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【市街にて2】1-38

次は洗濯をしようと、コバヤシは汚れている服をアイテムボックスからこっそり取り出して、共同浴場の隣にある洗濯場へ向かう。

井戸を使っての洗濯などコバヤシはこれまでしたことがなかったので、色々と苦戦はしたがなんとか干すところまで終らせる。


これは盗られたりしないのだろうか、、

そんなことを一瞬考えるが、周りの人たちも普通に干しているので、コバヤシもそれに習うことにする。

いくつもある井戸や、ここでの洗濯行為はどうやら全て無料で出来るようで、インフラの一種なのだろうかとコバヤシは考える。


いずれにせよ無料はありがたい。

さて、洗濯物は乾いた頃にでも取りに来るとして、そろそろお昼だな、、


「ドラコ、お昼ご飯食べに行こうか」

昼寝しそうになっていたドラコは目を一瞬でぱちりと明け、コバヤシの方を向いて首が取れそうなほど縦に振るのだった。


・・・


お昼はリーシアさんのとこのパンにしようと朝から決めていたコバヤシだった。

ついでに少しでも借金を返済しないとだしな、、


そのまえにちょっと防具を見てみるか。


いまのところ防具の必要性は感じなかったが、これもカモフラージュのためである。

防具屋に関しては何の下調べもしていなかったので、適当に目に付いた場所へと入ることにする。


小盾とか皮鎧とかがあればいいんだが、、


・・・。


…よし、次の依頼が終ってからでもいいだろう。


高すぎ、、また無一文に戻ってしまう、、なんだよあれ、、


今度は安そうな防具屋をきちんと調べてから来ることにしよう。


・・・


「ドラコ、お昼はここで買ってくよ」

コバヤシがそう言うとドラコは目を輝かせる。


そういえばドラコはここに来るの初めてだったな、、


今日も『焼きたてパン ~ クウォーツ ~ 』は営業中のようで、こないだ同様辺りはパンの香ばしい香りで満たされていた。


ドラコはコバヤシより先にお店へと駆けていく。

店内ではリーシアさんが他のお客さんと話しているところだった。

リーシア父の姿は見えない。


コバヤシの姿に気がつくと、リーシアは一度目をぱちくりさせると「コバヤシさん!」と叫び近くにかけてくる。

ドラコは、店内のパンを全て食べてやらんとでもいうような形相で店内をぐるぐると周っている。


「リーシアさん、こんにちは。ドラコ、好きなものを選んでいいけど買う前に食べちゃだめだぞ」

リーシアはコバヤシの元へ来ると、店内を忙しなく歩き回るドラコに目を向ける。


「あの、、あの子はコバヤシさんの知り合い、、なんですか、、?」


コバヤシは門番にも話した内容をかいつまんで話すことにする。

森で捨てられていた子供を引き取ることになった、という話である。


龍の卵から出てきただなんて話は出来れば自分とドラコだけの話にしておきたいと心から願う、、


話を全て聞き終えると、リーシアは「そんなことが、、」とだけ言って、ドラコのことを慈愛の目で見つめる(少なくともコバヤシにはそのように見えた)


「今日は色々と報告もかねて来たんですよ」


そう言ってコバヤシは、ちょっとした依頼を済ませるようになったのでその報酬で日用品を買ったことや、これでようやく少し借金返済も出来ますといったことを話す(借金返済のところでリーシアさんはくすりと笑う)


「今日で一括返済できるというわけではなくなってしまったのですが、、」

コバヤシは少しのお金をリーシアに差し出しながら言う。


「ふふふ、これじゃまるで私が、怖い借金取りみたいですね」

リーシアは笑いながらそう言い、コバヤシから仰々しくそのお金を受け取る。

「はい、確かに。でも無理はしないで下さいね」

リーシアは心配そうにそう付け加える。


「大丈夫ですよ。なにせちゃんと武器も買いましたしね」

コバヤシはぼろぼろの中身が見えてしまわないよう気をつけながらも、皮鞘ごと自身の短剣をリーシアに見せる。

リーシアは微笑みながら「なら少しは安心ですね」と悪戯っぽくささやく。


その時、ようやくドラコがお目当てのものを全てかき集めてきたみたいで、木製のトレイにこれでもかというぐらい様々なパンを乗せてコバヤシ達の前に現れる。


これ、お店のパン全種類じゃないだろうな、、

そんなことを考えながらもコバヤシは、さっそく手持ちの心配を再び始めるのだった。


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