【遭遇】1-27
コバヤシはマップを見てみると、やはり索敵スキルとの相性は抜群のようで、索敵で感知できた存在の場所は赤い点のマークとして表示されていた。
「ドラコ、静かに後ろからついてきてくれ」
コバヤシがそう言うとドラコはこくりとうなずいた。
赤いマークの場所へと近づく。そこが見える位置にやってきた。
…あれが、魔物というやつなのだろう、、
それはパッと見だと『枯れた大きな木』に見えたかもしれない。もちろん遠くに見えるそれのように、ぐにゃぐにゃと動いてなければ、の話ではあったが。
遠めにそれを観察していると、その魔物の横にはおなじみのARが表示される。
・エルツリー
・Lv3
・脅威度 弱
この『エルツリー』というのがこの魔物の名前なのだろうか、、
それにしても魔物に対しても鑑定スキルは発動してしかも脅威度なんてのも表示されるとはと、コバヤシは少し感心する(何を基準に決められているのかはよくわからないが、、)
人間に対しては発動しないのに、、まあそういう仕様ということなのだろう、、
さて、どうするか。
コバヤシはちらっと後ろに居るドラコを見る。
ドラコは遠くに見えているエルツリーをじっと見て動かない。
いつでも戦える、そんな雰囲気をかもし出すこの幼女からは、とてもではないがこの魔物にやられてしまうイメージがわいてこない。
幼女といってもいちおう“龍”だしな、、
コバヤシはふと苦笑しながらも、地面に落ちている小石をいくつか拾う。
今回も、とりあえずは前回と同じような作戦でいってみることにする。
そして遠くの魔物に向けて、拾った小石を3つほど連続して全力で投げてみる。
ひゅおっという音と共に、小石はものすごい速さで魔物に命中する。
最初の石が当たった時点で魔物の上半身(おそらくは上半身)が破裂したように吹っ飛び、残りの石で下半身(と思われる)も吹っ飛ぶ。
「おー」
ドラコは楽しそうにコバヤシの手を握ってくる。
やはりステータスとスキルは偉大であった。
しかしダンジョン迷宮というからにはおそらく屋外では無いだろうし、接近戦も検証してみないとだよな、、
コバヤシは自身が腰にぶらさげているぼろぼろの短剣を心もとなく見る。
二人はエルツリーの残骸を見に行ってみることにする。
・・・
近くで見るとなるほど、遠くから見ると古びた木にしか見えなかったが、飛び散った肉片?からは汁のようなものも出ていたので、やはり生き物であったということを感じさせる。
「コバヤシ」
するとドラコが少しはなれたところでコバヤシを呼ぶ。
ドラコの方へと近寄ってみると、そこには不思議な、生き物なのだろうか、がドラコの目の前で動いていた。
バスケットボールよりも一回り大きいサイズの、これは、、スライム?というやつだろうか、、
スライムというものならコバヤシでも知っている魔物である。
半透明で濁った緑色をしたその奇妙な生き物はドラコの前でずるずると動いている。
すると目の前に、
・グリーンスライム
・Lv5
・脅威度 無し
という表示が出る。やはりスライム、、グリーン?
そうか、、もしかしたらこの『脅威度』というものが索敵スキルに関係しているのかもしれない。
さきほどのエルツリーなる魔物の時と違い、いまコバヤシの索敵スキルには目の前のスライムに対してなんの反応も示していない。
しかしそうだとするなら結構このスキルの使い方難しそうだなとコバヤシは考える。
脅威度関係なく全て表示してくれた方がありがたいんだが、、いやそれでも無いよりはあったほうが格段にましか、、
「これ、食べていい?」
スライムを凝視しながらドラコがコバヤシに尋ねる。
…え、スライムを喰うのか、、?
「…いや、、今回はやめておいてくれ、、」
そういうとドラコはこくりとうなずき、再びスライムのほうへ向き直る。
そこでコバヤシはふとドラコに尋ねる。
「ドラコ、このスライムって倒せるか」
再びドラコはこちらを向き、こくりとうなずきそして
ぎゅっ
急にスライムへと抱きつくと、それを持ち上げる。
見た目と違ってそこまで柔らかくも無いものなのだろうかなどと考えていると、
ぱぁあん!
ドラコはスライムを近くの木へ叩きつける。
すさまじい勢いで木へと叩きつけられたスライムは、まるでつぶされた生卵のように木へとぺしゃんこされる。
「ん」
そう言ってドラコはそれを指差しながらこちらを向く。
さっきのスライムの強さはまだよくわからないが、、
…うちの龍少女、強いな、、




