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【摂理】3-16

再びがさがさと、自分の後ろで音がしたのに気づきイチノセはそちらを瞬時に振り返る。

どうせまた気のせいだと考えた彼のその目の前には、何体かの、小さい()()()()()()魔物達がぞろぞろと姿を現す。

鑑定のスキルを含め、全てのスキルを失っていた彼にとって、その魔物がいったいなんなのかを知るすべは全くなかった。しかし、イチノセはその魔物達を見るなりほっとため息を一つ吐く。


なんだ、、驚かせやがって、、ただの()()じゃねえか、、

そして彼は()()()()()()()、アイテムボックスから“聖剣”を取り出そうとする。


『“box”は現在使用されておりません』


…は?

イチノセは、目の前に表示されたその“表示”を理解するのにしばらくかかった。いや、理解するのを頭が拒否していたのかもしれなかった。


…“box”、、“box”、、、


“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”“box”


「あいてむぼっくすをひらけぇえええええええ!!!」

俺のせいけんをだせっつってんだよくそがぁあああああああああああ!!


なんなんだこれはなんなんだこれはなんなんだこれは、、

俺が、何で()()()()に遭っているんだ、、?

俺は、“主人公”だぞ、、?

目の前のミニ恐竜達は、そんな人間の叫びなど、()()()()()()といった様子で、イチノセのほうへとじわじわ近づいていく。


「ひぃっ!」

イチノセは後ろへと後ずさる。


ここはいったん逃げるべきか、、

彼はそんなことを考えて後ろを向く。すると今度はそこに、二体の“スライム”が迫ってきていたのだった。

そのスライムはどちらもオレンジ色をしており、大きさはバスケットボールよりも一回り大きいぐらいであった。


イチノセは一瞬その魔物達の姿に戸惑うも、


こんなスライムぐらいなら素手で余裕だろ、、っ!

彼はそう考えるなり、自身の右腕を思いっきりそのスライムの一体へと振り下ろした。


ジュ


()()()()()()()が、あたりに漂う。


っ!?


「あぁあああああああああああああああああ!!! いぃでえええええええええ!!!」



スライムへと攻撃したかと思われたその右腕は、魔物に触れるなりまず皮膚が爛れ落ちる。いまではその右手(肘よりも先の部位全て)はすでに原型を留めているとは言えず、皮がずり落ちたその部分からは、うっすらと所々に骨のようなものが覗かせている。


「ふっ、、ふっ、、ぐ、、」


痛い、、痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたい、、


イチノセは、まだ()()()()()()()()()部分である右肩を、思い切りその左手で抑えながら痛みになんとか耐えようとする。あまりの痛みで気を失いそうだと、彼は思った。


俺はなぁあ! 選ばれたんだよ!! 馬鹿どもとは違うんだよ! 他の奴らとは違うんだ!

「こ、、んな奴ら、、余裕、だよ、、お、、おれはづええんだか、ら、、」

朦朧としながらもその男は、落ちていた木の枝を左手でなんとか拾い上げる。

そのときだった。


― ぐちゃり


彼の左わき腹の辺りを、後ろから何かが()()()()()

先ほどの恐竜達が一斉にそこを噛み千切ったのだと彼が気づくことは、無かった。


わき腹が、燃えているのかと思った。

どくどくどろどろと、何かが()()()()垂れてきていた。

なぜか右手の痛みは一切感じなくなった。

左のわき腹から、まるでその炎が全身を駆け巡るように、激痛(そんな言葉では生易しい)が起こる。


「っっつ!!!!!」


イチノセは前に倒れのたうち回る。自分の口から大量の赤色が吹き出るのが分かった。

目の前で先ほどの“雑魚恐竜達”が、こちらを眺めながらも、ナニカをくちゃくちゃと喰っているようであった。もう目がかすんでそれもよく見えない。


いや、だ、、死にたくない、、

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない生きたい生きたい生きたい生きたい


「たす、けて、、」

だ、、れ、か、、


「あ」


ばきばき。ぐちゃ。


・・・


コバヤシは、目を背けたくなるその光景を、しかし決して目を離さずに、()()()()見届ける。

マップではすでに、イチノセを示していた()が無くなっていた。

その点のあった辺りには、いくつかの魔物が群がっている。合間から見えるその中心には、かつてイチノセであったモノが、ときおり()()()といまだ痙攣をしながらも、その魔物達によって()()()()()()()()いる。


しばらくすると、魔物達はぞろぞろとその場所を後にしていった。

そこには、いくつかの肉片と血の痕、そして骨だけが残る。


この深い森の中で、人一人の命は、こうも静かに消えゆく。

最後まで見届けたあとにコバヤシは、その光景を心に留め、その現場に背を向け、メリエへの帰路へとつくことにするのだった。

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