【“王宮”】3-12
“そこ”では、何人もの男達が働いていた。男たちの顔は皆一様にして覇気がなく、何人かはふらふらしているようにも見える。
何か、とてつもなく大きなものの建設が行われているということをコバヤシには理解できたが、まだ建設初めなのかそれとも建設が遅れているからなのかは分からなかったが、その建造物はいまだ土台の部分程度しか出来ていないように見えた。
コバヤシはそんな“工事現場”を横目に見ながらも、更に奥へとその足を進めていく。
一通り見渡したところ、リーシア父を発見することはできなかった。また西門門番の片割れであるグエンもこの辺りには居ないらしく、マップ上ではある一点からずっと動いていない。
休んでいるのか、はたまた捕らえられているのか、、
マルコの話から考えると、グエンもリーシアやレミ同様にどこかに捕らえられていると考えた方がいいかもしれないとコバヤシは考えていた。
“call”
ツー、ツー、ツー、ツー、、、
相変わらずこちらは反応が無い。
彼は、これから出くわすであろう“その男”についてしばし考える。
サポセンから聞いた話ではおそらく、ここで“王”を自称している人間こそがその“第四次転生者”であると考えるのが自然だろう。
自分以外の転生者、、
彼は、この世界に“転生”される前までは、そのようなもの(輪廻転生とでもいうのだろうか)は信じていなかった。今でも、自分がこのような状況になったにも関わらずそういったことを信じていると言えるかというと、そこまではっきりとそれを肯定出来るとは言い難いように思えるのだった。
コバヤシは、彼自身「人は死ねば全てが終わり」と、そのように考えてきたし、やはり今でもその考えの方が多くを占めている。自分が一度“転生”したからといってあまり変わりはしなかった。
だからこそ彼は、生きるために、そしてこの命を無駄にはしないためにも、そのための努力を欠かさない。
気づくとコバヤシは、ずいぶんと豪華な造りをした家(屋敷?)が立ち並ぶエリアへと足を踏み入れていた。
ここに来るまでに彼は、あまりにも不愉快な『“世界王”の御言葉』なる掲示を見つける。
どこまで、ふざけているんだ、、
コバヤシは、自分の中で渦巻き沸き起こる、その感情の処理にてこずる。それは一言で言い表せるような単純な感情でもないように思えた。
しかし心のどこかで、この王さえなんとかすれば、といった気持ちがあることにも気づいていた。
メリエに住む(または“その時”メリエに居た)ほとんど全ての男性達はこの“王宮建設”に従事させられているのだろう。それ以外の仕事は全てストップされているのかもしれない、、
コバヤシは、自身の腰に掛けてある、そのボロボロの鞘へと納められているはずのナイフに目を落とす。
この街や、この街の人たちにしたことを思うと、彼は何一つとしてこの“王”を許す理由を見つけることなど出来なかったが、しかし、とコバヤシは思う。
果たして自分に、人間を殺すことができるのだろうか、、
そんなことを考えながらも、ついに自分が“目的の場所”へと近づいていることに気づく。
あの部屋の中に、それは居る、、
その存在は、部屋の中からずっと動くことをしていなかった。コバヤシの目の前にあるその扉は、その部屋の中に居る存在の大きさも相まってか、ひどくまがまがしいもののように感じられる。ドラコたち三人を連れてこなくてやっぱり正解だったなと彼は思った。
正直なところ、自分が“これ”を何とかできるのだろうかと、扉の前に立って彼は考える。
もしかしたら、“あれ”を使うことになるのかもしれない、、
コバヤシは自分のそのスキルを見ながら、サポセンから聞いた話を再び思い出していた。
― もしコバヤシ様が、そちらの世界のために動こうというのであれば、こちらとしてはそれを“サポート”する用意がございます
・・・
自分は、この世界のために動いているわけではない。
人間はみな、それぞれが誰かのためと言いながらも、しかしそれはやはり自分のために動いているのだろう。
人は結局のところ、自分のために動く生き物なのだから、、
だからこれは、他の誰でもない、自分のために、この世界に生きるコバヤシ・アキラという自分自身のために、
彼は、その部屋の扉に手をかけるのだった。




