【back to home】1-34
「どうする? 街へ向かう前にここで少し休んでく?」
コバヤシは二人に尋ねる。この辺りにもやはり魔物が居ないことはすでに確認済みだった。
「魔物にも会わなかったし、予想以上に早く出れたから私はこのまままでも大丈夫かな」
メイはそう言ってからドラコの方を見る。
「ん、ドラコ平気」
ドラコは胸を張ってそう応える。
「それじゃ、ぼちぼちメリエへと向けて出発しますか」
コバヤシはそう言って街方面へと向かって歩き出そうとする。
今回はメイもいるから帰りは少し時間がかかっちゃうかもか、、
そう考えていると、
・・・。
ドラコがコバヤシに向かって両手を挙げている。抱っこしてくれということなのだろうか、、
…あ。
コバヤシは、行きにドラコと交わした約束を思い出した。
そう言えばドラコのことおぶって走るやつ、帰りも出来たらやってあげるって言ったっけ、、
・・・。
「ドラコ、、、あれはまた今度な、、」
こちらを向いていたワクワク顔が途端にガッカリ顔になり、落胆のあまり地面へと倒れこむドラコである。
というかそんなに楽しみにしてたのか、あれ、、
「この子どうしたの? 大丈夫?」
メイが心配そうにドラコの顔を覗き込む。
「あー、心配しないで。大丈夫だと思う、ほらドラコ」
コバヤシはドラコの頭を撫でながら声をかける。
「ドラコ、、負けた、、」
負けたって、、
「また今度してあげるから、な」
そう言うと、ドラコはコバヤシの顔を見てこくりとうなずき立ち上がる。
メイはそのやりとりをを不思議そうに見てはいたが特に何も聞いてはこなかった。
「それじゃ、行こうか」
まだ日は暮れていなかったものの、出発するのは早めにしたほうが良いだろう。
三人は今度こそ、メリエへと向かうためダンジョン迷宮を後にする。
あいかわらず迷宮の周りは索敵にひっかかるような敵は全く居なかった。
といってもこのスキル、そこまで信用できるわけではないけどな、、
コバヤシはそんなことを考えながらも、警戒は怠らない。
ドラコは気を持ち直したようで、再びいつのまにか拾ったと思われる木の枝で遊びながらもしっかりと付いてきている。
メイの方はというと、彼女は彼女で警戒を怠ってはいないようで、視線は左右へと時折厳しく走らせている。ドラコの様子とえらい違いである。
まあ索敵スキルを使っている分には大丈夫だと思うが、、
それでも絶対ではないかもしれない。コバヤシはメイの警戒にも感謝しつつ、メリエへの道のりを黙々と進んでいくのだった。
・・・
「少し、休もうか」
しばらく森の中を歩き進めてからコバヤシは二人に声をかける。
ドラコはまだ全然といった感じだが、メイは少し辛そうだ。
しかし自分もこんな体力は絶対になかったと思うのだが、、
これもステータスのおかげなのだろうか。
「メイ、だいじょうぶか?」
コバヤシはメイに声をかける。
「ええ、、ごめんなさいね、、」
そう言って彼女は地面へと腰を下ろす。
何か体力を回復するようなものでも持っていれば良いんだが、、
そんなものどころか今では食べるものすらも何一つ持っていないドラコバヤシであった。
このマップスキルで食べ物の生えてる木とか検索できないのだろうか、、
しかし色々と試したが上手くいかなかった。お店の検索とかは出来るのに、何か条件でもあるのだろうか、、
「・・・。」
そんなコバヤシをメイが眺めていることに気づく。
「あぁ、ごめん。メリエまでの道を少し確認していたんだ」
コバヤシはメイの方に向き直る。
ドラコはというと、地面になにやらよくわからない絵?をお気にの枝で描いていた。
「…あなた達二人は、なんか不思議ね、、」
メイはぼんやりとそう呟く。
・・・。
まあ、色々とおかしな点はあるのかもしれない、、
コバヤシが何も応えずにいると、
「まあそんなに詳しくは聞かないわよ。あなた達は私の命の恩人だし」
そう言ってこちらに笑顔を向ける。エルフの笑顔は破壊力抜群である(美人)
「ドラコも~?」
話を聞いていたのか、ドラコはこちらへとてとてと近寄ってくる。
「ええ、ありがとね、、ドラコ」
そう言ってドラコの頭を撫でるメイを見て、これは絵になるなと、ふとそう思う自分が居た。
・・・
少し休んだ後で、三人は再び帰路への道を再開する。
疲れているメイに対してドラコが、
「メイ、コバヤシが運ぶ~」
などと不穏なことを提案したが、二人は全力でその提案を却下した。
確かにそっちの方が速そうだが、色々な意味でアウトである。
メイはメイでエルフの耳が赤くなっていた。どこかに恥ずかしがる要素でもあったのだろうか、、
日はだいぶ落ちてしまっていた。
コバヤシは、おそらくスキルによって日中となんら変わりない視界を得ていたが、二人は大丈夫だろうか、、
「メイ、ドラコ、だいぶ暗くなってしまったけどちゃんと見えてるかい?」
「私は大丈夫よ、エルフは人間よりも五感が鋭いの。森とかだと特にね」
そういうものなのか。
「ドラコ、よゆう」
ドラコのこういった語彙はいったいどうやって増えているのだろう、、
そんなことを思いながらも、切り替えて森の中を更に進んでいく。
・・・
懐かしの(すくなくともコバヤシにはそう感じられた)メリエが見えてきた頃には、夜もどっぷりとふけ、周囲は深深と静まりかえっていた。
さすがのコバヤシステータスにも少し疲れが出ているらしかったが、他二人に比べると全然ましであった。
メイはすでにふらふらの状態で、ドラコにいたっては途中からコバヤシが背負い(結局コバヤシが背負うことに、、)背中ですでに寝息をたてている。
幸運なことに(ということにしている)魔物とは一匹も出くわさなくて本当に良かった。
三人はちゃちゃっと街へ入る手続きを済ませることにする。
あ、、入市税、、、




