日目、遺跡】1-45
珍しくも、コバヤシはドラコに起こされる。
昨晩コバヤシは周囲の敵を一掃した後で、しばらくした後に起きてきたメイと警備を交代して寝たのであった。
「おはよう、ドラコ、、と、メイ、」
コバヤシは二人に挨拶する。
「まだずいぶん早いけど、ドラコがもう行こうって」
笑いながらレミはコバヤシにそう告げる。
「ドラコ、やる」
ふんすと朝から気合を入れているドラコがどこか可笑しかった。昨日暴れられなかったのがそんなにストレスだったのだろうか、、
一行は野営の片付けをしてから、さっそく遺跡へと再び向かうことにする。
・・・
確かに“遺跡”へはすぐにたどり着くことが出来た。
これが“遺跡”か、、
その石造りの建造物群は、様々な植物が覆うように生えており、遺跡だと言われなければもしかしたら気づかなかったかもしれない。
ダンジョン迷宮の入り口と少し似ていたが、こちらのがはるかに巨大であった。
遺跡の周囲には悪竜の存在はおろか、他の魔物の存在も今のところ確認することは出来ない。
「…周囲を見て周りましょう」
メイは二人にそう言うと、先陣を切って歩き出す。
悪竜は今のところ居なそうだとメイに告げるのも不思議に思われると考え、コバヤシはメイの後を付いて行くことにする。
遺跡はかなりの大きさのようで、コバヤシは以前にベトナムだかカンボジアかにあるというこのような遺跡の写真を見たことがあったなと思い出していた。
ドラコも周囲には敵が居ないことを知ってか知らずか、再び遠足気分へと戻っていた。
「森、ぼさぼさ」
ドラコは「おー」と言いながら遺跡を眺めて歩いている。
さっきまでの気合はどうしたんだドラコよ、、
まあ今のところ危険は無さそうだから問題はないが。
メイが一人だけぴりぴりと警戒心を持っていることに多少の罪悪感を感じながらも、三人は遺跡の周囲をぐるりと周っていく。
「…なにも居なさそうね、、」
再び遺跡の入り口?に戻ってくるなりメイはそう呟く。
「悪竜が目撃されたって言うのはこの辺りなのかい?」
コバヤシはメイに尋ねる。
「そうらしいわ、、行商の一団が襲われたって、、」
コバヤシの索敵にはまだ何もひっかからない。
「まあ竜も毎日ここに現れるわけでもないんだろう」
コバヤシは考え事をしているメイにそう話しかける。
メイはまだ何か考え事を続けているようだったが「…ええ、そうね、、」と一言呟く。
この後はどうするのだったかと考えているとドラコが
「あの中、見る」
そう言って遺跡の方を指差す。
「まだ時間もたっぷりあるし、さっきの野営地に戻る前に遺跡の中でも見ていかないかい?」
コバヤシは気分転換になればとそう提案する。
メイは少しためらいながらもそれを了承し、遺跡の入り口と思われる方へ足を向ける。
・・・
遺跡の内部は、巨大な一つの空間が広がっていた。
まるで“ホール”のようだなとコバヤシには感じられた。
ダンジョン迷宮と違って地下のようなものは存在しておらず、ここにあるどの建造物も同じような造りをしているようであった。
ところどころ割れている壁から外の光が差し込んでいるため、内部はかなり明るい。
壁には朽ち果てているものの、はっきりと分かる壁画絵のようなものがいくつか描かれている。
かなりはげかかっていてどのようなものかは詳しく分からなかったが、いくつもの色を駆使して描かれていたもののようだ。
「これは、いつの時代のものなんだろう、、」
コバヤシはふと思っていることを口に出してしまう。
「私は専門家じゃないから分からないけど、数百年以上は前じゃないかしら、、」
メイも壁画を見ながらそう応える。
ふとドラコがおとなしかったのでそちらを見ると、少女は食い入るように壁画を見つめていた。
何か、感じるものでもあるのだろうか、、
そんなことを考えているとふと、索敵に引っかかる存在を遠くに感知した。




