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【新依頼】1-24

ベッドから落ちたあたりの床で。コバヤシは目を覚ます。

おなかにはドラコの頭が乗っている、、二人そろっていつのまにか床へと落ちていたようである。


この世界は、、どうやら夢じゃないみたいだな、、


疑り深いコバヤシも、さすがにそろそろ認めなければ信じなくてはいけないかと感じ始めていた。

それでもまだ100パーセント信じることは出来ないコバヤシではあったが。


このTPとやらを使うだけで、自分の身体能力やあらゆる技術・技能を一瞬にして高めることが出来る、そんなことを当たり前だと思えてしまうような、そんな人間に自分がなることを、コバヤシは恐れた。


何の対価もなしに得られるものなど信用ならない、、


いや、いちおう自身の命という対価は出したのかもしれないが、、


さて、そろそろ起きるかな、コバヤシは起き上がり窓から外を見る。

ちょうど朝日が昇る頃合であった。


「ん~、、」

いまだ床でシーツと共にくるまっている赤毛の少女が、もぞもぞと動き始める。

もうそろそろ目覚めるだろう。


コバヤシはまだ外を眺めながら、今日しようと考えている事柄に頭の中で優先順位を付けていくのだった。


「おはようございます」

コバヤシは部屋から出たところでレミを見つけ声をかける。


「あ~おはよ~、早いね~」

「いつもこのぐらいの時間に起きてしまう習慣みたいでして、、」


そういえばこの世界にコーヒーはあるだろうかと考えながらコバヤシは応える。


「もう朝食出せるけどどうする~?」

レミは笑顔で尋ねる。


「そうですね、、いまあの子も起こしてきますので」

「わかった~」

そう言ってコバヤシとレミは別れる。


そういえば朝夜と二回ご飯が付くと言っていたのにいまだ一回も晩御飯を食べていない、、

今日こそはここで食べようと決心するコバヤシであった。


あれ、しかしドラコも増えたから宿泊料金とか変わるのだろうか、、


このまま無一文は本当にまずい、、なんとしても今日は昨日よりも報酬が良い依頼を受けることにしよう、、


コバヤシは、ぐだるドラコをなんとか起こし「ドラコ、起きてる、、」二人で朝食を取りに食堂へと向かう。

ねぼけて全裸で部屋を出そうになるドラコを止めるのに朝から大変なコバヤシであった。


食堂でドラコと朝食を取りながら、レミに追加料金とかはないのかと尋ねたところ、部屋を変更とかしなければ大丈夫とのこと。食事分はサービスらしい、、なんと親切なのだろうか、、

コバヤシはレミにお礼を言う。


この世界に来てから感謝を口にすることばかりである、、安定した生活を送れるようになったら必ず恩返しを忘れないようにしなければと深く心に刻む。


ドラコは一瞬で朝食をたいらげてしまったので、コバヤシは自分の分も分けてあげることにした。


コーヒーさえあれば最高なんだけどな、、

ここで出されるのはミルクのようなものと果実水?と呼ばれるもの、あとはアルコール類であった。


なにはともあれ、今日もまずはギルドか、、


確かリーシアさんが宿泊費としてここに払っていたのは3泊分だったはずなので、明日分以降は今日の稼ぎ次第ということになる。


なんという“がけっぷち”か、、


「…がんばろうな、、ドラコ、、」

コバヤシは目の前で頬いっぱいにパンをほおばる少女に向かって言う。

少女は食事を続けながらも、コバヤシの方を見てこくりとうなずくのだった。


朝食を食べ終え、ドラコと支度も終わらせ、さあギルドで依頼を受けてくるかというところで、ふとコバヤシはレミに一つだけ尋ねる。


「あの、、お風呂って、ありますか、、」

コバヤシが探したところ、この宿にはそういった設備を見つけることは出来なかった。


みんなはどうしているのだろうか、、


「お風呂は~、みんな近くの共同浴場を使うことが多いかな~」

そういってレミはその場所をコバヤシに教えてくれる。


共同浴場があるとはありがたい、、あとで必ず行くことにしよう、、あ、お金、、


やはりお金は偉大である。無ければ何も出来ない。


資本主義の権化のような考えを張り巡らせながらも、コバヤシはレミにお礼を言い、ドラコと共に宿を後にするのだった。


・・・


― またしてもあの男がやってきた、、え? 子連れ?


ネリネはギルドへと再びやってきた男を見て驚く。

コバヤシという例の男が、なんともかわいらしい赤毛の少女を隣に連れて依頼掲示板の方へと歩いていく。


― これ、大丈夫なのかしら、、懐いている感じはあるけど、、


赤毛の少女はギルドの中をくるくると眺めながらも男の後をしっかりとついていっている。

不審に思ったのはどうやら自分だけではなかったようで、周りの何人かの冒険者も驚いて目を大きく開けていた。


― でもやっぱり誰も話しかけようとはしないのね、、


あそこまで誰からも声をかけられない新人冒険者ルーキーもここでは珍しい。


― やはりあの目つきと不思議な服装のせいでしょうね、、


かくいう自分だって出来ることであればあまり関わりたくはなかった。

もちろん主たる原因はあの目つきのせいではあるのだが、、


― でもギルドの受付嬢たるもの、冒険者にはみな等しく接しなければ、、っ


ネリネは自身に活を入れる。

男と赤毛少女はまだ依頼掲示板の前でじっと動かない。今度は少女も一緒になって掲示板を眺めていた。


「ネリネさん」

ぼんやりとその二人を眺めていたネリネは、後ろからの声でふとわれにかえる、、


・・・


やはり採取系よりも討伐系の方が圧倒的に報酬が良いみたいだ、、

コバヤシは目の前にある二つの掲示板に貼ってある依頼をいくつか比べながら思う。


まあその分リスクが高いのだろうが、、


さらにコバヤシたちにとっては辛いことに、最低ランクの冒険者だと、受けれる依頼も報酬もわずかなものばかりであった。


さてどうしたものか、、

コバヤシは掲示板の前でなにかないかと考えていると、受付の方から話し声が聞こえてくる。(聞き耳スキル)


― 見つかったばかりのダンジョン迷宮、ですか、、

― うん、そうなんだよネリネ君、、

― でもこれ、うちの支部からはかなり遠いんじゃないですか?

― どうやらどこの支部からも遠いみたいでね、、うちがこれでも一番近いみたいなんだよ、、


ダンジョン迷宮?

コバヤシは聞こえてきた会話にもう少し耳を傾ける、、


「見つかったばかりということは、当然まだ危険度は判断出来てないという事ですか、、」

「うん、実はそれについても調べてくれって頼まれててねえ、」


ネリネ?と呼ばれている受付嬢と、眼鏡をかけた小柄な老人の会話は続く。


「まあ危険度が分からないわけだし、とりあえず必要等級はフリーにしといてさ、それで調査内容によって報酬量を考えるってことにしようかと思ってね」

「大丈夫なんですか、、それ、」


女性の声には若干とげがあるように感じられた。


「大丈夫大丈夫、本部から調査報酬金の予算として結構もらってるんだ」

「というわけでこれ掲示板に貼っておいてくれる? ネリネ君」


やれやれといった感じでため息をつきながら、おそらくは依頼書であろうを受け取るネリネなる女性に、コバヤシは声をかけてみるのだった。


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