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【最下層】1-30

最下層へと繋がっている階段は、これまでのものよりもはるかに幅が広く巨大なものであった。


『ドラコ、この階段には罠あるかい?』

ドラコはしばらく階段を凝視した後にコバヤシの方を振り向き、首を横に振る。


マップと索敵スキルによって、最下層の広々とした部屋に一体だけ脅威となる魔物が居るのはわかっており、その赤い点は少し前から忙しなくフロア内を移動していた。


まるで“ボス”だな、、


ギルドの受付が言うには、ダンジョン迷宮にはそれぞれダンジョン主または迷宮主と呼ばれる魔物が存在していて、迷宮内の魔物の中でもひときわ強力な個体だとのこと。


ドラコも自分もここまでノーダメージだったが、念のためスキルの確認だけしてから突入しようと、二人は階段前で少し待機する。


すると、下の方から女性の悲鳴のようなものが聞こえた気がした。


いや、、索敵でもマップにも人間の反応は全く無いから気のせいのはずだ、、

しかし念のためにコバヤシは耳を澄ませる《聞き耳》


・・・。


悲鳴や人間の声は聞こえなかったが、どうやら迷宮主と思われる魔物が何か、と戦っている?


「ドラコ、行こう」

コバヤシはそう言ってドラコと階段を降りていく。


階段を降りると、すぐ目の前には石造りの巨大な扉があった。人一人分は入れる程度の隙間が開いている。


やはり、なにやら戦闘音のような音が中から響いている、、


「あぁっ!」

!?


中から女性の悲鳴、やはり人間が居るのか!

コバヤシはすぐに隙間から中を確認する。


そこにはとてつもなく巨大なクモが、その長くも恐ろしく鋭い、まるで刃物のような足を、倒れて気絶していると思われる女性に向かって、いままさに振り下ろそうとしているところだった。


「ドラコ!あのクモをやれ!」

そう言うやいなや、コバヤシは全力で倒れている女性の元へ一足飛びに跳んでいく。


まるで周りがスローになったような錯覚に陥る、


「ッ!」

間一髪でコバヤシの手は女性に届き、そのまま強引に腕を掴み抱き寄せながら、クモから離れる形で部屋の更に奥へと跳んでいく。後ろでドラコが息を吸い込むことに気づく。


「ドラコ!やれ!」

コバヤシは女性を抱え飛びながらも、ドラコに向かってそう叫ぶ。


後ろから熱気を感じる。空気がちりちりと焦げる。コバヤシはそのまま振り向かずに部屋の隅までダッシュしてからようやく後ろを向く。


そこには、全身炎に包まれのたうちまわっている巨大蜘蛛のような魔物が居た。

なかなかグロテスクな様だ、、


しかしすぐに力尽きてしまったようで、あっというまにピクリとも動かなくなる。


そしてその向こうからドラコがてとてとと歩いてくる。

それにしても、迷宮主、おそらくそうだろう、すらも一撃なのか、、

コバヤシはあきれながらも感動し、こちらまで来たドラコの頭を撫でる。


「ありがとな、ドラコ」

そう言うとドラコは誇らしげにうなずくのだった。


・・・


「あれ、食べる?」

ドラコは自分の炎で燃やしたクモらしき魔物の残骸を見て、コバヤシにそう尋ねる。

「…いや、、今回も無しかな、、」


スライムといい、この黒こげクモといい、魔物というのは食べれるのだろうか、、

もし機会があれば今度試してみてもいいかもしれない。

そんなことを考えながらも、コバヤシは救出した女性を地面へと寝かす。


やはり気絶しているようで、ところどころに切り傷や打撲のようなものも見られる。

まだ息をしているから死んではいないだろう、、そうだ、リーシアさんから頂いたポーションでも試してみよう。


しかしそこで、コバヤシは目の前で倒れている女性の顔が、どこか普通と違っていることに気がつく。

他人の外見、造形個体差とでもいうべきだろうか、そういったものに関してたいしたセンサーを持ってる訳ではなかったが、そんな彼でさえも、目の前の女性の外見には少し驚かされる。


耳の形が、とんがって?いる、、


コバヤシが知る限り、このような耳の形をしている“人間”は居ない、たぶん、、


というよりこれは、、もしかしたらこれは“エルフ”というものなのだろうか?


最近のゲームなどには疎いコバヤシでも、エルフという生き物の存在は何かで聞いたりしたことはあった。

詳しくは全く知らないが、、まあこの世界は十分ファンタジーなのだからエルフが居てももう驚きはしない。

しかし言葉は通じるのだろうか、、


いずれにしてもポーションは使ってみるかと、コバヤシがアイテムボックスからポーションを取り出したところで、


「…っ」


目の前の女性エルフ(仮)が目を覚ます。


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