【ダンジョンで、迷宮】1-28
結局、目的地に着くまでに魔物に遭遇したのはあの一度だった。
というのも、あれから時間短縮のため、途中でコバヤシがドラコを抱えて走ったからである。
AGIマックスの威力さまさまだな。
ドラコはそれをいたく気に入ってしまったみたいなので(もう一回!もう一回!)帰りも安全そうであればしてあげると、ドラコと約束をする。
昼前に目的地前へと着いてしまったので、少し早いがお昼ご飯にしようかと、二人で適当な場所に座る。
この近くからはいくつか索敵にひっかかる反応があったが、どれもそこまで近くはなかったので無視しといて大丈夫だろう。
お昼ごはんといっても、こないだ頂いたバゲットの半分をアイテムボックスから出し、更にそれをドラコと半分こして食べるという質素すぎるものだった。
許せドラコ、、この報酬が手に入ったらおなかいっぱい食わせてやるからな、、
そんな死亡フラグのようなことを考えるコバヤシであった。
ドラコ方が少しでも大きくなるようにとバゲットをちぎることにする。
これが“ダンジョン迷宮”か、、
コバヤシは目の前の建造物を眺めながら、受付から聞いた話を思い出す。
・・・
ダンジョン迷宮とは、、、
あるとき突然発生する遺跡のような場所(遺跡とは違う)。ものによって外観などの形はかなり個体差がある。
誰がどのようにして、そしてなんのために造るのか、そもそもどうやって出来ているのか、その全てがなぞに包まれている。
『人為建造物説』と『自然発生説』の二つがある。最近では後者の方が有力視されている。
ダンジョン迷宮を専門に研究している学者も居るとか、、
見つかったダンジョン迷宮には、協会によって全て番号が割り当てられる。これで18番目。
今回は危険度の調査ということで、調べてほしい項目は … 何層あるか、出現したモンスター、罠の種類、宝を見つけた場合は報告、などなど、、
・・・
コバヤシ達の目の前にあるダンジョン迷宮は、草木に覆われた古びた教会、のようであった。
これは入り口なのだろう。マップには下の階層がいくつかすでに表示されている。
というかこのスキルがあれば、階層を隅々といった調査は必要なくなるな、、
そんなことをコバヤシは考える。
この迷宮は最下層が地下5階のようで、最後のフロアだけ大きな楕円形をしたワンフロアになっている。
他の階層はかなり入り組んでいるみたいだ。
ドラコとコバヤシの二人はすぐにバゲットを食べ終えてしまったので、早々に迷宮へと入っていくことにする。
迷宮内部には索敵にひっかかるような魔物が何体か居るようだが、脅威となるような人間はひっかからなかった。というより人間の反応は一つもない。
これなら二人で思いっきり動いても大丈夫か、、
そうだ、迷宮に入る前に、
「ドラコ」
コバヤシはドラコを呼び止める。
ドラコのHPとVITだけでも、一応もうすこし強化しておこう、、
コバヤシはドラコのステータスを少しいじる。
「よし、それじゃあ行こう」
ドラコは首をすこしひねったあとに、こくりとうなずいた。
・・・
古い教会のようなその建物へと入る扉は朽ち果てており、そこからは大きな階段が地下へと広がっている。
階段を降りていくとすぐに、周りの壁がぼんやりと光り輝いていることに気づく。宿の部屋にあった“魔法ライト”の光によく似ている。
同じような仕組み、もしくは素材なのだろうか、、
階段を降り終わるとそこからはまるで洞窟であった。
これはいくら洞窟内がぼんやりと光っているといっても、マップスキルや地図無しだったら相当の自殺行為だったかもしれない。
そこで自身のスキルに何か増えてないかと確認してみると、いくつか新しいものが増えていた。
《手加減》と《暗視》の二つ。
称号もいくつか増えていたが、こっちの確認は後でする事にしよう。
この《手加減》というスキルはよくわからなかったが、暗視スキルは最大にしておこう、、
すると途端に迷宮内部がまるで外と変わらない明るさになる。
いや、、これは暗視スキルによってこう見えているだけだな。
ん?
そのとき自分のレベルが1ではなく2になっていることに気がつく。
ドラコは1のままだ。
あの魔物を倒したからなのだろうか、、よくわからないが、、
コバヤシはもう少し自身のレベルに意識を向けてみると、
『次のレベルまであと、、』という表示が出てくる。
これは、、これがサポセンの言っていた“経験値”というやつなのだろうか。
すると次に『まだまだぜんぜ~ん』という表示が出てくる。
・・・。
なんだこれは、、
今度はドラコの方も見れるのか確かめてみると
『もう少しだがんばれ!』という表示が出る。
これが次のレベルまでに必要な経験値なのだろうか、、
あまり気にしなくてもいいかと、コバヤシはスルーを決め込むことにする。
レベルアップによってコバヤシのステータスは全項目が+10ずつされていた。
ステータスアップごとに+10ずつ上がっていくのだろうか、、
そこでドラコがこちらを少し不安げに見つめていることに気がつく。
少し“メニュー”を操作しすぎていたか、、
「ごめんよドラコ。さあ、行こう」
そう言って二人は探索を開始する。




