【市街にて1】1-36
大部分はメイのおかげだろう、、
どうやらあの依頼は一日で出来るようなものではなかったようで、受付嬢からかなり怪しまれていたように思う。
メイのフォローがなかったら思った以上に大変だったぞこれは、、
しかしそのおかげもあってか、コバヤシはこの異世界とやらに来てからのこれまでで、最も経済的に潤沢な状態へと到達したのだった。
あぁ、生きていくためにお金は必要であったのだ、、
前世、ということにしておこう、ではお金の使い道が分からなくなっていたコバヤシだが、この世界では生きていくために、ただただそのためだけに必要性を感じているのだった。
おまけにこっちでは子持ちだしな、、
コバヤシはドラコの頭を撫でながら感慨にふける。
「メイ、本当に本当にありがとう」
今度はメイへとあらためて礼を言う。
「私はたいしたことしてないわよ」
そう言って彼女はふふっと笑う。
お互いまだそれぞれ用事もあったので、夜になったら酒場で落ち合うことにしようと、落ち合う酒場の場所をメイは教えてくれる。
「それじゃ、また後でね」
それだけ言うと彼女はギルドから出て行った。
よし、とコバヤシはドラコの方を向き
「それじゃ、俺達も行こうか」
そう言うとドラコはこくりとうなずきコバヤシの手を握るのだった。
いざ行かん、生活必需品の買出しへ、、
・・・
ギルドへ出てまず真っ先に向かったのは、、自分達が泊まっている宿屋だった。
まずは“住”の確保なんだよな、、そもそも延滞料待ってもらっているし、、心苦しい。
そういえばこの宿の名前はなんというのだろう、いまだに自分が泊まっている場所の名前を知らないことに気がつく。
宿にたどり着き扉を開けると、受付に居るレミをさっそく見つける。
「お待たせして大変すみませんでした」
深々とお辞儀しながらもそう言うコバヤシに向かって、レミは
「もう少しで部屋片付けちゃうとこだったよ~」
と冗談ぽく告げてくる。冗談、冗談ですよね、、?
コバヤシは一泊分の料金を確認し、とりあえず再び3泊分の料金を支払う。
というかリーシアさん、見ず知らずの自分に対しこれほどのお金をぽんと自分に貸してくれるなんて、、
あらためてリーシアさんの偉大さを思い知るコバヤシであった。
これはホント、何か恩返しをしないとなあ、、
自分に何か出来ることはないだろうかと考えながらも、コバヤシは再び宿を後にする。
「よし、ドラコ。まずは俺の服を買いに行ってもいいかい?」
「うむ」
ドラコはなぜか仰々しそうにそう言う。
だからどこでそんな言葉を覚えるのだろうか、、可愛いが、、
多少親ばかの素質を自分に感じつつ、こないだ服を買った店でいいだろうと、コバヤシはマップを確認しながら再び『総合服店 エディンバラ』へと向かうのだった。
・・・
あいかわらず入り口は怪しすぎる雰囲気をかもし出してるな、、
コバヤシはエディンバラに到着するなりまたしてもそのように感じるのだった。
とてもではないがお勧めされでもしない限りわざわざ足を踏み入れようとは思わない。
「…いらっしゃいませ」
足を踏み入れてしばらくすると、こないだ同様どこからともなく店員がすぅっと現れる。
コバヤシは自分の手持ちを確認し、普段着として使えるような自分の服を二着と、寝巻きとして使えそうな服を、これは自分とドラコの分の二着、店員がお勧めしてくれた中で一番安いのを購入する。
この世界の衣服は何の糸を用いて作られているのだろうか、、
Tシャツのようなものと、下はチノパン?のようなものが主流のようだが、
上着に、古着として安く置いてあったジャケットを一点購入する。その隣に、これもおそらく中古のものだろう、肩がけのバッグがあったので、アイテムボックスのカモフラージュ用にこれも購入しておく。
エディンバラの店内には、一つ大きな一枚鏡が置いてあり(どうですか、こんなに大きい一枚鏡を置いてるのはうちぐらいですよ)、それの前で買った服を合わせてみると、これはずいぶんとこの世界になじんだ格好となっていた。
これなら服装で奇異の視線を浴びる事は無いだろう。
「ドラコも~」
そんなコバヤシを見てか、ドラコも鏡の前に来て一人ファッションショーを始める。
「ドラコー、お風呂行くぞー」
コバヤシはモデルを鏡の前から引き剥がすのに少してこずるのであった。




