【依頼3】1-15
体感で20~30分といったところか、ようやく海が見えてくる。
ギルドの受付から聞いた話だとこの付近に多くヒエラ草が生えているはずだが、、
コバヤシは辺りを見渡しながら鑑定スキルも使用して探してみる。
するとすぐにいくつものヒエラ草を見つけることが出来た。
どうやら目視で探していくよりも鑑定スキルで片っ端から探していくほうが早そうだ。
今日の依頼は上手いこといきそうなので、コバヤシは保留にしていたいくつかの検証を開始する。
まずは称号の効果とやらを確認してみるか、、
自分が所持?している称号を見てみると、また新しく『見習い冒険者』という称号が増えていた。
よし、とりあえずこの称号の効果とやらを見てみるか、、
どうやればいいのかと考えていると、目の前に新しい画面が表示される。
『見習い冒険者』・・・全ステータス+5
…なるほど、これが称号の効果とやらか、、
確かに称号によってそれぞれ効果が変わってくるようだ。コバヤシはいま現在所持している称号を全て確認してみる。
とりあえずはこの『見習い冒険者』という称号にしておくか、、
称号の中でこれがどうやらいちばんましであった。
『無一文』の効果に至っては「LUC -100」というふざけたものだった。
そんなの付ける必要性あるか、、
称号のセットもこれまた考えるだけで実行することが出来た。
さて、次はこのboxというものの確認だな、、
コバヤシは近くに生えていたヒエラ草を一掴みし、おそらくはアイテムボックスに繋がるであろう“黒い円盤”へと恐る恐る放り投げてみる。
するとまるで穴に吸い込まれるようにヒエラ草は消えていく。
昔にアニメで見た四次元空間的なものなのだろうか、、あちらはいちおう科学だったが。
しかし入れたは良いものの、出すのはどうするのだろうか、、
これで出せなければただのゴミ箱だがなどと考えていると、視界にあるboxの文字が点滅していることに気づく。
そこへ意識を集中させてみると、目の前に
・ヒエラ草 1束
という表示がポップする。どうやらここで何が入っているか確認できるようだ。
ふとコバヤシは思いつき、アイテムボックス(黒い円盤)の中へと恐る恐る手を入れてみる。
やっぱりか、、
手を取り出すと、その手には先ほど入れたであろうヒエラ草が握り締められている。
出したいものを考えながら取り出せばそれが出てくるのかもしれないな、、
やっぱりあのアニメのロボットが行っていたことと同じだなと、コバヤシは未来のロボットへと思いをはせる。
とにかくこれでアイテムボックスの確認はとりあえず終わりにしよう。もっと細かい検証は追々行うことにする。
次はステータスの変化によって自身の身体能力がどこまで変わるかの検証に移ろうとかと考えるが、その前に依頼のほうを終わらせてしまうことにするか、、
ヒエラ草、ヒエラ草と、、
その時、コバヤシの足に何かがぶつかる。
ゴッ
…なんだ?
地面を見ると、そこには大きくて丸い何かが埋まっていた。
パッと見では何らかの“卵”のように見えなくも無い。
すると目の前に“龍の卵”という表示が出る。
・・・。
龍なんてものがいるのかとかなんでそんな卵がここにとか様々な疑問は沸くが、とりあえずどうしたものかとコバヤシはふと考える。
卵は半分以上地面に埋もれていたが、大きさはかなりのものがある。
バスケットボールよりもはるかに大きいだろう、、
コバヤシは埋もれている卵を見ながら考える。
さすがにこれだけ埋もれていればこれからもうこの卵から生まれるということはなさそうだが、、
どちらかというと卵の化石だったと言われる方がしっくりくる。
と、突然地表部分の卵の殻にひびが入る。
ぱきっ!
!?
突然のことに驚きコバヤシは動くのが遅れる。
ぱきぱきっ!
