【野営】1-44
それから数回、魔物に出くわしたが同じ要領でコバヤシが全て木っ端微塵にしていった。
メイは途中から「すごい…」しか言わなくなってしまい、コバヤシは少し心配になる。
ドラコも暴れたそうにコバヤシを見ていたが、さすがにドラコの口から炎や、龍モードを見られるのはまだリスキーな行為にしか思えなかったので我慢させる。
しかしどちらにせよ、ドラコが身を守るためにはやるしかないけどな、、
悪竜とやらはどの程度の強さなのだろうかと考えながらもコバヤシはそんなことを思う。
そうこうしている内に一行は『野営に適した場所』へとたどり着く。
予想よりもかなり早く着いたようである。
「あまりの強さに頭がちょっとフリーズしてたみたいだけど、、とりあえずは野営準備に入りましょう、、」
メイは少し気を取り直したのか、コバヤシとドラコに向かってそう告げる。
「了解」
「あいあいさ」
二人はそろって返事をする。
「といっても今回はそこまで準備するものもないから、とりあえずは薪と料理の準備くらいね」
三人が居る場所は、森の中に開けたような広場みたいな場所であり、確かに所々ここで人が野営をしたと思われるような焚き火跡などが見られた。
コバヤシとドラコの二人は、メイの指示に従って野営準備を進めていく。
日も暮れてきた頃、コバヤシ達一行は焚き火を囲いながら夕食を楽しんでいた。
メイは携行食に良いというお団子のようなものをコバヤシとドラコの二人にも分けてくれる。
コバヤシはお返しにと、昨日買ったパンのあまりをメイにも渡す。
メイは喜びながらそのパンを口にしていた。
ドラコは先ほどから食べることに夢中である。
「…あなた達は、なぜあんなにも強いのに等級が一番下だったの、、」
前回、ダンジョン迷宮での調査を終えたコバヤシは、冒険者等級が最低ランクのGからEへと一気にランクアップしたのだった。メイはそのことを言っているのだろう。
どう答えたものか、、
コバヤシは悩んだ挙句、街で通している【記憶消失設定】を話すことにする。
ついでにドラコのことも話しておこう。
ドラコ、捨て子モード。
「そう、だったの、、」
メイは同情と猜疑の感情が混じったような目をコバヤシ達に向ける。
「…メイ、さっきの話、覚えてるかい」
コバヤシは再度確認をする。
「え? えーと、あなた達のことを誰にも話さないってやつ?」
メイはきょとんとしながらも返事を返す。
コバヤシはうなずく。
メイの反応を見た感じ、やはりこのステータスとスキルで得た力というのは“普通ではない”
そういったものがもたらすものにはろくなものがない。
ふざけた問いかけではあるが、仮に、ゲームのように世界を救えるような力が自分にあったとして、誰もがみんなその力を喜んで披露するだろうか。
コバヤシにはどうしてもそうは思えない。
世界を救う必要性が無い限り、その力を披露する必然性は無い。
もちろんこんなのは極論ではあるが。
メイはコバヤシの気迫に少し気圧されたのか、言葉を詰まらせるもすぐに
「エルフの名において、絶対にあなたとの約束は守るわ」
そう言ってコバヤシの目をしっかりと見つめ返すのだった。
今はメイを信じるしかない。
コバヤシ達(一人はすでにおねむ)はこのあとの予定を確認することにする。
夜はコバヤシとメイの二人で交代しながら警戒と睡眠を取る予定であった。
「寝ないで居るのは得意だから任せておいてくれ」
コバヤシがメイにそう教えると彼女は途端に笑い出す。
冗談を言ったつもりではなかったのだが、、
ここから遺跡までは、もう歩いて少しのとこらしい。
コバヤシの“マップ表示”ではまだ確認することが出来なかったが、この機能はおそらく2キロ程度の範囲が最大表示だと思われるので、少なくともあと2キロ以上はあるということだろう。
「明日は遺跡に着き次第、周囲の調査を行う」
メイは真剣な表情で続ける。
「しばらく調査をして、悪竜が確認できなかったらもう一度ここまで戻ってくる」
悪竜を見つけた場合は、、
そう言ってメイは言葉を止める。
「…悪竜というのはどれぐらいの強さなんだ」
コバヤシは前から気になっていたことを聞いてみることにする。
コバヤシとドラコのHPとVITは限界まで上げてあったが、それでも何があるかは分からない、、
「そうね、、個体によるらしいんだけどBランクの冒険者が3人居れば一体を殺せるぐらいらしいわ」
なるほど、、
「レベル50以上が三人居れば何とかなると思う、、」
…レベル、、
「…ちなみにメイのレベルはいくつなんだ」
これは聞いていいものなのだろうか、、
「私? そうね、最近はめっきり教会に行ってないから今のレベルははっきりとは分からないけど、少なくとも50以上はあるわ」
…教会、、
新しい情報が久々にどばどばと入ってくる。
ちなみに“ステータス”と“スキル”について軽く探ってみるが、こちらは全く知らないようであった。
レベルという概念だけが存在しているのだろうか、、昨日サポセンが言っていたケースには確かにあてはまる。
メイは多少いぶかしんだりはしたものの、先に休みを取らせてもらってもいいかしらということだったので、話は明日以降にすることとした。
コバヤシはメイが寝ているうちに、索敵で分かっている限りの周りの魔物達をこっそりと一掃しておくことにする。
隣ではすでにドラコがすやすやと気持ち良さそうに寝ていた(良かった、服を着ている、、)




