【イチノセ・ユウキ】3-15
…ん、、ぅう、、
イチノセは、ぐらぐらと頭痛が走るその頭を押さえながらも、ゆっくりとその目を開く。
首の後ろあたりから頭にかけて、何故だかは分からなかったが鈍く痛むのであった。
いてぇな、、くそが、、
彼は首の後ろをさすりながらも、だんだんとはっきりしてきた意識によって、その異変に気がつく。
…どこだ、、ここは、、
そこは、自分が先ほどまで居たところとは似ても似つかぬ場所であった。
…森、、?
辺りは見渡す限りの森に見える。それもだいぶ奥深くの方であるかのようにイチノセには思われた。
いつのまになんでこんな場所に、、いやそもそも“あいつ”はいったいどこに、、
いくつもの疑問が降って沸くが、まずはこの場所は一体どこだと、彼は自身の《マップ》を確認しようとする。
…なんだ、これは、、
マップが発動しない。
いったいどういうことだと、彼は自身のスキルをチェックしてみることにする。
「・・・は?」
彼は眩暈に襲われる。何が起きているのか、いや、何が起きたのか、全く理解できない、、
何かの間違いだと、彼は何度も何度も自身のスキル欄を確認する。
“skill”、、、“skill”“skill”“skill”
「スキル、技能、技術、スキル、、」
“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”“skill”…
なんで出ないなんで何もないなんでなんでなんでなんでなんでなんで
「俺の、スキル、、俺のスキルは、、、は?」
そしてここで彼は、もう一つの、あることに気が付く。
…え、、?
「俺の、、俺の“ステータス”、が、、?」
SPをたんまりと注ぎ込んで強化していたイチノセ・ユウキのステータスは、まるで転生した直後の時のような(実際には現レベルによってそれよりは多少高かったが)まるで初期値と言ってもいいほどに“減少”していた。
どれだけ目を凝らしても、その数値は変わらない。そしてSPとTPは0を表示している。
なんだよ、、これ、、
それは自分にとってまるで現実味のないような出来事であった。イチノセにとって、その現実のステータスは皮肉なことにも、まるで現実のものとは思えなかったのである。
その時、後ろでがさがさと音がする。
「ひぃっ!」
彼は思わず悲鳴をあげて前へとつんのめる。
音がした方を見ても、そこにはなにも居ないかのように見えた。索敵のスキルがないと、この世界では何がいつどこから襲ってくるか全くわからないのだというそんな当たり前の事実に、イチノセはその時初めて気がつく。
なんで、、なんでこんなことに、、、
その時、彼はふと思い出して即座に“call”を試す。
とぅるるるる、とぅるるるぷつん、、、ツー、ツー、ツー、ツー、、
繋がらない
「ざけんなくそがっ!!」
どうなってんだ! こんなのありえねえだろ! 俺は“異世界転生”したんだぞ!!
イチノセは一人罵詈雑言をわめきちらす。
何がいつどこから襲ってくるかも分からない、そんな場所で、、
・・・
コバヤシは、その様子を遠くの樹上から見つめていた。《遠視》
むろん、気絶した(させた)イチノセをこの森の奥まで運んだのは彼である。
コバヤシは、《搾取》を使用したあと、即座にイチノセの背後へと回り込み(この時すでにイチノセの動きはコバヤシにとって“止まって”見えた)その後頭部を一殴りして意識を奪い、そしてそのままこの場所へと彼を運んだのだった。
メリエ周辺では、ここが最も魔物の多い、そして凶悪な個体が居るということを、コバヤシは前にギルドで聞いたことがあった。
索敵とマップによって、いくつもの存在がイチノセの周囲に、ゆっくりと、這い寄るように、舐めまわすように、静かに集まってきているのが分かった。
そんなことは何一つ気づかないといった感じで、“元世界王”は暴言を辺りへ吐き散らし続けている。
コバヤシはその様子を、何も感情を宿していないかのような目つきで、じっと息を殺し、全てを見届けるべく潜むのだった。