その瞬間、コバヤシはひびの割れ目からのぞくそれを見る。
それは真っ赤な瞳だった。
ぱきぱきぱき・・・
逃げるべきかと考えていたが、龍というものがどんな生き物なのかを見てみたいなどという欲に駆られ、コバヤシは卵から少し距離を置いて様子を見ることにする。
龍というからどんなものかと思っていたが、卵から出てきたその顔はなんとも愛くるしい姿であった。
瞳は大きかったが、殻からがんばって顔を出そうとしているその姿にコバヤシは心を惹かれる。
危険な生物かもしれないと分かってはいたが、コバヤシはもうすこしこの光景を見ていたいと思った。
ヤモリやトカゲなどとは違う、そう、かつて映画で見た「恐竜の子供」という感じのが一番近い気がした。
と言っても、凶暴そうなイメージは一切感じさせない。
試しに鑑定してみると“紅龍の子供”と出る。
龍の種族名だろうか、、
龍の子供は、地表に出てる卵の割れた部分だけだと頭しか出せないらしく、なんとか周りの殻も割れないかと行動しているように見える。その姿もコバヤシにはとても愛らしさを感じさせた。
しかしどうしたものか、、
いま目の前で観察しているぶんだとこの子龍からはまったくといっていいほど脅威は感じない。もちろん索敵スキルにもひっかかっていない。
それならと、すぐにコバヤシは目の前の卵の殻を割っていく作業へと入る。
リスクよりも、この子龍の全体像を見てみたいという欲に負けてしまったのであった。
ばきばき…
卵の中の子龍が不思議そうな目で(少なくともコバヤシにはそう見えた)見つめてくる。
特に襲い掛かってきたりはしてこない。
「…あと少しだぞ…」
コバヤシはなんともなしに子龍へと諭すように呟く。
ばき、ばきばき…
よし、、これで地表部分に出ている卵の殻は全て取ったか、、
これで出れるだろうかと、コバヤシは卵から少し離れて様子を見ることにする。
・・・。
…出てこないな、、
やはり卵を全て地面から掘り起こすぐらいしてしまったほうが良いのだろうかと考え、もう一度卵へと近寄ってみる。
すると目の前の卵から何かが飛び出してきた。
・・・。
…これは、、一体どういう事だろうか、、
卵から飛び出してきたそれの姿にコバヤシは絶句する。
先ほど卵の中に居た生き物は、そう、確かに恐竜の子供のような形態をしていた。しかしいまコバヤシの目の前に居るその生き物の姿は、どう見ても、、
人間の少女、、いや幼女とも呼べるような年齢の子供だった。
真っ赤な瞳とえんじ色の髪は腰まで垂れところどころにパーマがかかっている。衣服の類は一切着ておらず、こちらの方をじっと見つめている。
あいかわらず索敵スキルにはなんの反応も無いので敵意とかはないかと思うが、、
「・・・あー、、おじょうちゃん、、話せるか、、?」
この子供は一体なんなのかと思いながらもとりあえず意思の疎通を試みる。
すると“紅龍の子供(変異体)”という表示が出る。
変異体?? さっきはそんなのなかったと思うが、、
もしかしたらあの卵には二匹(二人?)入っていたのかもと思い、おそるおそる卵へと近づき中をのぞいてみるが、卵の中にはすでに何も入っていない。
赤目の子供はじっとコバヤシを見つめ続けている。
それにしてもと思い、コバヤシは自分が着ていたシャツを脱ぎ、それを子供に渡そうとする。
・・・。
子供はシャツをじっと見つめるだけで特に何の反応も示さない。
前の世界だとこの状況は流石にまずいと思うんだがな、、
仕方が無いのでコバヤシは子供に自身が着ていたシャツを羽織らせる。これでついにシャツも無くなり、上は肌着、インナーのみとなった。
ぶかぶかのシャツを着せられた子供は、なにやら手をわしゃわしゃ動かしてそのシャツを嗅ぐしぐさをする。
いったいこの子供はなんなのだろうか、、
コバヤシはそこでcallを再び実行してみることにする。
ついでにこないだ聞きそびれたステータスについても聞くとしよう、、
・・・営業時間内でありますように。。




